すれ違う母娘 3 | 脱!マイナス思考。~私の母はパチンコ依存症~

すれ違う母娘 3

あの日、私は彼と知床へドライブに出ていた。

空は快晴。まさにドライブ日和。

途中、コンビニでお菓子を買い運転中の彼の口へそれを運ぶ。


「もうすぐ着くよ。」

「知床って行ったことないの。楽しみだよ。」


そんな時、私の携帯が鳴った。

「着信 自宅」

自宅?家に帰ってからではダメなのだろうか。
気づかないふりをしようと思ったが、しつこく鳴り続ける電話に胸騒ぎを覚えた。


「もしもし?」


相手は母ではなく妹。

妹は泣いていた。


「お姉ちゃん?お姉ちゃん?・・ヒック、ヒック・・・」

「もしもし?どうしたの!?泣いてるの?」


私の前では決して弱みを見せない妹が泣いている。
一体どうしたというのだろう。
運転中の彼も私のただならぬ様子に真顔になる。


「今日、お金を下ろそうと思って銀行へ行ったら・・そしたら・・
そしたら・・」


「・・えっ?何、聞こえない?」

「お金が無いの・・貯金してたお金が・・残高がいくらもないの・・。」

「え・・それって・・まさか。。」

「お母さんが、お母さんが全部使っていたの・・・」




やられた―

一瞬にして頭の中が真っ白になった。
母は私だけではなく妹のお金にまで手をつけたのだ。

妹の就職した会社の給料は手渡しだった。
必要な分だけ手元に置き、残りを銀行へ貯金していた妹。
私と違い、ローンも無ければ車も持っていない妹の日々必要な額は少なく
給料の大半を貯金へ。

ある日、妹が母にこう言っていた。

「ねぇお母さん、
私の会社付近に銀行ないから、代わりに貯金して来てくれない?」


それを聞き、不安になった私は母のいない所で妹に言ったことがある。

「お母さんに自分のお金を渡すなんてしちゃダメ!何かあったらどうするの!」

「はぁーい。。ちぇ、面倒だなー。」


どうしてこんなに怒るのか。
妹には分からなかったのかも知れない。
だか、母が新たに借金を増やしていることを知っている私からすれば
妹の行為はとても危険なものだった。

返事をしていたものの、妹は母にお金を渡していたのだろう。


「ねぇ、あんたお母さんにお金渡してたの?」

「うん。。でも!でも!まさか使うなんて思わないじゃない!」


ああ、私のせいだ。
あの時、母が借金を増やしていることを妹に言っていたら。。。


妹はまた母に裏切られてしまった。


「とりあえず・・すぐには帰れないから。。
帰ったらゆっくり話そう、ね?」


「・・・お母さんに代わる?」

「え?いるの?
・・・なんて言ってる?」


「・・ごめんねって言ってる。下向いたまま。。」

「いや、代わらなくていいわ。。じゃ。。」




同じだ、あの時と。

自分のしでかした事の重大さに、やっと気づいたのだろう。

そんな時の母は、子供のように下を向いたまま。

ほとぼりが冷めるのを、ただ、ひたすら待つのだ。





目に浮かぶその光景に、私は涙が止まらなかった。



知床の真っ青な空が、やけに眩しかった。。


つづく。。