森友文書改ざん問題で窮地に追い込まれている安倍首相だが、憲法改正はまったく諦めていないらしい。

 自民党内では、9条2項の扱いをめぐって意見が対立し、憲法改正案の早急な取りまとめが難しいと言われていたが、22日の自民党憲法改正推進本部の会合では、細田博之本部長らが強引に「本部長一任」を取り付け、9条への自衛隊明記、参院選の「合区」解消、教育充実、緊急事態条項の4項目の条文案を固めた。

 これは明らかに今日の党大会に間に合わせるためのもので、実際、安倍首相の党大会演説も、改憲を前面に押し出すものとなるという。

 森友問題によって、改憲日程が狂ったなどとする報道もあったが、むしろ逆で、森友隠しのためにも、死にもの狂いで「改憲」を政治日程に乗せ、強引に発議まで持ち込もうというわけだ。実際、自民党憲法改正推進本部の船田元本部長代行は『深層NEWS』(BS日テレ)に出演し、年内に憲法改正の発議をしたいと明確に示した。

 しかし、こうした動きについて、国民やメディアの間にも危機意識はほとんど広がっていない。というのも、世論調査でも憲法改正についてはまだ反対が多く、「発議されても国民投票で過半数がとれるはずがない」という楽観論があるからだ。

 だが、これは大きな間違いだ。もし一旦発議されてしまえば、改正を食い止めることは難しいだろう。というのも、その後の国民投票に大きな落とし穴があるからだ。

 あまり知られていないが実は、現行の国民投票法(「日本国憲法の改正手続きに関する法律」)は、発議した側と資金が潤沢な集団、つまり与党・自民党に絶対的に有利になっているのである。そのなかで大きな役割を果たすのが、大手広告代理店が躍動する“改憲広告”の存在だ。

 本サイトは今回、広告代理店・博報堂に18年間つとめた著述家・本間龍氏にインタビューを申し込んだ。本間氏は元広告マンという視点から『原発プロパガンダ』(岩波書店)など多数の著書を発表。昨年には、国民投票法と“広告”の問題点を指摘した『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)を出版している。はたして現在、憲法改正に向けて広告業界で何が起こっているのか、話を聞いた。

広告規制がないため、改憲勢力と護憲勢力の間に圧倒的な差が

 

──現在、マスコミ世論調査を見ると改憲に反対の声も多く、そうやすやすと改憲などできないと護憲派は思いがちです。しかし本間さんが国民投票法と広告の関係、問題を指摘した『メディアに操作される憲法改正国民投票』を読んで、そんな楽観論が吹き飛びました。

本間 まず強く指摘したいのは、国民投票法には大きな欠陥があるということです。そもそも投票運動期間、通常の言い方で言えば「選挙期間中」に、メディアの広告規制がほぼ存在しない。つまり事実上の無制限なんですね。その期間は最低60日。投票の2週間前から「投票運動」のテレビCMは禁止されますが、しかし「意見広告」などは禁止されていない。たとえば、著名人や企業が「私は賛成です」「反対です」と言った“意見”を述べる広告なら、投票当日までOKなんです。さらに問題なのは、その訴えの“量”に大きな差、つまり不公平さが生じることです。広告宣伝活動には莫大な予算、資金が必要で、金を持っている側が絶対的に有利になる。ですから当然、改憲派である自民党が圧倒的有利。なにしろ政党交付金をいちばん多く受け取っているのは自民党ですから(2016度は約174億円)。また、企業献金も自民党に集中しています(2015年度は約22億円)。

──改憲賛成派、反対派ともに、その主張を正しく国民に訴えることは重要だと思います。しかし、広告というお金がかかる観点から考えると、たしかに最初からお金持ちの自民党、改憲派が圧倒的に優位ですね。

本間 その通りです。金を持っている方がいくらでも金をつっこんで好きなことができる。改憲派には神社本庁や日本会議などの支援団体もいますし、莫大な資金源となるでしょう。その上、自民党には巨大広告代理店の電通がついています。広告規制のない国民投票は、広告屋にとっては非常にオイシイものです。金が無尽蔵にあって「何をしてでもとにかく勝て!」って言われれば、なんでもしますよ。広告屋にとって全ては金です(笑)。かなしいけどね。

──そこには企業として護憲とか改憲という考えはない?

本間 ないでしょうね。儲けるチャンスなんですから。広告代理店にしてみれば、別に改憲でも護憲でもどちらでもいいんです。そんなことは関係ない。お金をくれればきちんと仕事をする。それだけの話です。通常の企業商品のPRと同じなんです。そして、護憲派にとって致命的なのは、今の段階においてもその“中心”が決まっていないことです。どこが中心になって戦略を練るのか、立憲民主党なのか共産党なのか政党も決まっていないし、大きな支援母体もない。お金はあるのか、どこから出すのか、それすらも決まっていない。もうひとつ、広告戦略的に言うとアイコンが大切なんです。いわゆる“顔”ですね。改憲派の顔は、当たり前ですが安倍首相です。安倍首相が改憲を叫び、それが“絵”としてパッと浮かんでくる。だから広告戦略や企画も容易に考えられる。一方、護憲派のアイコンは誰なのかというと、いまだに決まっていない。

──たしかに野党政治家にしても“護憲の顔”が誰かというと、すぐには思いつきません。

本間 知名度も大切です。例えば共産党の志位和夫委員長にしても、広告屋の視点から見れば「知名度的にどうなんでしょう?」となります。相手は日本の首相ですよ。それに勝る知名度、対抗できるようなアイコン、例えば宮崎駿や坂本龍一などを探さなれればならない。しかし、もう今年中に発議がされようかという現時点でも、それが決まっていません。つまり広告屋的に言うと、護憲派はクライアントが存在せず、オーダーさえされていないわけです。国民投票が現実味を帯びているにもかかわらず、護憲派はその対策に何も動いていない。残念ですが今の護憲派には、勝つために何が必要かという考え方が足りません。これはもう、赤子の手をひねるよりも簡単で圧倒的な差でしょう。「中略」

国民投票法を改正して広告規制を

 

──国民投票になれば、そうしたタレントも動員しての連日のプロパガンダが繰り広げられるわけですね。テレビをつければ改憲派の主張一色。そんな事態になれば、改憲に賛成・反対という意見を決めていない人々は大きな影響をうけてしまいます。

本間 福島原発事故以前、電力会社のプロパガンダで7割もの国民が原発政策を支持していたみたいにね。広告宣伝のテクニックで国民の意識をある程度変えることが可能だということです。一方からの圧倒的な量の広告宣伝攻撃に晒されると、多くの人はそれを不思議と思わず、無意識に洗脳されてしまう危険性があるんです。問題はまだあります。こうした大量の広告出稿で潤うのが、他ならぬメディア企業だということです。さらに改憲派からの大量の広告が、そのオピニオンや報道内容、主張にどう影響するのかという懸念もある。

──聞けば聞くほど恐怖を感じます。その改憲シミュレーションを阻止するために、何か方法はあるのでしょうか。

本間 2016年からジャーナリストの今井一さんが主宰する「国民投票のルール改善(国民投票法の改正)を考え求める会」で話し合いが行われています。いろいろと議論がありますが、広告規制の問題に対しての危機意識はみなさん高いようです。今のままだとフェイクCMなども垂れ流されてしまいますから、最低でもテレビCMを無尽蔵に流すことだけは止めたい。そのために、たとえば国民投票は国の行事ですから、国が国民投票広報としてCM予算を全部出すという案や、企業、個人による「イエス! 改憲」みたいな広告は禁止するなどの法改正案や自主規制案を考えています。他にも現行法では、戸別訪問も物品を配ることも飲食のふるまいもOKですし、抜け穴がたくさんあり、“改憲うちわ”などがお祭り会場で配布されかねません。さらに、第三者の監視、検証機関についても法律で定められていないんです。ですから、まず国民投票法そのものを見直す必要があります。そして法改正のためには、国会議員の尽力も必要です。「求める会」の会合には民進党の桜井充氏や杉尾秀哉氏、立憲民主党の山尾志桜里氏、自由党の山本太郎氏などの現職議員も参加しています。また民放連も何も規制しないのはまずいという方針になっていると聞いていますが、しかしマスコミの腰は重いんです。なにもしないままの方が広告代理店やマスコミは潤うから(笑)。そしてもし憲法改正が発議された時点で、護憲派が何の準備もしていなかったら、それは罪だとさえ思います。そうならないためにも、国民投票法には広告規制がない、という致命的な欠陥があることが広く知れ渡ればいいと思っています。

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 本間氏が語るように、改憲発議を目前にしてもなお、護憲派は有効なPRを準備できずにいる。その間、改憲派は自民党を中心に電通とタッグを組み、着々とリサーチや世論誘導を進めている。

 すでに、世論調査の傾向を見ると、ずるずると改憲の方向へ引きずられている。たとえば共同通信が今年1月13・14日に行った調査では、憲法9条に自衛隊を明記する首相の提案には反対52.7%で賛成35.3%を大きく上回った。ところが、同じ共同通信が3月3・4日に行った調査では、同じ質問で賛成が39.2%と上昇し、反対が48.5%とついに過半数を割った。

 何度でも言うが、安倍政権による憲法改悪は、緊急事態条項の新設からもわかるように、現行憲法で保障された国民の基本的人権や自由を奪い、国家に従順させようとするものに他ならない。しかし、現行の国民投票法は発議した側と金持ち、つまり自民党に圧倒的有利となっている。このまま状況を黙って見ているだけでは、改憲は食い止められない。その危機感を共有し、一刻でも早く行動に移すことが求められている。

『メディアに操作される憲法改正国民投票』著者・本間龍氏インタビュー

安倍首相が党大会で「改憲」強行を表明! 裏では電通に依頼して国民投票に向けた大規模広告戦略を計画

安倍首相は、憲法改正問題で「自衛隊をめぐる意見論争に終止符を打つ」と述べ、改憲発議への決意を表明した。

二階俊博幹事長も、憲法改正推進本部がまとめた自衛隊の明記など4項目の改憲条文案をもとに「衆参の憲法審査会で議論を深め、各党や有識者の意見も踏まえ憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指す」と語った。

一方、森友関連文書の書き換え問題で、安倍首相は演説の冒頭で「森友問題の書き換え問題をめぐり大変ご心配おかけ、申し訳ない。国民の行政に対する信頼をゆるがす事態となっており、行政の長として責任を痛感している」と述べた。「中略」会場に近い品川駅前は、政権支持と不支持のデモ隊が入り乱れ、警備当局が厳戒態勢を敷く中で開催された。

 

関連ページその2

 

2018/03/25new    
安倍加憲か、立憲的改憲か
https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=11795&comment_flag=1&block_id=14#_14 | by 高森
朝日新聞(3月24日付)に
「『護憲vs改憲』を超えて〔下〕」
という記事。

〔上〕とは別の3人の識者の意見を載せる。

1人は京都大学教授で国際政治が専門の中西寛氏。

「憲法9条を改正すること自体には賛成です。
…ただ、いま進んでいる9条改正論はどうなのか。
政府は、9条で自衛権の行使は否定されておらず、
自衛隊は合憲という立場を一貫してとってきました。
憲法学者の間に自衛隊違憲論があるという理由で、
従来の政府の解釈をそのまま確認するかたちで条文を改正するのは、
合理性があるとは言いにくい。
1項、2項を残したまま、自衛隊を併記するのは、
政治的には通りやすいでしょうが、論理的整合性に乏しい」

「憲法の条文を改正しなければ対応できない事態は、
ほとんどないと思います。
現に安倍政権は、憲法解釈の変更という先例もつくりました。
法整備や解釈変更で対応できるのなら、あえて憲法の条文に
手をつける必要性は高くありません」

「従来の解釈の確認にすぎない改正を、
衆参両院の3分の2が確保できそうだからやろうというのは、
国内的に納得されず、国際的にも不信感を招くだけです」

次に東京工業大学教授で
南アジア地域研究などが専門の中島岳志氏。

「安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記した3項を加える
改正案を唱えていますが、反対です。
集団的自衛権を認める解釈改憲を追認し、
自衛権の範囲をなし崩し的に拡大してしまいます。
これでは憲法の空洞化です。
そうではなくて、やってはいけないことを明文化し、
自衛権の行使に歯止めをかける『立憲的改憲』が必要だと
考えています」

「戦後の保守政治家は、(憲法)解釈の体系を使いこなしてきました。
アメリカからベトナム戦争で自衛隊の派遣を求められても、
『9条があるから行けません』と主権を行使してきました。
しかし現政権は、集団的自衛権を認める解釈改憲を行って
最後のとりでを崩しました。
『保守』を名乗りながら先人らが共有してきた
慣習を破ることをためらわず、憲法でも『書かれていないことは
やっていい』とばかりに、内閣法制局長官に自分の意をくんでくれる
人を任命して解釈を変えたのです」

「民主制は暴走するものです。
今の政権は3分の2の議席を得たことで、
自分たちの判断こそ民意だと言わんばかりです。
しかし、いかに多くの議席を持ってもやってはいけないことがある。
そのルールを明確化するのが立憲主義です。
今を生きる国民だけでなく、膨大な死者の経験知によって
権力にしばりをかける。
民主的に選ばれた者も憲法によって過去からの拘束を受ける。
この保守的な考え方が今こそ大切です」

「9条を変えることを不安に思う国民は多いでしょう。
…ただし、9条の空洞化も進んでいます。
国民の不安と立憲的な改憲の必要性をどう調整するか。
立憲主義が乗り越えねばならない大きな課題です」

3人目は批評家の東浩紀氏。

「私は憲法改正論者ですが、
決して、安倍首相や自民党が考えているような、
国家主義的で、外交・安全保障政策的に対米従属を
強めていこうとする姿勢に賛成していません。
…護憲か改憲かの単純なイデオロギー対立を超えて、
現在、この国で、どんな条文が必要なのかを一から議論することが
重要です。
憲法の専門家や政治家だけでなく、一般の人々も含めて、
幅広く考えるのです」

「日本人は自分たちで統治のルールを作るという
経験が少ないのです。
自ら考え、議論することで、国民が憲法の意味をより理解でき、
より有効に政府の暴走をおさえる法典になるはずです」

何だかゴー宣道場への参加を
呼び掛けてくれているような気分になる。

同記事〔上・下〕に登場した6人の識者のうち、
2人(松竹伸幸氏、東浩紀氏)は、(憲法とは違うテーマながら)
既にこれまで道場にゲストとして参加戴いている。

もう1人(山元氏)は、来る4月の道場に登壇下さる。

更に別の1人(中島氏)も、
道場の憲法への取り組みのキーワードと言うべき
「立憲的改憲」という方向性を明確に打ち出しておられる。

「立憲的改憲」を真正面から掲げ、
国民に開かれた討議を重ねている場は、
今のところ道場以外にないだろう。

憲法問題を巡る道場の存在意義を改めて痛感させられる。

 

おい、腰抜けみたいな個いうなよ隆盛!

 

 

12国内旅行行くならどこに行きたい?

 

宝塚歌劇団見に行きたい!宝塚大劇場!!