宝瓶宮 30.貴方が誰の生命だろうと

―1月30日―

自分はボスの生命線だ、とレオンは言った。
右腕である自分は組織の生命線のような物、自分がいなくなるだけでも大分損害が出るだろうと。
「だから、命を落とすわけにはいかない。」
レオンは傷だらけになって帰ってくるたびそう言っていた。

レオンにはレオンの仕事がある。だからいつも私を手伝ってくれるというわけにはいかない。
彼と一緒にいる時は無条件に楽しかったけれど、その分彼がいない時間は寂しく感じた。
「お前、復讐を終えたらどうする気だ。」
ある日そう問われた時、私はすぐには答えられなかった。
両親の後を追います、と言おうとしたが、言えなかった。
「一つだけ言わせろ。」
レオンの青い目が私の目をまっすぐに見る。
「親の所へ行くなんて真似だけは、絶対するな。」
彼はきっぱりとそう言い切った。
私は、思わず頷いていた。
彼の言葉と、真っ直ぐに射抜いてくる眼差しに気圧されてしまった。
何だろう、彼は、命を簡単に捨てることを良しとしていない節がある。
その理由は遂に聞けず仕舞いに終わったけれど、私はその時の彼の顔を忘れることはなかった。


貴方が誰の生命だろうと、私にとって大切な人であることには変わりない。
私は、誰かの生命同然の人になれたのだろうか?
―――できることなら、レオンの生命同然の人になりたかった。