廃用身  | dokidoki感

廃用身 

こんにちは



この本を読みました


久坂部羊



廃用身 




2015011815370000.jpg





簡単なあらすじ

麻痺による動かなくなった四肢を 廃用身 と呼ぶそうです
それは介護するにあたり とても邪魔なので
それを切断するという 禁断の医療に踏み込む医者がいました



感想

この作者の本を読むのは3冊目です

まずは「無痛」という本を ブログ上でやりとりある人から勧められ
読んだところ サスペンス性と 医学的な見地に優れており
とても面白いと思ったら 作者は元医者らしく なるほど でした

その次に「破裂」を読んだら 現代医学の問題を 行政の立場から捉え
こちらもなるほど! と感嘆しました

これは作者の 3作目 2作目と刊行を逆行するかのように読んだのですが
デビューが近くになるにつれ 医学的見地の要素が大きく
小説的には3作目に「無痛」より このデビュー作「廃用身」の方が
ノンフィクションのようで現実的だし、内容が尖がっており 面白かったです


老人介護は とても大変なのですが その1つに重さが挙げられます
体が麻痺などで動かせなくなった四肢は 自身もその重さに苦しめられるし
介護する側も とても大変なものなのです

だから切り取ろう という安易な考えではありません
その他にも 床擦れの原因となったり
動かせない手足のせいで うまくバランス取れなかったり
切り取ることで 脳に血流が良くなることで 痴呆の改善が見られたり

なにより 動かない四肢を無くすことで 残された手足が器用になるのです
これはあくまでフィクション とは言っても

視力が無くなったから 聴覚 嗅覚が発達したり
利き腕をなくしたら 反対の腕が うまく使えるようになったり
以前ブログで紹介しましたが 両手がなく 足で弾くギタリストもいます

さらに麻痺がなく自由に動かせると介護される側も元気になるというのです

読む前は マッドサイエンティストの暴走の話かと思っていたら
これらを 医学的見地から丁寧に論じられると 私は信用してしまいました


この本は大きく分けると二部で構成されており 
これまでの前半では 極端な治療を主人公の言い分で語っており

後半は世間の風評を説いています
私も治療のうわべだけを聞いた時は 怪訝だったように
マスコミと世間は マッドサイエンティストと捉えてしまい…

ここからは本質を捉えないマスコミとそれに踊らされえる社会を描いてます
こんなことは実際にあるはずで マスコミの論調をうのみにしては
いけないなー と再確認できるような話だったのと

現実の介護をやっている現場や治療の具体的な内容や 
たまに起こってしまったミスなどを具体的に描写する様は
さすが元医師だけに臨場感あり まさにホラーの世界でグロテスクで
かなり尖がってる小説だなー と感じました

しかし医師からすればホラーではなく 普通なのかもですが

これは読み終わったあと かなりブルー入る小説ですが
かなり面白かったです

今年
空飛ぶタイヤ
OUT
そしてこの廃用身と どれ1番にしよ と悩んでしまいます