ビールが美味しい季節になった。
夏の黄昏時にグラスを傾け、冷えたビールの喉越しを楽しむ瞬間がたまらない。この一瞬のために、日中必死で頑張っているんだなあと感じるのは、サラリーマンのささやかな愉楽だと思う。
先日、仕事が早く終わった日に、冷えたビールの喉越しを味わいたくて、広島・銀山町の〔ビールスタンド重富〕へ向かった。
〔ビールスタンド重富〕は、今月開店したばかり。酒店の一角で美味しい生ビールを提供するという。
営業は午後5時から午後7時の2時間のみ。つまみも出ず、しかも立ち飲み。ビールは1人2杯しか提供しない。ある意味ハードルが高いお店だと思う。
ではなぜこのような営業形態にしたのだろうか?
マスターである重富酒店の重富社長によると、「つまみなしでビールを美味しく飲める限界が2杯。その後、美味しい料理が出るお店に行って、食事と共にお酒を楽しんで欲しい」から。
〔ビールスタンド重富〕では、旨い生ビールの喉越しを楽しむことに専念するしかないのだ。何とも潔い。
〔ビールスタンド重富〕の扉を開けると、何ともレトロなビールサーバーが鎮座していた。
聞くと、戦前に用いられていたビールサーバーだとのこと。もちろん、電気で冷やす現在の方式ではなく、氷冷式である。氷でビア樽を冷やすので、冷えすぎずビールを美味しく飲むための適温になるのである。
生ビールは、重富社長自らに注いで頂ける。
注ぎ方は「壱度注ぎ」「弐度注ぎ」「参度注ぎ」「重富注ぎ」の計4種類。
注ぎ方によって、ビールの味が明らかに変わるのだ。こればかりは、文章で説明するのは難しい。炎天下を歩いた後、喉をからからにして味わって頂いて初めて分かる美味しさだと思うからだ。
長らく安芸郡府中町にビール工場があったためか、広島はもともとビール人気が高い街ではあったが、このところ、広島のビール事情はますます活気を帯びている。
地元発信でビールの魅力を広めようとする〔ビールスタンド重富〕以外にも、大手ビールメーカーにより先月期間限定でオープンした〔一番搾り フローズンガーデン〕が人気である。
また、ベルギービールや日本の地ビールを供する専門店〔ゴールデンガーデン〕や〔ラクビア〕の人気は、既に定着している。
ここ数日で、ビールの美味しさについて驚きや納得を得ることができた。
また、夏が終わるまでに数十杯?の美味しい生ビールを満喫することができそうだ。
根っからのビール好きにとって、広島がより一層「ビールの美味しい街」になることは、本当に嬉しい限りである。
※〔一番搾り フローズンガーデン〕は、2015年現在営業されておりません。
(2012年7月6日執筆。「Web旬遊」所収)