ありふれた読書日記 -4ページ目

【買った本】『なずな』他

最近買った本や雑誌。



まずは文庫本。

堀江敏幸『なずな』(集英社文庫)と江國香織の『ウエハースの椅子』(ハルキ文庫)。

現在『なずな』読書中。今まで読んだ堀江さんの小説の中でもかなり好きな作品…になりそう。




そして読書特集の『BRUTUS (ブルータス) 2015年 1/15号』と「百合文化の現在」が特集の『ユリイカ 2014年12月号』。

BRUTUSは星野源(とっつきやすい本から読んでみる。)、角田光代(家のあちこちに本を置く。)、柴田元幸(声に出して読んでみる。)、豊崎由美+中島京子(本読みの棚に学ぶ。)、蒼井優(原作本を読む。)、阿部和重+伊坂幸太郎(小説家を作る“読書履歴”。)など作家、書評家、ミュージシャン、女優など様々な分野の著名人が読書について語っていて、なかなか面白いです。

しかし、角田さんが紹介している本のほとんどが品切れのものなのが残念。出来れば入手可能な本を紹介して欲しかった。これは角田さんに限ったことじゃないけど。


ユリイカが百合特集、さらに同時期に『美術手帖 2014年 12月号』がボーイズラブ(BL)特集ということで一部で話題になっていましたが、私は特に百合文化に詳しいわけではなく、ある小説がきっかけで興味を持ったので買ってみたのですが、かわいらしいイラストの表紙から受けるイメージとは違って中身はかなり読み応えのあるものでした。

ちなみに百合小説に興味を持ったある小説というのは入間人間の『安達としまむら』で、安達という女子高生が同級生のしまむらという女の子を好きになるんだけど、その姿がすごく可愛くて私は『君に届け』以上にキュンキュンしたのですがユリイカを読んだりネットで色々調べてみても『安達としまむら』みたいに可愛らしくてキュンとしそうな作品はなかなか見当たりませんでした。なので『安達としまむら』の第4巻が出るのを待とうと思います。


なずな (集英社文庫)なずな (集英社文庫)
堀江 敏幸

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ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)
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BRUTUS (ブルータス) 2015年 1/15号 [雑誌]BRUTUS (ブルータス) 2015年 1/15号 [雑誌]


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ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在
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フラニーとズーイ

村上春樹訳なら読んでみようかなと思って読んだ翻訳小説がいくつかある。



サリンジャーの『フラニーとズーイ』もそう。

グラス家の末娘フラニーと5歳上の兄ズーイ。まずは短い「フラニー」の章から始まり、残りは全て「ズーイ」の章。

駅のプラットフォームで恋人を待つ一人の男子学生・レーン。レーンはフラニーの恋人だ。列車から降りて来たフラニーを見つけたレーンの心情は若者らしく甘酸っぱい。フラニーが毛足の短いラクーンのコートを着ているのを見たレーンは次のように思う。

このプラットフォームで、フラニーのコートのことを本当に知っている人間は、自分一人しかいないのだと。一度、借りた車の中で半時間かそこらフラニーとキスをしたあと、彼女のコートの襟に口づけしたことを彼は覚えていた。まるでそれが彼女という人間の有機的な、心惹かれる延長であるかのように。


車の中で半時間もキスするような恋人同士の二人がどんな楽しい時間を過ごすのかと思っていたのだが、どうもフラニーの様子がおかしい。レーンはレーンで何だかねちっこいというか嫌味ったらしい話し方をするのだけど、フラニーもそれに負けず劣らずで食事をしながら交わす二人の会話はとても恋人同士のものとは思えない。しかもフラニーは最後には気を失って倒れてしまう。

ズーイの章ではズーイが入浴している浴室(と言ってもシャワーカーテンで仕切ってある)へ母親のベッシーが入って来て明らかに様子のおかしいフラニーのことを相談する。ズーイとベッシーの会話は何だかギスギスしていて親子の関係が上手くいっていないことがわかる。母と息子の会話はあちこちに飛びながらも最終的にはズーイは母親の望み通りに妹の様子を見に行く。

そして、ズーイとフラニーの会話が繰り広げられるわけなんだけど、それが宗教の話に及ぶと私の興味がそがれ途端に読むペースが落ちてしまった。最後まで何とか読んだけど何だかよくわからなかったというのが正直な感想。


しかし、そう思ったのは私だけではなかったらしい。



投げ込み特別エッセイとして文庫に挟んであった薄い冊子に訳者である村上春樹さんがこう書いていた。

そしてもうひとつ、「いやに宗教臭かったな」という、どちらかというとネガティヴな思いが残っている。登場人物たち(つまりズーイとフラニー)がただ座り込んで、宗教の原理についてあれこれ蘊蓄を述べるというか、泣いたり声を荒立てたりしながら生真面目に議論するところが、当時の僕としてはいささかうっとうしかった。


とはいえ、これは十代の村上さんの感想であって、新訳を出してみないかと言われて最初に読んでから四十五年ほど経過して原文を読んだら「ええ、なんだ、『フラニーとズーイ』ってこんなに面白い話だったんだ!」と驚いたのだそうだけど。

確かに最初に読んだ時はそうでもなかったのに何年か経って読み返したら面白かったという経験は読書をしていたらよくある。私も四十五年後にもう一度読み返してみようかな。その時自分がいくつになっているかは考えないでおこう。

フラニーとズーイ (新潮文庫)フラニーとズーイ (新潮文庫)
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木暮荘物語

ぼろアパートが舞台という設定に惹かれる。トキワ荘を舞台にした藤子不二雄の『まんが道』の影響なのかもしれない。



三浦しをんの『木暮荘物語』を読んだ。

『木暮荘物語』は築ウン十年のぼろアパート木暮荘の住人たちを中心にした連作短編集。最初の短編「シンプリーへブン」の主人公は花屋の店員・繭。半年前から付き合い始めた晃生と木暮荘の自室でごろごろしているところに突然やって来たのはかつての恋人・並木。三年前何も言わずに繭の前から姿を消した並木が何事もなかったかのように現れ、なぜか繭の部屋で一緒に暮らす事になる。二人っきりにするわけにはいかないから晃生も一緒。つまり繭は今彼と元彼と3人で狭いアパートの一室で暮らす事になる。ドロドロした三角関係になるのかと思いきやそうはならないのはあっけらかんとした並木の性格のおかげなのか、晃生の大人の対応のおかげなのか。やきもきするのは繭ひとり。このまま仲良く三人で暮らせばいいのにと思いながら読んでいたが、やはりそんなわけにはいかず…。これが実はかなり切ないラブストーリーになっていて最後はキュンとしてしまった。

恋人が何も言わず姿を消すという設定からつい最近読んだ柴崎友香の『寝ても覚めても』を思い出したがあちらが影のある男だったのに対し、並木はバカみたいに明るくて人懐っこいから全然違った。

木暮荘は全六室のうち二部屋は空き部屋。繭の他には大家の木暮、女子大生の光子、サラリーマンの神崎が住んでいる。どの住人も一癖あって面白い。光子と神崎の関係は面白いというより理解しがたいが。

三浦しをんの小説を久しぶりに読んだけど、改めて自分に合っていると思った。そのうち他の未読の作品も読んでみようかな。未読の方が多いけど。

木暮荘物語 (祥伝社文庫)木暮荘物語 (祥伝社文庫)
三浦 しをん

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いつか記憶からこぼれおちるとしても

最近私の中でブーム再燃の江國さん。



そのうち読もうと思っていた『いつか記憶からこぼれおちるとしても』を読んだ。

とある女子校の同じクラスの女子高生たちを描いた短篇集。最初の短篇の主人公・菊子は通学途中の電車の中で背中に人の手を感じる。しかもブレザーの内側に。それは赤い口紅を塗った派手な感じのきれいな女の人で、菊子はその年上の女性が気になり始める。一作目からいきなりドキドキな展開で心を掴まれてしまった。

それから、読書好きとしては電車の中での読書が習慣の菊子が『ザボンの花』を読んでいたことも気になった。以前から気になっていた本だったので。

この小説に出てくる女の子たちは親との関係が何となくギクシャクしていたり、両親の関係が冷えきっていたりする。そんな中で柚という子は父親との関係はあまり良くないが母親とはいわゆる友達親子のように仲が良く、高級なブランドの服を買ってもらったり、高級なお店で母親と二人で食事を楽しんだりしていて、毎日を楽しんでいるように思えたのだけど実はそうじゃなかったというのが読者に、そして柚自身にもわかる描写が心に残った。

それは柚が付き合い始めた彼氏がファミレスのレジの近くにあったくまのプーのおもちゃを買ってくれた場面。

自分でもおどろいたのだけれど、あたしはそのプレゼントがすごく嬉しかった。すごくすごく嬉しくて、ばかばかしいくらいに胸にしみちゃって、あたしはこんなに一人ぼっちだったのかって思った。


私は共学で女子校ではなかったけれど、それでもあの頃特有の女の子同士の関係を思い出して懐かしいような切ないような気持ちになった。

いつか記憶からこぼれおちるとしても (朝日文庫)いつか記憶からこぼれおちるとしても (朝日文庫)
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【買った本】『木暮荘物語』他

気付けば今年も残すところあとわずか。そろそろアレを買っておかなければ…。



2009年から手帳としてずっと愛用しているマイブック。来年のために『マイブック: 2015年の記録』を買いました。

最近読書欲が戻って来て積読本がなくなりそうなので三浦しをんの『木暮荘物語』(祥伝社文庫)と江國香織の『いつか記憶からこぼれおちるとしても』(朝日文庫)も購入。

『木暮荘物語』の帯には小泉今日子さんの「あぁ、私はこの物語がとっても好きだ。」というコメントが。読売新聞の書評からの抜粋みたい。

『いつか記憶からこぼれおちるとしても』はいつか読みたいと思っていてようやく買ったのだけどもう読み終えてしまった。『抱擁、あるいはライスには塩を』、『やわらかなレタス』を読んで私の中で江國香織ブームが再燃している。本棚にある江國さんの本色々と再読しようかな。

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