被災地ガレキの広域処理や、相模原市で発生したゴミの焼却処理等
についての相模原市担当課と市民の話し合い第3回目を3月21日
午前10時から12時まで行いました。以下簡単な報告です。
参加者
相模原市
相模原市環境経済局資源循環部 廃棄物政策課 主幹、課員
相模原市環境経済局資源循環部 清掃施設課 担当課長、課員
市民側
Hさん、Kさん親子、氏家
-----------------------
1点目として、前回に引き続き
相模原市のゴミ焼却施設における排ガスの精密な測定を要望した。
質問1 「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」
に示される測定を行い、排ガス中に含まれる放射能の正確な測定を行い、
結果を明らかにしてください。
市民側
現在の測定法はJIS-Z8088による、4時間3立米の排ガスをろ過して測定。
しかし、放射能を適切に測定するための、
「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」では、
50ℓ/minで1週間採取した後、Ge半導体スペクトロメータで
4000秒の測定が必要とされている。
JIS-Z8088 現在のごみ焼却施設での排ガスを吸引ろ過
4時間で、合計3立米=3000リットル吸引
「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」による測定
50リットル/分で7日間排ガスを吸引ろ過
50リットル/分 × 60分 × 24時間 × 7日間 =504000リットル
=504立米
504立米 ÷ 3立米 = 168
現在のごみ焼却施設での排ガス測定は、
原子力施設における測定の168分の1しか排ガスをサンプリングしていません。
精密測定によっても、排ガスから検出限界以下であれば、
市民として、一定の安心が得られる。
実験的にでも良いので、指針通りの精密な測定を要望した。
相模原市の説明
現在のJISの方法は、環境省のガイドラインにそってやっている。
バグフィルターに異常が無いかについては、差圧や煤塵濃度でモニターしている。
環境省や他の自治体との関係がある中で、相模原市だけが突出して、
精密測定を行うのはどうか。意見として承る。
市民側
現在焼却しているのは、相模原市内で発生したゴミで、飛灰には700Bq/kgの
セシウムが検出されている。
ガレキ処理ではないので、ゴミの焼却における放射能の挙動を把握するため
であれば、環境省や他の自治体とは関係ない。
後ろ向きの返答だが、どうすれば精密な測定を行う条件となるのか。
(放射能の危険性など、長い議論あり。あきらめずに説得を続けた。)
その結果、指針における具体的な測定器具や方法などを、
相模原市が調べることになった。
この議論は次回引き続き行う。
-----------------------
2点目
徳島市のHPに掲載された、
「8000Bq/kgの埋め立てなどは、クリアランスレベル100Bq/kgの基準と比べ、
徳島県として安全が確認できないので、十分な検討もな く被災地ガレキを
受け入れることは難しい」
という回答を示しながら、8000Bq/kg、十万Bq/kgを相模原市や他の自治体で
埋め立て処分することについての疑問を質問した。
質問2 相模原市として、原子力規正法の100Bq/kgを越える灰の埋め立ては
安全であると判断できますか。根拠を含めてお知らせください。
質問3 徳島県における対応が、市民の安全を守る上で重要と思いますが、
相模原市はどうお考えになりますか。
徳島県と同じ、慎重な対応を続けることはでき ませんか。
相模原市側は、環境省において専門家が被爆量と健康への影響を考えて
出した基準であり、問題があるとは考えていない、という反応だった。
市民側から、以下のような意見を伝えた。
原子力発電が「原発神話」を作り上げてきた専門家のお墨付きで進められ、
福島原発事故が起きてしまった。8000Bq/kgの基準にしても、
福島における20ミリシーベルト/hの基準にしても、従来と変わらない原子力
のお金をもらっている専門家が決めており、納得できない。
徳島県と同じように、8000Bq/kgの基準に対して慎重に考え、
低レベル放射性廃棄物はそれなりの施設で処理するという原発事故以前の
原則に 立ち返ってもらいたい。
質問2、3についても、次回回答をもらうことになった。
-----------------------
3点目
被災地ガレキに含まれる、放射能以外の物質について以下の質問を行った。
質問4 産業廃棄物、化学物質、重金属が含まれている瓦礫は、相模原市の
焼却炉で、安全に焼却できますか。
質問5 CCA処理木材の分別・処理の扱いについて、安全に行うことができますか。
相模原市側は、被災地にガレキ分別の視察に行っており、
かなり手間をかけた分別が行われていることを説明した。
しかし、CCA処理木材は分別でき ないことを認め、
神奈川県建設リサイクル法実施指針と矛盾していることを指摘すると、
返答に困り、相模原市側は沈黙した。
本件についても次回回答を受ける
-----------------------
4点目
3月6日に神奈川県と3政令市が、野田首相および民主党に出した
「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に関する要望について」
に対しての国の回答状況を聞いた。
いまだ正式な回答は来ていないが、非公式な回答案が神奈川県に示され、
相模原市は神奈川県からその内容を非公式に聞いている。
非公式なものなので、公開はできない。
どのような感じの回答案か聞いたところ、要望点については今後環境省が
公示などで示してゆくことになるという、先送りの回答のようだ。
-----------------------
5点目
相模原市における被災地ガレキ受け入れの今後について
相模原市としては、
要望に対する回答が国から来たとしても、依然として焼却灰の処分地が
決まっていない(横須賀市芦名の処分場は見通しが立たないので、
すぐに進むかどうかは疑問)。
しかし、芦名ではなくても、たとえば相模原市の処分場の今後の拡張に
何らかの手立てが国から示されるなど、焼却灰の処分問題がクリアされれば
動き 出す可能性があるとのことだった。
-----------------------
感想
相模原市は自治体として自立的に判断しておらず、
他の自治体と横並びの無難な方向で考えており、
相模原市民の健康をどこまで真剣に考えているのか 疑問を感じた。
現地視察をした職員は、何とか復興を手助けするため、ガレキ処理を
進める必要があると言う。
そこで、
ガレキ処理が6%しか進んでいないというマスコミのキャンペーンはおかしい。
広域処理は20%に過ぎず、それ以外の80%が進んでいないことのほうが
6%しか進まない事への寄与率は大きいだろう、と反論すると、沈黙しました。
いずれにしても、相模原市側は、条件がそろえば進めるつもりで、
市民が指摘するガレキの広域処理の問題点を真剣に議論する気があるのか、
相模原市と市民の話し合いが実りある結果を生み出せるかどうか、心もとない。
相模原市は、ガレキ受け入れ方針を決定した場合、
市民への説明会を開催すると予想されるが、
方針が出た後での説明会では市民意見は反映されないだろう。
そういった意味でも、チャンネルとしてこの話し合いを維持し、
瓦礫受け入れの方針が決まる前に、
継続して市民側の意見や情報を相模原市に伝え続け なけて行く必要がある。
ガレキ処理という、新しい利権、公共事業についての問題点は議論しなかったが、
これほどさまざまな問題点を抱えている広域処理を、
議論を抜きに政府・マスコミを上げてのキャンペーンで進めていることに
恐ろしさを感じる。
-----------------------
以上です。
_______________________________________
相模原市環境経済局資源循環部 廃棄物政策課
相模原市環境経済局資源循環部 清掃施設課
相模原市保健所衛生試験所
2012年3月21日
氏家雅仁
放射能を含むゴミの焼却処理(相模原市内発生ゴミおよび被災地ガレキ)に関する質問・要望
東京電力福島第一原発事故後の相模原市におけるゴミ焼却について、市民対応を続けていただきありがとうございます。相模原市におけるゴミ焼却が安全・安心に進められることを願い、以下質問いたしますので、ご回答、よろしくお願いいたします。
1. 発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針について
現在の測定法はJIS-Z8088による方法と説明を受けています。
しかし、放射能を適切に測定するための、「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」では、50_/minで1週間採取した後、Ge半導体スペクトロメータで4000秒の測定が必要とされています。
相模原市のごみ焼却施設の排ガス中に含まれるセシウム等の放射能の測定は、JIS-Z8088では不十分と考えます。
質問1 「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」に示される測定を行い、排ガス中に含まれる放射能の正確な測定を行い、結果を明らかにしてください。
※ 添付資料 発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針
バグフィルターで排ガスのセシウムはほぼ100%除去できるのか?
2.ごみ焼却灰・飛灰の放射能汚染とその扱いについて
原子力規制法では、原子力施設内における放射性廃棄物の処置として、放射性セシウムでは100ベクレル/Kgをクリアランスレベルと定めています。そして、それ以上の汚染物を放射性廃棄物と規定、資格を持つ取扱管理者以外がこれを移動することも、放射性廃棄物最終処分場以外に廃棄することも固く禁止しています。この基準は安全の観点から定められています。
一方、瓦礫の広域処理について、環境省は福島原発事故後、焼却灰などを一般廃棄物として自治体が処分場に埋め立てる基準を、放射性セシウム8000ベクレル/Kg以下とし、さらに11年8月27日には、10万ベクレル以下の場合も一般の最終処分場で埋め立てを容認する方針を決めました。これは原子力規制法と矛盾しますし、一般的には、原子力施設内の基準より、外の一般地の基準はより厳しくするべきであると考えられます。
石川県の谷本正憲知事は、「ダブルスタンダードではないか。これでは住民は納得しない」と語り、不信感をあらわにしています。また、徳島県においても、慎重な対応を行っています。
※ 添付資料 徳島県の見解
質問2 相模原市として、原子力規正法の100Bq/kgを越える灰の埋め立ては安全であると判断できますか。根拠を含めてお知らせください。
質問3 徳島県における対応が、市民の安全を守る上で重要と思いますが、相模原市は同お考えになりますか。同じ、慎重な対応を続けることはできませんか。
3.産業廃棄物、化学物質、重金属が含まれている瓦礫の扱いについて
震災によって生じた瓦礫には、アスベスト、ヒ素、六価クロム、PCBなどの、特別管理産業廃棄物、化学物質、重金属が含まれており、これらを完全に測定、分別することはできません。一般の焼却炉は、産業廃棄物の処理に対応していません。
一般ゴミに含まれるレベルの化学物質、重金属は、薬剤処理などで処理できる可能性がありますが、震災によって生じた瓦礫に含まれる、それら有害物質の総量は、未知数です。したがって、そのような瓦礫の焼却は、有害物質の拡散、汚染を広範囲にわたって引き起こすリスクを伴います。
また、CCA処理木材(CCA=クロム、銅、ヒ素の英語頭文字)の混入も考えられます。
質問4 産業廃棄物、化学物質、重金属が含まれている瓦礫は、相模原市の焼却炉で、安全に焼却できますか。
質問5 CCA処理木材の分別・処理の扱いについて、安全に行うことができますか。
※ 添付資料 CCA処理木材の分別・処理の扱いについて
以 上
______________________________________________
バグフィルターで排ガスのセシウムはほぼ100%除去できるのか? 氏家雅仁
環境省は、ごみ焼却の排ガス中の放射性セシウムは、バグフィルターによりほぼ100%除去できると説明しています。しかし、この説明を鵜呑みにして良いのか疑問があります。
環境ジャーナリストの青木泰さんは、バグフィルターでは除去できないと主張されています。
一方で、東京都や相模原市などで発表されている、ごみ焼却場の排ガス測定データを見ると、どこも不検出とされています。いったいどちらが正しいのか、現段階では判断できません。
環境省の指導では、排ガス中の放射性セシウムの測定は、JIS-Z8088に規定されている煤塵などの測定方法を放射性セシウムの測定にも適用するとなっています。この方法では、排ガスを円筒型のろ紙に4時間(3立米)吸引して、そのろ紙などを分析することになっています。
一方で、京都大学の小出裕章助教によれば、この方法は排ガス吸引のサンプリング量・時間が少なすぎると指摘されています。
小出助教を取材したネット上のECO JAPANという記事を引用します。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110729/107086/?P=3
*********************以下転載***********************
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏も同意見だった。
「私たちは3月15日に東京都の空気を測定しました。その時どうやってやったかと言いますと、1分間に500Lくらい、ハイボリューム エアサンプラー (という機械)で1時間吸引しました。『500L』かける『60分』ですから、3万Lの空気を吸引してその中に含まれている放射性物質の 量を調べました。 そのときはちょうど(風向きが福島から東京に向いていて放射性物質が)飛んできていた時なので、ヨウ素やセシウムがびっくりするほど含ま れていました」
「私たちが使っているのと比べると(吸引量が)20分の1くらいのもので、約3時間くらいしか(空気を)採ってない。本当ならもっと もっと採るべきだと 思うし、1000秒の測定というのは……。私なんかは環境の放射能の測定をずっとしてきた人間ですけど、原子力発電所の汚染を見つけよう と思うと、1つの 試料をゲルマニウム半導体検出器で1週間かけて測定する。1日が8万6400秒で、その7倍ですから60万秒くらい。(都の測定時間は) もう圧倒的に少な すぎる。もっとちゃんとした測定をすべきです」
-----------------------
中略
-----------------------
原子力安全委員会が1977年に決定し、2001年に改訂した「発電用軽水型原子炉施設におけ る放出放射性物質の測定に関する指針」が標準的な測定 方法を示している。そこには「測定下限濃度を満たすための代表的な測定条件」が掲げられており、ヨウ素131やセシウム134、同137については、 「50L/分で1週間採取」とされ、ゲルマニウム半導体検出器の計測時間は「4000秒」とされる。
東京都の測定法と比較すると、都の2倍以上の吸引量で、46倍となる丸1週間の採取をして、ようやく4倍の測定時間が許されることにな る。ちなみにこの 指針で求められる検出限界濃度は都の測定の100分の1近い。都はこの指針の存在についても知っていた。にもかかわらず、あえて指針より もはるかに短い時 間と少ない量のサンプリングとし、計測時間もずっと短くして測定した。これはもはや放射性物質が検出されないような測定方法を最初から選 択した“放射能隠し”ではないか。
*********************転載以上***********************
放射能を適正に測定する方法はすでに指針として定められているのもかかわらず、環境省の指導は根拠があいまいなまま、別の方法を指定していることになります。
測定自体は科学的な作業ですから、「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」に基づく測定を行い、ごみ焼却による排ガス中の放射性セシウムの挙動を測定し、明らかにすればよいだけのことと思います。
これまで、ゴミ処理を行っている行政や、環境省はこの測定を行っているでしょうか。なぜ放射能を適正な形で扱わないのか疑問です。バグフィルターにより排ガスのセシウムはほぼ100%除去できるかどうかは、試験測定により精度の高い測定の余地がありますので、現在のところ疑問をつけざるを得ません。
・・・・・・・・・
相模原市在住の氏家(水源連・eシフト所属)さんより