■六カ国協議に失敗した日米


米国は対中外交において、対北経済制裁への協力推進を求め

中国も制裁採択後も継続されていた実質的な対北支援を停止し、

それらをもって米国は再開協議については表向きとは裏腹に

楽観的な見方をしていたと言われています。


我が国は日米協議で拉致問題解決を最重要課題とし

平壌宣言の実質的な白紙化と再協議における日朝関係問題を

六カ国合意の中で取り入れる事を米国に意向として伝えています。


核凍結による合意とともにこれらの懸案事項を六カ国協議において

明確化することも米国は可能だと判断したと思われます。

北をコントロールできる状態に出来たと。


しかしベルリン米朝協議以降流れが大きく変わったとの情報があります。


そもそも米国は北の核実験までは

「北とはあらゆる二国間の個別協議・交渉を行わない」としてきました。

しかし核実験以降協議再開のためになし崩し的に二国間協議を

行っています。


ただし昨年までの米朝協議は相互の主張と協議再開までの意見交換程度

の協議となり、米国主導で協議再開の方向へ進んだと見られています。


そこに米国の油断が生じたといえます。

(米国内事情とイラン問題のタイミングも重なった)


六カ国協議前のベルリンではいつもどおりの会談となると考えていたヒル次官補

は、一日目の協議終了後、すぐにアジア太平洋担当局員だけでなく

複数の米国関係者を交えて協議を行っています。


以後は六カ国合意を急いだのは北ではなく米国であったといえます。


そもそも米国が個別協議を避けていたのは

北の狡猾な外交手腕を考えてのことであり

個別カードで何を出してくるかという危惧もあります。


■脅迫された米国

昨年の米朝協議ではなくベルリン以降に何があったのか?

一部海外口座凍結解除も米朝協議を軸に動いています。


我が国も米国の急変に慌てていた状況はいくつか見られます。

我が国は米国に六カ国協議対策を委ねざるを得ない状況でしたが

何よりも米国の急変に対するオプションを何も用意していなかった。


安倍首相、麻生外相は今月に入ってあらためて「拉致解決なくして支援なし」

を強調するに至りますが、これは国民向けのメッセージだけではありません。

米国・六カ国に向けての改めての意思表明です。


拉致問題と六カ国協議に関する安倍・麻生連携は緊密なものなのですが

政権発足後に外交担当官僚交えての特別スキームの目的は

平壌宣言の正式な白紙化」にありました。

これは公然の秘密?なんでしょうが

宣言に基く北批判の道具となると同時に北に反論の余地を与えかねない

宣言内容に苦慮していた外交当局と官邸の必達目標でありました。

しかし政府としてはこの片務的宣言の無効性を声を大にしては主張できない。

それこそ北に付け入られる元となるからです。


実は拉致問題解決の糸口は平壌宣言の破棄と日朝交渉の再協議にあるのです。

政府はその手段を米国に委ねてしまった。

だから米朝個別協議でイニシアチブが北朝鮮に移った瞬間、

我が国の今協議における方策は塞がれてしまいました。


ヒル次官補はベルリン以降、とにかく我が国に気を使っています。

これは時系列で見ればわかります。


同時に我が国で喧伝された「日本孤立」の報道。

これは北を助ける報道になりました。(意味は賢明な方なら理解できるでしょう)


結果六カ国合意は我が国への僅かな配慮として

日朝関係部会の設置を盛り込むことで継続の可能性だけを残しました。


米朝個別協議で北が出したカードはおそらく安全保障上の

情報に関連する隠し玉でしょう。(米国内問題若しくは対外安全保障)


あきらかに六カ国協議と米事情のタイミングで巧妙に切られたカードです。


では米国に切られたカードは何なのか?


これはわかりません。


ただし、気になることが最近立て続けに起こっています。

旧防衛庁情報漏洩、元技官6日書類送検・窃盗容疑認める

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070206AT1G0504M05022007.html

(日経)



防衛省の元技官(64)が在職時、潜水艦関連の技術資料を持ち出したとされる事件で、警視庁公安部は元技官を6日に窃盗容疑で書類送検する方針を固めた。



防衛省が職員強制捜査 記者に情報提供

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200702160116.html

(中国新聞)



南シナ海での中国潜水艦事故を報じた二○○五年の一部新聞報道をめぐり、防衛庁(現防衛省)情報本部の課長級職員だった一等空佐(49)=現・同本部総務部付=が記者に内部情報を漏らしていた疑いが強まったとして、自衛隊の警務隊が自衛隊法違反(秘密漏えい)容疑で一佐の自宅や勤務先の机などを家宅捜索したことが十五日、関係者の話で分かった。


ベルリン米朝協議以降続いて機密問題に関する防衛省対応が表面化しています。


どちらも調査・捜査保留ともいえる進捗の遅い案件です。

それが同時期に表面化しています。


米朝協議で北が出したカードが米国の安全保障に関する機密であり

その一部にでも我が国の危機管理状況の問題が関連しているなら

これほど情け無いことはありません。


北の諜報ネットワークはCIAも警戒してます。

米国が我が国を完全に信用できない・・・情報システムを共有できないと

考えるのは我が国の危機管理体制の不備にあります。


あらゆる国家機関に当然のように北の工作員が紛れ込んでいる。

これは自衛隊だけにおける問題ではありません。

公共組織のあらゆるところに北に繋がる人間が紛れ込んでいるのです。


一時的にせよベルリン以降に防衛省が機密管理に関する対応の

明確化を迫られた・・・と考えるのは思い過ごし?


どちらにしろ六カ国同意は日米の敗北です。

一部では米国の親北方針だという話もありますが

イラン問題を絡ませてもそれはない。


あるのは米国の失敗とそれに委ねた我が国の敗北と言えます。