その日は潤くんはお友達の舞台を観に行っていた。
舞台終わりで少し飲んで帰ってきた潤くん。
「もうご飯はいらない?お酒飲むならおつまみ作ろうか?」
『ん~そうねぇ。じゃあもう少し飲んじゃおっかなぁ。』
ドラマが終わった潤くんは毎日好きなことをして楽しそう。
もちろん完全にお休みの日がずっと続いているわけではないし、色々と忙しいみたいだけどね。
「舞台どうだった?良かった?」
『うん、中々良かったよ。フフ』
キッチンに立つ私をカウンターから眺めている潤くん。
そこは最早彼の定位置。
この部屋に引っ越してきた当初からずっと、ワイングラス片手にいっつもお料理している私を見てニヤニヤしてるの。くす(笑)
「ちょっと気持ち悪い。くす(笑)」
『何だよ気持ち悪いって~失礼だなぁ。愛する旦那様だぞ?フフ』
「そんなに私のこと好きなの?」
『はい?』
「ニヤニヤしちゃって。くすくす(笑)」
『いいだろ別に~フフ』
「あ、そうだ。今日ね、すごいビックリしたことがあったの」
私はお散歩中に偶然剛くんに会ったことを報告した。
『剛くんって誰だよ?』
「潤くんと付き合う前に付き合ってた元カレ。」
『はっ?』
「別に何にもないよ?ただ久しぶりって挨拶しただけ。
逆に何で今まで会わなかったのか不思議なくらいだよ。だってこんなにもご近所なんだよ?ホント驚いたぁ。」
『…』
「結婚して、去年お子さん産まれたって。元カレと再会とかそうそう無いもんね~そんな偶然もあるもんだね。」
今日あった出来事をただ報告しただけだよ?
別に何もないし、そんな変なつもりもないし。
『彩…?』
「ん?」
『元カレとか別に聞きたくねーけど?』
カウンターに背中を向けてお喋りしていた私は、すぐ傍まで潤くんが来ていたことに気付かずに…
「うわぁ!」
振り返ると目の前に潤くんの顔があって…
『お前は俺だけ見てればいいんだよ…』
やっぱり松本さん酔ってる?
「ちょっ、じゅ…ン」
スイッチ…
入っちゃったみたい
強引に押し付けられた唇。
「ンっ…!」
わ、私にだって翔ちゃん以外の元カレがいたっておかしくないでしょう?
寧ろ翔ちゃんと潤くんしか知らないとか…その方が問題じゃない?
それなりに普通の恋愛だってしてきたんだから
「ちょっ、潤…く…っ!」
頑張って抵抗して、なんとか解放された唇。
「もう…どんだけ私のこと好きなのよ!くす(笑)」
二人きりで過ごす時間もあと僅か。
ひーちゃんが生まれてもこうして妬いてくれるだろうか?
ひーちゃんは女の子。
今から嫁にはやらないって言っている潤くんだけど…
ひーちゃんばかり可愛がって私を蔑ろにしない?
心配だなぁ。くす(笑)
ひーちゃんが生まれても…私が一番でいてくれる?
もしかしたら…ママとひーちゃんは永遠のライバルになるのかもね?フフ