救急救命センター、ICUでの研修
私は麻酔研修で一人の天才医師に出会いました。その先生から大きな影響を受け今に至っています。研修を受けた病院では救急救命センター、ICUも麻酔科管理であり、麻酔研修はそのまま救急救命センター、ICUでの研修になりました。
麻酔、ICU管理は非常にシンプルで分かりやすいものでした。「環境を整えてやれば患者さんは自分で治っていく」ということでした。
一般的なICU管理では、薬による沈静を行い、人工呼吸器により呼吸コントロールを行います。
薬による沈静はおこないませんでした、人工呼吸もできるだけかけないようにしていました。重症患者さんで大切なのは肺での酸素化です。酸素化を良くするのに必要なのは人工的な呼吸ではなく、持続的な肺内圧力です。重症患者さんでは一回呼吸量が減るため、二酸化炭素の濃度が高くなってしまいます。それをさけるため、人工呼吸器でコントロールするわけですが、この人工呼吸によるコントロールにより患者さんは楽をして人工呼吸器に頼ってしまいます。人工呼吸器からの脱離(ウィニング)が長引いてしまいます。二酸化炭素はある程度高いほうが、呼吸量は増え、呼吸器機からの脱離が早くなります。重症患者さんに問題なのは低酸素化であって、呼吸量のコントロールではないのです。また沈静も意識レベルの低下がおこって、呼吸器機からの脱離が長引きます。酸素化を良くするには肺胞を広げることです、息を吐いたあとも肺胞が縮まない様に圧をかけ続けます。(この圧をかけることが人工呼吸ではpeep,自発呼吸ではcpapと呼ばれています)
沈静させなければ、患者さんは喉に管が入っているので苦しく暴れることがあります、それでどのようにするかというと、意識が戻る時に「喉に管が入っているから苦しいですよ、がんばって下さい」などと言い聞かせるのです。いつ意識が戻るかわかりませんので、ずっと意識レベルを確認しながら、言い聞かせ続けるのです。すると多くの患者さんは暴れません。また、急に暴れて呼吸器がはずれないように患者さんをみていなければいけません。意識レベル、酸素化、呼吸数の変化をみて呼吸器からの脱離を最短にもっていくのです。これがモニタリングといわれるものです。
呼吸器の脱離が遅くなるということはギリギリで生きている重症患者さんでは死を意味します。脱離は早ければ早いほど良いのです。管理する医師はずっと患者さんをみている必要があります。しかしただ見守り言い聞かせることによって、呼吸器からの脱離を早くすることができます。「お前らのできることは、患者をみてることだけだろ、ずっとみてろ、寝るな!」と言われていました。確かに消えそうな命の炎は寝ないで見守っていると消えることはなく、安定していきます。またそれにはいかにうまく酸素を送ってあげるかにかかっています。
みていることができないなら沈静をして人工呼吸器でコントロールしたほうが安全でしょう、ただこのことにあまり疑問ももたないで、いくら重症な患者さんでも同じように管理するのには疑問があります。
全身麻酔では心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和度などを記録して図にあらわします。これをチャートといいます。
全身麻酔ではこれらをただ書いているだけのことが多いように思えます。喉から肺に管をとおし酸素を送り、血圧、心拍を記録、呼吸は薬で止めてしまって人工呼吸でコントロールする。血圧が上がれば下げ、下がれば上げる、ただそれだけの麻酔が多いのではないでしょうか?
全身麻酔では意識はなくても、手術などの痛み刺激が加わると心拍数や血圧は変化します。心拍は心臓の状態によっても変化します。心臓に帰ってくる血液の量、電解質などの環境などによっても心拍は変化します。我々はそれを把握し、手術刺激の心臓にかかる負担をさけるため心拍を一定に保つということに神経を集中させていました。
二酸化炭素濃度を低く保つと筋肉の活動は低くなります。人工呼吸を多くすると自発呼吸を止まってしまいます。肺胞を広げるため呼気の最後の圧力を一定に保ち、痛みを遮断するため麻酔は深めに保ちます。自発呼吸を止めないで呼気中二酸化炭素濃度をできるだけ低く保ちます。筋肉の活動を止める薬も使いませんから呼吸器からの脱離は早くなります、麻酔は深めで痛みは感じにくく、二酸化炭素の濃度を低く保つと筋の活動も強くなく安定した状態が得られます。手術の終わりそうになった状態で麻酔を浅くし、二酸化炭素濃度を低めに保ち、手術終了をみはからい二酸化炭素をためていき、咳をださせます、すぐに気管チューブが抜けるようにします。
麻酔担当医はチャートをつけ、それを読み、これからおこる状況を予測していかなければなりません。それはICUでの管理とまったく同じです。何かがおこってから対応するのではなく、なにもおこらないように軌道修正していくのです。危険が予想される部分は準備をして危険な状態をできるだけ短時間で乗り越えていきます。
私は麻酔研修で一人の天才医師に出会いました。その先生から大きな影響を受け今に至っています。研修を受けた病院では救急救命センター、ICUも麻酔科管理であり、麻酔研修はそのまま救急救命センター、ICUでの研修になりました。
麻酔、ICU管理は非常にシンプルで分かりやすいものでした。「環境を整えてやれば患者さんは自分で治っていく」ということでした。
一般的なICU管理では、薬による沈静を行い、人工呼吸器により呼吸コントロールを行います。
薬による沈静はおこないませんでした、人工呼吸もできるだけかけないようにしていました。重症患者さんで大切なのは肺での酸素化です。酸素化を良くするのに必要なのは人工的な呼吸ではなく、持続的な肺内圧力です。重症患者さんでは一回呼吸量が減るため、二酸化炭素の濃度が高くなってしまいます。それをさけるため、人工呼吸器でコントロールするわけですが、この人工呼吸によるコントロールにより患者さんは楽をして人工呼吸器に頼ってしまいます。人工呼吸器からの脱離(ウィニング)が長引いてしまいます。二酸化炭素はある程度高いほうが、呼吸量は増え、呼吸器機からの脱離が早くなります。重症患者さんに問題なのは低酸素化であって、呼吸量のコントロールではないのです。また沈静も意識レベルの低下がおこって、呼吸器機からの脱離が長引きます。酸素化を良くするには肺胞を広げることです、息を吐いたあとも肺胞が縮まない様に圧をかけ続けます。(この圧をかけることが人工呼吸ではpeep,自発呼吸ではcpapと呼ばれています)
沈静させなければ、患者さんは喉に管が入っているので苦しく暴れることがあります、それでどのようにするかというと、意識が戻る時に「喉に管が入っているから苦しいですよ、がんばって下さい」などと言い聞かせるのです。いつ意識が戻るかわかりませんので、ずっと意識レベルを確認しながら、言い聞かせ続けるのです。すると多くの患者さんは暴れません。また、急に暴れて呼吸器がはずれないように患者さんをみていなければいけません。意識レベル、酸素化、呼吸数の変化をみて呼吸器からの脱離を最短にもっていくのです。これがモニタリングといわれるものです。
呼吸器の脱離が遅くなるということはギリギリで生きている重症患者さんでは死を意味します。脱離は早ければ早いほど良いのです。管理する医師はずっと患者さんをみている必要があります。しかしただ見守り言い聞かせることによって、呼吸器からの脱離を早くすることができます。「お前らのできることは、患者をみてることだけだろ、ずっとみてろ、寝るな!」と言われていました。確かに消えそうな命の炎は寝ないで見守っていると消えることはなく、安定していきます。またそれにはいかにうまく酸素を送ってあげるかにかかっています。
みていることができないなら沈静をして人工呼吸器でコントロールしたほうが安全でしょう、ただこのことにあまり疑問ももたないで、いくら重症な患者さんでも同じように管理するのには疑問があります。
全身麻酔では心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和度などを記録して図にあらわします。これをチャートといいます。
全身麻酔ではこれらをただ書いているだけのことが多いように思えます。喉から肺に管をとおし酸素を送り、血圧、心拍を記録、呼吸は薬で止めてしまって人工呼吸でコントロールする。血圧が上がれば下げ、下がれば上げる、ただそれだけの麻酔が多いのではないでしょうか?
全身麻酔では意識はなくても、手術などの痛み刺激が加わると心拍数や血圧は変化します。心拍は心臓の状態によっても変化します。心臓に帰ってくる血液の量、電解質などの環境などによっても心拍は変化します。我々はそれを把握し、手術刺激の心臓にかかる負担をさけるため心拍を一定に保つということに神経を集中させていました。
二酸化炭素濃度を低く保つと筋肉の活動は低くなります。人工呼吸を多くすると自発呼吸を止まってしまいます。肺胞を広げるため呼気の最後の圧力を一定に保ち、痛みを遮断するため麻酔は深めに保ちます。自発呼吸を止めないで呼気中二酸化炭素濃度をできるだけ低く保ちます。筋肉の活動を止める薬も使いませんから呼吸器からの脱離は早くなります、麻酔は深めで痛みは感じにくく、二酸化炭素の濃度を低く保つと筋の活動も強くなく安定した状態が得られます。手術の終わりそうになった状態で麻酔を浅くし、二酸化炭素濃度を低めに保ち、手術終了をみはからい二酸化炭素をためていき、咳をださせます、すぐに気管チューブが抜けるようにします。
麻酔担当医はチャートをつけ、それを読み、これからおこる状況を予測していかなければなりません。それはICUでの管理とまったく同じです。何かがおこってから対応するのではなく、なにもおこらないように軌道修正していくのです。危険が予想される部分は準備をして危険な状態をできるだけ短時間で乗り越えていきます。