雨のそぼ降る金曜日、亀有駅に降り立ちます。
千葉県育ちのせいか、JRだと総武線が最寄りのような気がするのですが、実は我が家から一番近いJRの駅はこちら、亀有駅なんですね。
駅前には両さんの像、商店街ののぼりも両津勘吉。そんな北口中通り商店街の入り口ほど近く、まさに看板どおり、ここが亀有の関所、江戸っ子です。
ご近所立石の江戸っ子、その本店がこちら亀有店とのこと。
立石店と同じ関所の看板、店の前一杯を覆うもつやきの白い暖簾を潜り抜けると、これは立石店とことなり、扉がありません。
暖簾の正面に焼き台、その両側にカウンターが出来ています。もちろん、混み合えば焼き台の目の前でも立飲みができる。これは吉祥寺の伊勢屋本店旧店舗を彷彿とさせますね。
店内は二階構成で、一階は立飲みスペース、二階は椅子席と聞いていたのですが、一階も焼き台向かって右手は椅子席になっています。今日は暖簾をくぐって左手、立飲みスペースにお邪魔します。
これも立石店との共通点、焼き台には大将が張り付いていますが、店内のスタッフは皆女性。目の前のお姉さんに、ボールと煮込みをお願いします。立石と同じつもりで、煮込み豆腐とオーダーすると、「煮込み?豆腐だけ?」と聞き返されてしまいました。出てきたものを見てわかったのですが、こちらは煮込みとお願いすれば、豆腐が一つ入ってきます。そして、大はし方式で、豆腐だけというオーダーができるようですね。
琥珀色のボールは立石と同じ、比べてみると少し辛目かな。でもやさしい系のボールです。そして、煮込みに箸を伸ばしましょう。一口食べてみて、うぐぅ…唸ってしまいました。これは立石店以上だ!もともと立石江戸っ子の煮込みは私的三大煮込みに入ってまして、やさしい味噌出汁で、とろっとしたシロの食感が楽しめ、かつ早い時間になくなってしまう豆腐も入れば、至福の味わいなんでございますよ。ところが亀有のそれは、ベースは立石店とほぼ等しい味わい、しかし、なんと言うんでしょう、もつがよりフレッシュな感じがするんですよ。とろとろ感がさらに増しているというか。いやあ、これ旨いわ~。
思わずガツガツ食べてしまいましたが、ボールを飲んで一息ついてと。
次は焼き物も行ってみましょう。もつは一串70円から、基本は4本一皿280円というのは立石と一緒、で、同じタレなら二本ずつの「混ぜ」ができるのも同じですね。たれは四種類、日本一の甘たれ、ニンニクの味カラタレ、サッパリと塩焼き(いずれも店内表記から)、そして、立石店では失われた、味噌ダレです。
今日はこの味噌ダレがどういうものか楽しみにして来たんですよ。レバカシラまぜ味噌タレでいただきましょう。
渋い表情で焼き台に向かう親父さん。誰かに似ているなぁと思い返しながら、ボールをチビチビ。
バイクを置いて行こうとする高校生に、「バイク置いてどこ行くの?」と声かけする親父さん、うむ正しい大人だ。
焼きあがったもつ焼きをガブリと一口、なるほど朝鮮風ってのはよくわかりますね。ニンニクがピリッと効いて、味噌のこくが食欲をくすぐる、わかりやすく言えば焼肉のタレ的な味わいです。
これ、いけますわ~。レバの熱々もうまいし、カシラなんか本当に焼肉食べてる感じになるもんね。これで70円はいかんでしょう~。
塩も試してみようと思っていたのですが、そんな気持ちはどこへやら。次はハツとだんごをこれまたミソでお願いしてしまいます。
はつはやや薄め、団子はいわゆるチキンボールかな?最初の皿には負けますけど、どちらもタレの旨味で食べさせてしまう感じがします。万能調味料だねぇ、こりゃ。これは誰かと来て、全種みそで試してみたいなぁ。
ん、よくよく品書きを見ると、これは立石にはない四種混合のみつくろいってのがあるんですね。次回は味噌みつくろいで勝負だね。
さて、雨も強くなってきたようだし、お会計をお願いしましょうか。ボール二つに三皿で1400円、お財布にやさしいのは立石も亀有も同じですね。この価格だもん、お父さんは毎日引っかかるよね。関所の看板に偽りなし。
と、出がけに「ありがとうございます」と振り返った親父さんの顔を見て、ああ、そうだ、チャールズ・ブロンソンだ。
アフロがかった髪型はともかく、豊かな口ひげ、ニヒルな眼差し、男の顔ですねぇ。確実にまた、お邪魔します。
関所をあとに、雨の亀有に男は一人消えていく…。
巷に雨の降る如く、我が心にも涙降る…
ちょっとハードボイルドな気分で、家路に着きました。
帰る道すがら、「う~ん、マンダム」と呟いたかどうかは、御想像にお任せします。