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2019年春。世界は激動している。アメリカではロバート・ムラー特別検察官の報告を受け大統領弾劾の議論が佳境を迎えている。イギリスはブレグジット(EU離脱)の期限が迫り、運命の岐路に立たされている。

ニュージーランドでは史上最悪の銃乱射事件の波紋が広がり続ける。インドとパキスタンの核保有国同士の緊張が高まっている。ベネズエラで大統領の座をめぐる争いがロシアvsアメリカという冷戦時代の対立構造を再現している。

そして日本では......新元号が決まった!

「中略」

漢字2文字に日本の電波はどれほど占領されていたのか。昼間にチャンネルを回すと民放各局の放送内容はだいたい「元号!」「元号!」「元号!」「韓国ドラマ再放送!」「元号!」という感じで見事に熱狂していた(というか「チャンネルを回す」って昭和だね)。「中略」
そして、いよいよ発表の瞬間が来た。お茶の間でも街角の大型ビジョンの前でも、みんなが画面にクギ付け状態で国民的アイドルの菅義偉官房長官の登場を待っていた。「新しい元号は『れいわ』であります」と伝え、2分近く無言で額縁付きの「令和」をカメラに見せた。

どストレートな演出だが、視聴者は魅了された。NHK関東地区の11 時台のニュースの視聴率は19.3%。これは前4週の平均の10倍以上の超高視聴率だ。ちなみに、直後の気象情報の視聴率は21.7%だった。テレビのコンテンツとして「令和」もすごいけど、「晴れのち曇り」もなかなかだ。

発表後もフィーバーがいっそうヒートアップ。新聞の号外が奪い合いになった。元号の典拠となった万葉集が売り切れた。「令和〇〇」の登録ラッシュが始まった。ゴールデンボンバーが速攻で新曲「令和」のミュージックビデオをリリースした。

そして、宮城県で「元号が変わるから過払い保険金の返金処理を今日中にやる必要がある」というタイムリーな嘘で、高齢女性からキャッシュカードと暗証番号をだまし取る「令和詐欺」が発生した。

令和フィーバー:使いづらいものの発表にお祭り騒ぎの愛すべき日本

4/9(火) 16:50配信

ニューズウィーク日本版

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190409-00010003-newsweek-int

 

世界も本当は憧れてる(かも)

詐欺師は別にしても、みんな盛り上がり過ぎだろう! という声も聞こえた。メディアは主に肯定的な見解だが、ちまたではひそかな「反元号」のさざ波も起きた。特に「そろそろ西暦でよくない?」という疑問が目立っていた。

当然かもしれない。銀行の窓口近くに「今は平成〇年」と書いてあるぐらい、普段から元号を使っていない人が多い。僕も子供の誕生年を元号で聞かれるとすぐには答えられないし、僕の周りで複数の元号をまたぐときの引き算がすぐできる人はいない。

「大正3年創業のお店って、何年前からあるの?」と聞いても、みんな「うん、老舗ですね~!」としか言わない。答えられる人でも「大正元年は1912年だから......」と、西暦に直してから計算する。歴史上の出来事が最も分かりづらい。「1315年の大飢饉」と聞いたらすぐ分かるけど、「明暦の大火」ではいつごろ起きたことかピンとこない。その名称に「いつ起きたか」という情報が入っているのに!

そんな使いづらいものの新バージョンが発表されるときにお祭り騒ぎをする日本人は、世界の目にどう映るのか。正直、そんなこと気にしなくていいと思う!

各国でも不思議な伝統がある。アメリカのメディアは2月2日に冬眠から覚めたグラウンドホッグが自分の影に気付くかどうかを大きく報道する。スペイン人はトマトを投げ合う。坂の上から転がしたチーズを追っ掛けて、イギリス人も転がっていく。きっかけは何であれ、祭りは楽しいもの。

それよりも、グローバル化に伴い、さまざまな面で「日本っぽさ」が消え続けるなか、現代に残る日本独自の文化を大切にするのは実に素晴らしいことだと思う。

神武天皇から数えると日本の天皇家は2600年以上も続いている。2番目のビザンチン帝国の倍以上の歴史を誇る世界最長の朝廷だが、元号は国の長い道のりの進み具合を計る一里塚的な存在となっている。考えてみれば、日本の元号の数(248)はアメリカ独立宣言からの年数(242)よりも多い! 世界は元号騒ぎをする日本をおかしく思うより、実は羨ましく思っているかもしれない。

何といっても、太古から続くこの国は今も世界で例を見ないほどの安定国家。平均寿命が長く、治安がいい。教育も倫理レベルも高い。スキャンダルはあるが、ダブル学園問題、統計問題、忖度発言などは世界から見れば超かわいいもの。麻薬使用者やジャーナリストを殺していないし、首脳側近が塀の中に入っていないし、不正選挙をしていない......。

激動の時代に珍しいほど揺らいでいない国だからこそ、新元号がトップニュースとなり得る。この騒動があったからこそ「令和」は昔からの伝統・文化だけではなく、和やかな現在をも象徴する大事な元号となるのではないか。

少なくとも、僕はそう思う。誰も僕の意見を聞いていないけど。

<2019年4月16日号掲載>

 

 

https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2019/04/post-45_2.php

 

確かにパックンの皮肉を込めた(?)令和論は的を当てているかもしれない。…があえて言おう、何が不正選挙してないだ!?何が安定国家だ!?不正選挙してるし不安定国家だよ!!頭いい奴ならそう答えるぜ!!!!ほぼ100%な。

 

おまけ