紙 短 情 長

私「蒐」が日々の雑感や趣味の小説を書き綴っていくブログです。
書きたいことはたくさんあっても書ききれないです。


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《20時半 桐山家から朔宅へ》

-もしもし。

「もしもし、夜分遅くすみません。朔類さんですか?」

-いえ、私は類の妹の友です。どちら様でしょうか?

「ああすみません、私、お宅のお姉さんと同じクラスの桐山秋次の父です。

 つかぬことをお伺いしますが、うちの息子がそちらに来ていないでしょうか?」

-桐山君ですか? いえ、来ておりません。何かありましたか?

「いえ、大したことじゃあないんですが…。

 30分くらい前から、息子の姿が見えないんですよ。夕食の時は確かに家にいたんですがね。

 で、部屋に置き忘れて行った携帯電話を覗いてみたら、友達とメールのやりとりをしていまして、今夜肝試しに行くと言っていたようなんです。」

-肝試し? …あっ、まさか

「心当たりがあるんですか?」

-ええ。姉が帰宅した時に、クラスメイトから肝試しに誘われたと話していました。

 もしかして、桐山君が…?

「かもしれません。息子のメールには『朔さんも誘った』とありました。」

-そうですか、他に肝試しに誘った人の事は?

「後二人ありました。どちらも息子と同じクラスの生徒さんです。これからそのお二方にも連絡を取ってみる予定です。」

-分かりました。ところで…

「何でしょう?」

-どうして家に連絡をくださったんですか? 息子さんが心配だからというだけではないように思えるのですが。

「…!(息を飲む音)

 …ええ、そうですね。念のために話した方がいいかもしれません。」

-お願いします。

「実は、息子が今夜肝試しに行った場所なんですがね…。去年の今頃に大学生の変死事件があった呉竹町の別荘地らしいんですよ。」

-え?

「あの事件があった場所に幽霊が出るという根も葉もない噂がネットで流れていて、息子はそれを聞いて肝試しに向かったようなんです。私が所持していたカメラも、一台持ち出されていました。」

-……。

「うちの息子がご迷惑をおかけして申し訳ありません…。これから他の生徒さんの親御さんとも連絡をとって、その後警察にも連絡して捜してもらいます。

あの別荘地は人気のない場所で、かなり危険なんです。不審者が出没した、無人の別荘に空き巣が入ったという話も何度か聞いています。もし息子や朔さんのお姉さん達が危険な目に遭ったらと思うと…。」

-そう気を落とされないでください。私の方からも姉に連絡を入れておきます。

「ありがとうございます。それでは、失礼します…」

-失礼します。

 

――――――

《20時35分:浜田彩音から香々背暁へ》

「はいもしもし、香々背です。」

-夜分遅くにすみません、香々背先生。浜田です。

「ああ、浜田か!

 えっと、どっちの方だっけ?」

-彩音です。突然すみません。

「いや、いいよいいよ。で、どうした?」

-実は、今日警察の方が家を訪ねて来まして…××さんの姿を見ていないかと訊ねられたんです。

「××って、浜田が前に手紙で教えてくれた人か?」

-はい。三か月前から行方が分からなくなっているというのは手紙でもお伝えしたんですが、今日になって彼らしき人を見かけたという目撃情報があったそうなんです。

「浜田、君が今住んでるところって確か…」

-若竹町です。駅で電車から降りる所を見たという情報と、駅のロータリーからバスに乗った所を見たという情報が寄せられていると、刑事さんから聞きました。

「そうか。君は見ていないのか?」

-いえ、私はその時間大学の講義に出ていたので。刑事さんにもそう伝えてあります。

「そうか…。」

-本当にすみません、もしかしたら先生も知ってるんじゃないかと思ってお電話させていただいたんですが…。

 その…先生は、緋村君とお手紙のやりとりをされていたんですよね。

「…ああ。」

-緋村君が亡くなった時、先生の方にも刑事さんが事情聴取に行ったと聞きました。その…やっぱり、色々と聞かれたんですか。

「ああ、聞かれたよ。手紙のやりとりをしていたことも、彼と会ったきっかけの事も全部話したよ。

 直前の手紙にも、おかしなそぶりは何もなかったと…。」

-…そうですか。

「どうした?」

-いえ。その…緋村君が亡くなる前に危険ドラッグを所持していたというのが、どうしても信じられないんです。前にもお話したと思いますが、私、何度も緋村君と顔を合わせていたから彼の人柄はよく知っているんです。自分がお金持ちの子供であることを自慢したり、傲慢に振舞ったりするようなことなんか一度もなかった、本当に優しい人だったんですよ。

 コンクールでのトラブルの時だってそうでした。彼が一度も殴り返さずにやられっぱなしだったの、覚えてますか?

「ああ。そういえば、そうだったね。」

-あんな大人しい人が危険ドラッグを持つなんて、本当に信じられなくて…。

「…僕だってそうだったよ。警察から話を聞いた時は、正直信じられなかった。」

-私と同じ教室に通っている人達も、緋村君は悪い人に騙されて危険ドラッグを掴まされたんじゃないかって噂していました。

「そうか。」

-それで…今日警察の方から聞いた話なんですが、緋村君のお友達の××さん、危険ドラッグを所持していたらしいんです。

「じゃあ、××さんはそれが原因で警察に追われていたのか?」

-いいえ、それだけじゃないんです。

 その危険ドラッグというのが…緋村君が、亡くなる前に吸っていたものと同じものだったと…。

「何…?」

-それだけではないんです。緋村君が所持していた危険ドラッグの容れ物から、××さんの指紋が検出されたそうで…警察の方は、××さんが緋村君に危険ドラッグを渡したんじゃないかとお話していました。

「…!」

-××さんが最後に向かった先は呉竹町の別荘地…緋村君が亡くなった所に近い場所だそうです。その場所へ向かうバスに乗った所が目撃されたそうです。

「……」

-そんな所へ向かうってことは…まさか、とは思いますが…。

「浜田、」

-ごめんなさい、でもどうしても話しておきたかったんです。

 先生も…少しの間だけですけど、緋村君と接点のあった人ですから。

 だから、もし、何か知っていることがあったら教えていただきたかったのですが…

「いや…いいんだ。

 その××という人に関しては、警察の方が捜しているんだろう?」

-ええ。

「なら、後は警察に任せておきなさい。」

-そうですね…。分かりました、ありがとうございます。

 それじゃあ、おやすみなさい。

「ああ、おやすみ。」

 

――――――

《同時刻:朔友から朔類へ》

-おかけになった電話は、現在電波の届かない所にあるか、使用できない状態です。

 

――――――

《20時38分:朔友から英家へ》

-はい、英です。

「夜分遅くに申し訳ありません、私、英さんのクラスメイトの朔といいます。

 英さんに代わっていただけませんか?」

-ええ、構いませんよ。

 (遠くの方で)のばらー、お友達から電話よ!

「…!?」 

 

-お電話変わりました、英のばらです。

「あの…小紅さんじゃないんですか?」

-え?

「妹さんの方、ですよね?」

-ええ、そうですけど…あれ? もしかして、

「ええ、朔類の妹です。」

-ああ~、そうなんだ! 声そっくりだから気付かなかったよ。

 で、どうしたの?」

「…英さん。肝試しに行ったんじゃないんですか?」

-え…何でそれを?

「夕方姉から聞いたの。英さんがクラスの子に肝試しに誘われたって。」

-ああ、それね…私も、小紅に話したの。そしたら、

「そしたら?」

-小紅が『じゃあ入れ替わろう』って…。桐山君は私達とほとんど会ったことないから見分けがつかないだろうって。

「どうしてそんな、」

-ごめん、私も止めたの。でも、そんな危険な場所に行かせるわけにはいかないって小紅が聞かなくて…。

「…そうだったんですか。」

-うん…。ねえ、そういえばお姉さんから電話無かった?

「いいえ、かけたんですが繋がりませんでした。そっちの方は?」

-こっちも同じ。携帯が電池切れになってるのか通話中なのかわからないけど、繋がらない。

「わかりました、それじゃあまた時間を置いて連絡してみましょう。

 後、桐山君のお父さんがこれから他に誘われた人のお家にも連絡を入れるとおっしゃっていました。」

 

-そっか。わかった、それなら早めに切り上げた方がいいよね。

「ええ。それじゃあ、また後で。」

-あ、ちょっと待って。何かあった時のために携帯の番号教えとくよ。

 

-それじゃあ、何かあったら電話してね。

「はい。おやすみなさい。」

-おやすみ。

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