石村先生(石村式速記法創始者)
没後7年にあって
…あの石村先生の
よき意味での
「怨念(おんねん)」
7年前のきょう、11月28日に冥界へと旅立たれた石村先生。
大正5年(1916年)3月9日生まれの石村先生、ご存命ならば、既に今年、100歳の生誕日を迎えておられる。
私と同じ辰年かつ魚座の石村先生、福岡の「銘菓 鶴乃子」を生む「石村萬盛堂」の創業者の次男でもあられた石村先生…その石村先生の速記は、まずもって「書きやすさ重視」である。
殊に私が学んだところのいわゆる「1967年型」と分類されている時代のものは、書きやすさ重視のため、縦方向の垂直線を極力廃する研究の歩みの中の最初の「頂(いただき)」地点であったと思う。
「ノ」を表す線(≒早稲田式や中根式の「ナ」とほぼ同様の線か≒ピットマン式の「n」の線か≒水平方向左回転の浅い曲線)の末尾を大フック状に曲げたものが「タ」となっている点など、50音基礎符号構成としては例外もいいところだが、ユニークな一面でもある。
そんな石村先生の速記方式開発研究の歩みは、50音基礎符号の改変の歩みでもあると言ってよいだろう。
我々、一部の速記研究者の間でも、「これでもか」というほどの飽くなき改変の連続であった。
もちろん、基礎符号レベルでの改変は、学習者の学習の連続性や、学習者同士の連結一体性を損なう部分も少なからずあるだろうし、実際あったであろう。
そしてまた、石村先生の速記法改変の試みは、基礎符号のみならず、特に濁音表示法、長音表示法といった部分でも、試行錯誤の繰り返し、表示手法の何とおりもの組み換えの歴史でもあった。
「書きやすさを重んじる」ということと同等にと言ってもよいだろうか、「読みやすさを重んじていた」という点も、あえて言うまでもなく石村先生の速記法から分かる点である。
「書きやすさ、読みやすさを重んじる」というのは、世の速記研究では当たり前といえば当たり前のことでもあろうが、石村先生の研究においては、殊に清音と濁音の明確な区別、つまり濁音表示の方法をいかに確保するかということが、一番特徴の感じられる点でもあった。
実際に濁音や長音をどのように表示するかという具体例はここでは挙げないが、まず、「書きやすさを重んじる」という部分から、石村先生の速記法に生じた諸論点といった部分として私が気付き思ったことをここから述べたいと思う。
何度も述べるのだが、「書きやすさを重んじる」…それも、特によく使われる傾向にある音にはできるだけ書きやすい線を当てるようにした跡が見て取れる。
そして、そういったことと引き換えに、特に長音表示や濁音表示など、ところどころに例外的な部分も抱えざるを得なかったようである。
例外が全くなしで、かつ頻出する音に最適線をきれいに当てはめることなど、およそ到底無理な話でもあるのは事実だと思う。
そんなわけで、50音基礎符号にあっても、各列、各行の規則性としては、全く例外なしというわけにはどうしてもいかなかった点が見て取れる。
それでも、いったん習得してしまったあかつきには、他の多くの速記方式と比較しても、比較的なめらかな符号群の流れが出現する箇所も多く、手書き速記方式としての理想を求めて研究開発に苦心を重ねた結果のものであることが十分よく分かるものでもある。
日本語を書く場合に、音の組み合わせ、語によっては、幾とおりかの書き方が想定される場合も少なからず出現するなど、長所ばかりとは言えない部分もなきにしもあらずだが、いかなる速記方式も、その方式が抱える長短を併せ呑むことによって成立するものでもあろう。
石村式がたどった行跡は、一つの速記研究の「あっぱれ」として、その名を留めることであろう。
完璧な速記方式など存在しない。
石村式で日本語を書いた場合に、場合によりとても書きやすく美しい線が出て、なおかつ読みやすかった場合など、「ああ、やっぱり伊達ではない、なっかなかのものだ、うん凄い」と唸ることが今まで何度あったことだろう。
石村式の速記符号、速記法としての考え方、線の選び方等々、それらすべてには、あの石村先生のよき意味での「怨念(おんねん)」がこもっている…、そんなことを思い懐かしむ時間も、私の速記人生の一コマである。
↓ 石村式速記法 符号サンプル(2枚)
↓ 画像1枚目の訳
石村式で日本語を書いた場合に、場合によりとても
書きやすく美しい線が出て、なおかつ読みやすかった
場合など、「ああ、やっぱり伊達ではない、なっかなかのものだ、
うん凄い」と唸ることが今まで何度あったことだろう。
↓ 画像2枚目の訳
石村式の速記符号、速記法としての考え方、線の選び方
等々、それらすべてには、あの石村先生のよき意味での
「怨念」がこもっている…、そんなことを思い懐かしむ時間も、
私の速記人生の一コマである。
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