崩壊熱について 小出裕章さんメッセージ | 脱原発の日のブログ

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12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

 「崩壊熱」について、下記のような質問が届きました。

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今晩は.webを拝見しました.
「原発停止後の崩壊熱とは何か」という疑問を持っています.

崩壊熱
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kid/safety/decayhea.htm

原子炉内の核分裂反応を停止させることができ、
核分裂による発熱をゼロにすることができたとしても、
すでに炉心に蓄積して発熱を続けるこの崩壊熱は決して
人為的に止めることができないからである。

ここでは,終了した核反応の熱が保たれているもの,と読めるのですが.
臨界が終了した後にも,ぽつりぽつりとウランが分裂するのが止まらずにいるのが
「崩壊」であり,そこから発生するのが「崩壊熱」なのかな,と
なんとなく考えています.

実際のところをご説明いただけないでしょうか.
なお,私個人に対するコメントというより,一般的な広報としてどこかに
掲載していただく事を願います.
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 なるほど・・・、と思いました。
 こうした誤解はやはり広く存在しているのでしょう。
 今、私自身は大変慌しく過ごしていて、申し訳ありませんが、
基礎的な事項について十分な解説を書く余裕がありません。

 以下に少しだけ、書きます。

 「放射能」とは本来は「放射線」を出す能力を意味します。
 「放射線」にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線など
いろいろなものがありますが、いずれにしてもエネルギーの塊です。

 エネルギーは最終的に熱になります。
 そして、日本では「放射能」という言葉を、「放射能」を持った物質、
つまり「放射性物質」を示す場合にも使われます。
 ウランが核分裂するっと核分裂生成物と呼ばれる多種類の放射性物質が海脱されます。
 ヨウ素131やセシウム137などと呼ばれていっるものも核分裂生成物の1種です。

 それらは「放射性物質」であり、「放射線」を放出します。
 つまり、発熱体だということです。
 セシウム137の場合には「ベータ崩壊」とよばれる「崩壊」の仕方で
バリウム137に変わるのですが、その時にベータ線とガンマ線を放出します。
 つまり、発熱するのです。

 原子炉が動く、つまりウランが「核分裂反応」をすると核分裂生成物が生まれ、熱が出ます。
 原子炉を止める、つまりウランの「核分裂反応」を止めるとしても、原子炉の中にすでに
溜まってしまっている放射性物質自体が「崩壊」して発熱するのが『崩壊熱』です。
 ウランの核分裂反応とは関係ありませんし、「崩壊熱」は、放射性物質がそこにある限りとめることができません。

 この程度の解説でご理解いただけるでしょうか?

 すでに事故から11日経ちましたが、電気出力78万4000kWの福島第1-2,3号機の場合、未だに原子炉の中では6000kW程度の崩壊熱が存在しています。
 1kWの家庭用電熱器やホットプレートあるいは電気ストーブを考えれば、それが約6000個分、原子炉の中で発熱を続けていることになります。
 その熱をとにかく外部に取り出さない限り、原子炉は溶けてしまいます。
 東電福島の人たちの必死の努力が何とか最悪の事態を食い止めています。
 苦闘が実を結ぶことを願います。

2011/3/22  小
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