BOUCHERON 2012-13 F+W Houte Coture !!! | ダイコ★ブログ

BOUCHERON 2012-13 F+W Houte Coture !!!


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 オートクチュール最後のリポートとなるのは、私も大好きなBOUCHERON(ブシュロン)です。何度となくこちらのブログのほうにも書いてますし、もちろんお仕事でも仲良くして頂いています。150年以上の歴史を誇るこのパリのメゾンはヴァンドーム広場に、ジュエラーとして一番最初に居を構え、現在のヴァンドーム広場=ジュエリー広場のさきがけとなります。

 創設者フレデリック・ブシュロンの類い稀なデザインセンスと観察眼により、ブシュロンは今迄様々な個性的で美しいジュエリーを発表して来ました。そのオリジナリティー溢れるアイデンティテーに、世界中の文豪やアーティスト、王侯貴族やインドのマハラジャまで虜にされました。

 革新を求めるこのアグレッシブなパリのハイジュエラーは日々進歩を続け、現在では世界中から愛されるメゾンとなり、今もヴァンドームで一番日当りの良い場所に、アトリエとブティックを構えて活動しています。

 こちら、当日会場に来たゲストに配られたルーペ。ちょっと嬉しくないですかぁ???www

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 さぁ、その革新と進化を求めるブシュロン、今回なんとクリエイティブ・ディレクターに若いフランス人女性、クレール・ショワンヌを任命し、よりフレッシュに生まれ変わりました。

 35歳のクレールは、ジュエリー関連の教育で有名なÉcole de la rue de Louvreを卒業し、L'Oiseau Kebadjianにてジュエリーデザイナーのキャリアをスタートさせます。99年、自身のブランドを立ち上げ、2001年には今最もホットなジュエリーデザイナーと言われる、ロレンツ・バウマーのメゾンに入社。2011年、ブシュロンの社長兼CEOを務めるピエール・ブイスーに才能を認められ、同年9月にクリエイティブディレクターに就任します。

 ブシュロンのクリエイティブ・ディレクターとなって、ようやく一年。この7月のオートクチュールに初めて作品発表をして、現在開催されている『ビエンナーレ・デ・アンティケーレ』にももちろん出展しています。若い彼女はフレデリックへの敬意と、宝石やジュエリーに対する愛情を胸に、今回実に素晴らしいコレクションを発表しました。

 私も、会場でお会いして挨拶させて頂きましたが、スラリとした背の高い、ナチュラルで爽やかな素敵な女性でしたね。その彼女が作る新しいブシュロンの世界へご案内しますね。


 今回のコレクション、タイトルは『L'Artisan du Rêve(夢を想像する職人)』。ジュエリーのデザインから制作迄こなす彼女の、ブシュロンのアトリエと職人達への愛情と敬意の現れたタイトルです。

 彼女はブシュロンのアーカイブスの中から、9つのテーマを選び、今回のコレクションでそれをさらにフレッシュに蘇らせています。まずこちらは、『Bouguet d’Ailes(羽根のブーケ)』と名付けられたコレクションです。様々な昆虫や鳥達が肩に集まって来てブーケを作ったという、非常にファンタジックなテーマです。1901年作られエリザス・テイラーに愛用されたパピヨンのブローチ等、このモチーフの秀作はブシュロンには沢山あります。

 様々な宝石を使って作られた小さな羽根にはセッティッグにバネを使い、動くと優しく揺れる憎い演出もあります。

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 こちら、同じコレクションのイヤリング。テァアドロップ型に垂れる、グリーンからピンクへのグラデーションが美しいトルマリンは天然で、わざわざクラック(傷)のある物が選ばれています。

 蝶に関してですが、蝶は人に止まる時、まるでその人が善人か悪人かをはっきり見極めるように止まります。非常に高潔な魂を持った人間にしか止まらないという言い伝えがあり、止まった人にはラッキーが訪れると信じられています。このコレクションを彼女は女性達へのラッキーチャームのような物であれば良いと考えています。

 彼女に取っても、ブシュロンのクリエイティブ・ディレクターに任命された事は、肩に蝶が止まったような出来事でしょうね。

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 『Perle au Trésor(真珠の財宝)』は、ジェエリーという枠を全く逸脱した、オリジリナリテー溢れる素晴らしいコレクションです。ルネサンス時代の家具の装飾等に起源を持つ、マルケトリー(寄せ木細工)風デザインで作られた丸い球体は、ダイヤモンド、パール、マザーオブパール、オパールが使われています。

 1900年の万国博覧会では、ブシュロンはパールとパールの間に、『スライス』カットしたディスク状のダイヤモンドを挟み込み、全体に独特の輝きを放つ素晴らしいネックレスを発表し話題になりました。これはそのパールとダイヤモンドのテクニックへのオマージュ作品です。

 真ん中のダイヤモンドのボタンを押すと。。。。。。

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 なんと、中からはパールのロングネックレスやら、イヤリングやらがごろんごろんと、まるで千夜一夜物語の宝箱のように出て来ます。ケース自体も、ブローチ、バレッタ、ブレスレットの3つのパーツに別れて使用が出来て、ブローチやバレッタはパールのネックレスに付けるとまた違う味わいを楽しむ事が出来ます。

 なんか、アトリエで若いクレールと、熟練した紳士のアトリエスタッフ達が、子供がおもちゃで遊ぶように『あーでもない、こーでもない』とか試行錯誤しながら出来上がったような、クリエイティブの息吹すら感じるハートフルで楽しい作品です。

 ヨーロッパには娘が生まれるとパールを購入し、毎年一つずつ増やし、成人したときの舞踏会にネックレスにする習慣があります。少し、ギミックで男の子っぽいデザインですが、ちゃんと女子の見方です。

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 今回一番評判の高かったとも言われているコレクション、『Nature de Cristal(クリスタルの神秘)』。ロッククリスタルというマテリアルをジュエリーに最初に取入れたのは、ブシュロンであり、創設者フレデリックはアートオブジェ等にも良くこのマテリアルを使っています。

 シーブル(霧氷のような内包物)を含む、ロッククリスタルは10時間以上もかけて、内側まで削り美しく研磨され、その中にまるで、コロニーのようにダイヤモンドが3Dにセッティングされます。ロッククリスタルの上に細工されたクッションカットのダイヤモンドの奥から、透けて見える3Dセッティングの内側のダイヤモンドは、まるでまぐるめく生命の連鎖や、命の持つ強さや、神秘性を表しています。

 こちらのネックレス、先端部分を外すと、ブローチとソートワール(ロングネックレス)に変化して楽しむ事が出来ます。

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 見て下さいこのボッテリ感!!!お伽話や神話に出て来る、物語を左右する鍵となる宝石のようですね。私自身いろんなジュエリーを見て来ましたがこんなの初めてですね。。。。

 このコレクションには、19世紀からメンゾで愛され続けているモチーフのポンポンも取入れられています。下にぶら下がってるフリンジですね。

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 『Plume de Paon(孔雀の羽根)』。このジュエリーのテーマになったのは、1833に発表された孔雀の羽根のネックレスに由来します。当時、フレデリック・ブシュロンはアトリエ主任のポール・ルグランと供に、アトリエで孔雀の羽根で遊んでいたそうです。その時にこのアイディアが浮かび制作され、同年にパリを訪れたアレクシス大公は、パレロワイヤルのブシュロンのブティックで、一目でこの作品を気に入り購入したそうです。

 クラスプ(留め金)のないクエスチョンマークのデザインのネックレスは、見えないバネのセッティングにより首元に寄添い、自由でモダンなムードに当時の人々の絶大なる賞賛を受け、1889年の万国博覧会ではグランプリを授賞します。

 エメラルド、様々なカットのダイヤモンドをふんだんに使っているのに、900グラムという軽さも自慢です。

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 こちら、同じコレクションのリングです、良くご覧下さい、解りますか?センターのエメラルド、実は大きさも、カラーも違う、二種類のペアシェイプのエメラルドを、エメラルドオンエメラルドでセッティングされているのです。より複雑な孔雀の羽根の中心の部分を表現してあります。

 エメラルドという石は古来世界中で珍重され、無数の伝説があります。インドでは陰の創造者を追い払うという伝説があり、アステカ族にとっては豊穣の証。錬金術師にとっては、神の使いであり、秘密の知識の石です。孔雀の羽根もまた数多くの伝説も持ちます。中国では繁栄と平和をもたらす青い鳥と考えられ、アジアでは、一度抜け落ちた羽根はまた再生する事から、復活と不滅の象徴でもあります。

 このジュエリーを通して、そんな様々な世界中の伝説や物語を楽しむのも、最高の時間の過ごし方ではないでしょうか?

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 『Mosaïque Delilah(モザイク デリラ)』。ブシュロンには長年愛され続けている『デリラ』というジュエリーがあります。フレデリック・ブシュロンの家族が元々、繊維関係の仕事をしていた事に由来するジュエリーで、細い金の繊維をまるで織物のように編み上げ、スカーフやマフラーのように、首もとにしっとりと寄添う素晴らしい名作です。

 クレールはそのデリラを全く新しい解釈で表現しました。ゴールドで編み上げられた部分は、様々な宝石で埋められ、出来るだけセッティングが見えないような加工を施しています。センターにはバゲット&ラウンドカットのダイヤモンドで作られた、メゾンのシグネチャーの一つでもある『アバ』と、大粒のモルガナイトを配置し、まるで生命の神秘を表すように、サファイヤとダイヤモンドのグラデーションが続きます。

 石選びと配置にはかなり拘ったそうで、1500以上の石が選別、カットされ、2700時間がかけられて制作されています。

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 『Lierre de Paris(パリのアイビー)』。こちらもアーカイブスの中にある、自然モチーフを使ったクエスチョンマークのネックレスのシリーズからインスパイヤされたもので、常緑で力強い植物のアイビーは、古くから人々に愛され、エジプトでは400年も生きたという記述が残っています。『愛、強い結びつき』等の意味を持ちます。

 フレデリックはパレロワイヤルのアーケードに自然に生える力強い自然のアイビーに心奪われ、ジュエリーのモチーフに選び、今回クレールはさらに新しい要素をそこに加え斬新な作品を発表します。ベースに使われているのは、キューブ型のダイヤモンドの原石です。なんとも言えないその天然の色合いの石を綿密に配置して、パリの石畳を表現し、強く伸びるアイビーの葉はダイヤモンドとホワイトゴールドで立体的に作られています。

 石畳の間を割って、力強く伸びるアイビーの力強さと、自然の持つ無限のエネルギーの逞しさが表現された作品です。

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 『Selpent Opalescent(白光のスネーク)』。お待たせしました。ブシュロンファンなら誰でもが大好きなスネークモチーフのコレクションです。蛇をモチーフにした大人気コレクション、『セルパン』は、この秋リニューアルして登場するという事でも話題を呼んでいます。

 フレデリックはある日、最愛の妻の幸せを願い、ヘビのネックレスをプレゼントします。この日以来ブシュロンではヘビのモチーフは幸福のお守りとして、このメゾンを離れる事無く、様々な技術革新や進歩に対応しながら姿を変え、愛され続けて来ました。

 クレールはこの力強いモチーフをより軽やかでフレッシュにする為に、あえて『抜け殻』というモチーフを選びました。透けて見えるそのボディの内側には別の世界を作り上げ、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、ホワイトオパール、クリスタルを使い、命の蘇りや永遠という意味を持たせています。

 へびの顔にもスマイルを与え、攻撃的な印象というより、あくまでも女性を危険から守る幸福のお守りにしたかったようです。

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 同じコレクションのイヤリングです。ここで使われている六角形の幾何学的なモチーフは、1901年クレヴィル婦人の為に制作され、その後、1942年にエリザベス皇太后(現エリザベス女王の母后)に譲られたティアラに由来します。

 華やかなブシュロンの歴史に敬意を払った、オマージュの作品でもあります。

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 こちらは、ブレスレット。クエスチョンマークで首元に寄添うネックレスタイプと同様に、手首に絡み付くこのフォルムのスネークのブレスレットも、ブシュロンでは大人気のアイテムです。ホワイトゴールドにダイヤモンドがギッシリと埋め尽くされています。

 このスネークのブレスレットで有名な逸話を一つご紹介しましょう。アール・ヌーボーの時代の女優、サラ・ベルナールは新しく演じる舞台『王女メディア』の劇場ポスターの制作を、画家のアルフォンス・ミュシャに依頼します。激情に狂い、最後には愛する我が子迄殺してしまう壮絶なストーリーのポスターに、ミュシャはサラ演じるメディアの手首に蛇が巻き付いたデザインのブレスレットを飾ります。出来上がったポスターを見て、それが気に入ったサラはミュシャにこのブレスレットの制作を依頼します。ミュシャはその制作をジョルジュ・フーケに依頼し、作られたリングとブレスレットのセットは現在も残っていて、時々展覧会等で見る事が出来ます。

 まぁ、ブシュロンとは関係のないお話ですけどね。www

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 『Collection Animaux(アニマル・コレクション)』。今回このコレクションでは、全てのコレクションにメゾンを代表するモチーフ、カメレオンが登場します。カメレオンは感情によって身体の色を変え、自分を表現するという驚くべき性質を持っています。相手を魅了しようとする時は、明るい色に身体の色を変えたり、好意的で太陽のような親しみ易さを持つ彼らは、持つ人に秘密のパワーを与えます。

 ポジティブで、あらゆる環境に馴染み、自分を変化させ調和させるその性質は、現代女性へのメッセージのように思えます。

 こちらは、大きなトルマリンに触れた途端、身体の色が変化しちゃった!という瞬間を描いた楽しいブレスレットです。ホワイトゴールド、ダイヤモンド、トルマリン、ピンクとパープルのサファイヤが使用されています。

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 最後にサロンに飾られている、創設者フレデリック・ブシュロン氏の肖像画とパシャリ。天才的な彼がジュエリーの世界の投じた一石は、150年以上もの歴史を経て、様々な名作を生み出し、今もまた新しい才能を刺激し、新たなクリエイションの源となります。

 創設者、新しいディレクター、アトリエの職人達すべてが一丸となって、お互いにリスペクトし合い、素晴らしい作品を作り上げようとする努力。そして誰もがとても大切にこのメゾンの事を思い、愛してるという事実が、ここに来ると毎回強く感じられます。

 日本のアパレルブランドのように、2,3年使って才能が無くなったらデザイナーをポイ捨てうるような、企業には到底出来ない、ストイックで完璧な世界です。だからこそ一世紀以上も人々から愛され、パクリ等ではない本物を作り続ける事が出来たのでしょう。

 フレッシュで斬新な新しいコレクションと、様々な人々の熱い思いに酔いしれた、2012-13 F+W オートクチュールコレクションの最後を飾る素敵なプレゼンテーションとなりました。

 

 前回のBOUCHERONのパリでのプレゼンテーションの模様はこちら からどうぞ。


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