今回はヒュンダイ・グレンジャー(4代目)をご紹介します。
グレンジャーは韓国の自動車メーカー、現代自動車(ヒュンダイ)の高級車。
初代は三菱・デボネアのライセンス生産車でした。
4代目は、日本では2006年1月にガソリン車が発売され、同年秋にはLPGモデル「グレンジャーLPI」が追加されました。
このグレンジャーLPIは、排気量2700ccのV6エンジンを搭載。
当時国産LPGセダンが従来のガスミキサー式だったのに対し、グレンジャーLPIはLPガスを液状のまま、電子制御で噴射する新しい方式を採用していました。
ヒュンダイ・グレンジャー 東個協 2011年8月撮影
LPG車の燃料供給方式において、日本メーカーよりも韓国メーカーが先行したのはなぜでしょうか。
その理由として考えられるのは、韓国ではLPG車が普及していることです。
日本LPガス協会によると、日本のLPG車は約28万台。その多くがタクシーや商用車で、環境負荷の少ない燃料というよりも、業務用車両の燃料というイメージが強いです。
一方、全世界のLPG車は2010年時点で約1750万台。中でも、韓国は約230万台を保有する世界有数のLPG車大国となっていて、自家用車のラインナップもあるようです。
全長4895ミリ、全幅1865ミリ、全高1490ミリという、180系クラウンやY50フーガを上回る大きな車体。一方で、クラウンやフーガにはガソリン車の設定しかないのに対し、グレンジャーにはLPG車があるので、燃料費が安い。そして、グレンジャーLPIのメーカー希望小売価格は、標準グレードで約297万円、上級グレードでも約329万円…。これらを武器に、グレンジャーは、圧倒的シェアを誇る国産のタクシー車両に挑戦しました。
しかし、個人タクシーでは、たまに見かける程度の存在にはなったものの、法人タクシーには広まらず、導入したのはエアーマジックの運営する「PARK LIMO」(板橋区)など、ごく一部にとどまりました。
日経産業新聞(2009年11月30日付)によれば、そもそも2001年に日本市場に参入したヒュンダイは、2004年の2524台が販売台数のピークで、2009年1月~10月の販売台数は僅か764台と低迷し、同年を最後に日本の乗用車市場から撤退しました。これに伴い、グレンジャーの販売も終了。日本で販売されるヒュンダイ車は、大型観光バス「ユニバース」だけです。
なお、同紙は、当時世界6位のヒュンダイが日本市場からの撤退を決めたことを、国内自動車市場の縮小の象徴として捉えています。
しかし、日本市場には有力な国産車が揃い、外国車といえば、国産車を凌ぐブランドとして欧米メーカーの高級車が想起されます。そのような環境において、日本の消費者が敢えて韓国車を選ぶには、ヒュンダイ車のブランドイメージや信頼性、訴求力が及ばなかったと言えるのではないでしょうか。