暗いトンネルの先に見えたものは 7 | 脱!マイナス思考。~私の母はパチンコ依存症~

暗いトンネルの先に見えたものは 7

暗いトンネルの先に見えたものは 6 からの続きです。



難病?

なにそれ。私死んじゃうの?



初めて「死」というものを意識した。

やっと結婚出来たのに。これからだというのに。


底の見えない真っ暗な闇の中に落ちていくような感覚になったその時




ブルブルブルブルブル。。。






「・・・・・ねえ、携帯鳴ってるんじゃない?」


「・・・ん?あ、ああ。

ここじゃまずいから外出るわ。会社からみたいだし。」


「うん、行ってきて。」





私に背を向け歩いていく夫を見ながら思う。


こんな風に彼は去っていくのかな。

いや、死んじゃうのは私だから私が彼の元を去っていくのか。


なんだか急に怖くなり、点滴棒を引きずりながら夫の元へと急ぐ。


フラフラしながら病院の玄関口にあるソファへ腰掛けると

駐車場の車の中にいる夫の姿を見つけることが出来た。




「・・・・電話は終わってるみたい・・・。」





運転席のハンドルにうなだれるようにして動かない夫の姿を見て

胸の奥がぎゅうっとなる。


ああ、この人も今どうしていいのか分からないんだ。と。


しばらくして車を降りた夫は、玄関口にいる私に驚きながら




「大した電話じゃなかったよ。」





「会社に戻らなくて平気?大丈夫?」


「大丈夫。会社にいる人間で対処しろよなー。」





差障りのない会話が続く。

沈黙になってしまうのが怖かったのかもしれない。




「・・・ねえ。」


「ん?」


「難病・・・・だって。」


「・・・・・うん。

でもまだ決まったわけじゃないから。」


「うん・・・・。」







返事をしながらも・・・自分の人生が残り少ないのかと考えてしまう。


夫は子供を欲しがっていたのに・・・・

こんなことになるのなら生んでおけば良かった。


でも母親がいないのは可哀相だ。

そうなるくらいなら生まなくて正解だったのかもしれない。


お義父さんお義母さん・・・

ろくでもない嫁でごめんなさい。恩返しも出来ないで。


・・・・私、最後まで迷惑かけてばかり。

あなたに頼りきりで、あなたを振り回してばかりでいい奥さんじゃなかったね。

ごめん・・・・ごめん・・・・・。



夫が帰宅した後も病室のベットでそればかり考えていた。




「先生、難病って私は死んじゃうんですか?」


「いえ、死にませんよ。」




カンファレンス室で医師はこう続けた。




「まだ難病と決まったわけではないです。

入院時に採取した便から出た菌が何種類かありまして・・・・

症状が落ち着き次第、内視鏡検査をする考えでいます。」


「もし難病だとしても死なないんですね?」


「この病気で亡くなる人は滅多にいませんよ。

ただ・・・・。」


「ただ?」


「一生薬を服用しなければなりません。そして食事制限。

食事制限と簡単に言っても・・・糖尿病患者よりももっと厳しいものです。」


「手術をするわけじゃないんですね?」


「症状が悪化すれば手術もあります。大腸を全摘する方もいます。

そうなると人口肛門になりますね。」


「でも・・・・今すぐ死んじゃうわけじゃないんだ・・・・・。」





良かった。生きていられるんだ。

一生薬を飲もうが、食事制限があろうが生きていられるんだ。

私はほっとし、笑顔すら浮かべていた。



「先生。もしその難病だとしたら原因は何なんですか?

治ることは無理なんですか?

他に何か問題はないのですか?」


「原因が分からないから「難病」なんですよ。

今の医学では残念ながら症状を抑えることは出来ても完治は難しいです。

後は・・・この病気を抱えている人は癌になる確率が通常の人より高いですね。」


「そうですか・・・・・。

検査、よろしくお願いします。」


「お願いします。」




私は今現在のことを、夫はこれから先のことを・・・考えていた。



2度の内視鏡検査を受けた私は、医師から特定疾患に関する書類を渡され

手続きをするように言われた。


そう、私は

難病患者になってしまったのだ。



つづいたよ(笑