金融緩和は万能なのか? | 真の国益を実現するブログ

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あらゆる面から安倍内閣の政策を厳しく評価し、独自の見解を述べていきます。

1.以前の記事のおさらい

金融緩和の効果は、以下のとおりです。

①潤沢なマネーの提供による、設備投資の増加(投資需要の増加)
②株価や土地など、資産価格の上昇による消費需要の増加
③円安による純輸出の増加


以前、以下の記事にて、金融緩和の③の効果について批判を行いました。

輸出主導の成長に対する懐疑

簡単に以前のおさらいをすると、
・金融緩和で円安になる⇒輸出が増えるが、輸入も同じように増える⇒純輸出はさほど増えない

という話でした。また、小泉内閣の時に輸出が増えても、民間企業サラリーマンの賃金は増えませんでした。

今回は、金融緩和の①と②の効果について否定的な主張をしたいと思います。

2.設備投資は増えるのか?

そもそも、金融緩和でどうして、設備投資は増えると考えられるのでしょうか?日銀がお金を大量に発行してマネタリ―ベースを増やせば、金利は低下します。すると、「金利が高すぎて借りられない」と考えていた企業が、お金を借りられるようになります。設備投資をするにはお金が必要なので、借入が容易になれば、設備投資を後押しすることになるというわけです。

これだと、金利がゼロパーセント近い「流動性の罠」といわれる状態であれば、名目金利を下げる余地がほとんど無いため、効果としては少ないように思えます。しかし、日銀が大量に市中銀行の国債や、一部ETFや社債などの金融商品を買い取ることによって、市中銀行には「余剰資金」が生まれることになります。たとえ金利が低かろうが、そのお金を何かで運用しないと、銀行としては「もったいない」ことになります。つまり、企業の借入という需要サイドが駄目であっても、銀行という資金の供給サイドを刺激することで、貸出などを増やすことができる・・・と理論上はそうなります。

では、実際のところ、企業の設備投資は増えるのでしょうか?

小泉内閣の2001~2006年において、福井日銀総裁のもと、量的緩和が実施されました。この時の設備投資はどうだったのでしょうか?三橋貴明氏のwebサイトからグラフを拝借し、小泉以前の設備投資と比較してみましょう。

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いかがでしょうか?確かに、2002年以降、緩やかに設備投資は増えているようです。ただ、それでも90年代の設備投資には及ばないようですが。。。

では、これは、銀行の貸出増加によって、企業の資金調達が容易になり、設備投資が増えたといえるのでしょうか?やはり、三橋貴明氏のwebサイトから拝借したグラフで確認しましょう。

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あれれ、、、銀行の貸出は増えるどころか、減っていますよね???日銀が大量にお金を供給すれば、それが貸出へまわるのではないのでしょうか。。。企業は確かに設備投資を増やしましたが、それは銀行が資金供給を増やす(貸出態度が改善する)ことによって資金調達しやすくなった・・・からではないようです。

ただ単純に、輸出(外需)が伸びていたから、輸出用の生産増に向けて「企業の余剰資金で」設備投資を増やしただけ、というのが実情ではないでしょうか?もちろん、円安になったのは金融緩和のおかげでもあるので、「金融緩和⇒円安⇒輸出増⇒設備投資増」というルートでの設備投資増加はそれなりにあったのでしょう(注:小泉内閣は円安誘導の為替介入も実施したので、純粋に金融緩和だけで円安になったのではありません)。

ただし、、、輸出というのは海外動向に影響されるわけですから、コントロールしづらい問題があります。シャープが堺や亀山に巨大工場をつくりましたが、輸出の急減小で大幅な赤字になって、莫大な借金が残されたのは記憶に新しいです。

設備投資というのは、固定資本(生産設備など)を増やすことを言います。なぜ固定資本を増やすかというと、「消費が増える見込みがあるから」か「輸出が増える見込みがあるから」です。この2つの見込みが無い場合は、固定資本が無用の長物となり、借金だけが残されることになります。日本にとっての巨大市場である、アメリカ・中国・ヨーロッパの三大市場がどれも停滞している現状では、「輸出増⇒設備投資増」は、これ以上は望むことが難しいと考えられます。
※あくまで「これ以上は」です。衆院解散から現在までは、輸出増は一定程度成功したと考えられます

為替についても、2013年6月ごろからは円安一直線ではなく、これ以上の円安による輸出増は難しそうです。

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もう一方の「消費増⇒設備投資増」については、いくら日銀がお金を発行しても消費者(家計)には直接は届きませんから、これも期待できません。

よって、これ以上大胆な金融緩和を続けたとしても、設備投資の増加は望めない可能性が高いと筆者は考えます。

2.資産効果は期待できるのか?

金融緩和による資産効果とは、いったい何でしょうか?前節で述べましたが、銀行が大量にお金を持てば、それを何かで運用しないといけません。つまり、マネタリ―ベースが急激に増加すると、「たぶん、一部のお金は株式市場へ流れるだろう」という見込み(シグナル)がたつので、株価が上がります。たとえファンダメンタルが改善されていなくても、見込み(シグナル)だけで株価は上がります。

しかも、財政出動と違って予算の国会通過や特例公債法案などの問題もないため、非常にスピーディーに株価を上げることが可能です。これは、金融緩和の非常に強力な効果です。

ところが、あまりにファンダメンタルとかけ離れた株価は、投資家が警戒するようになります。「バブルではないか?」ということなのです。よって、金融緩和「だけで」永遠に株価を上昇させることはできません。
※もしバブルが継続したら、いつか崩壊するので、それはそれで問題でしょう

最初のスタートダッシュとしては非常に強力ですが、長期戦略としてはあまり期待できないと考えほうが良いでしょう。

実際、2013年の5~6月ごろから、日経平均株価は上がったり下がったりで伸び悩んでいます。

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ただし、重ねて言いますが、最初のスタートダッシュとしては非常に強力です。株価が上がれば、気持ちが大きくなった消費者が消費を増やし、短期的には消費増による好景気が期待できるでしょう。しかし、今後はもはや「資産効果一本」による株高は期待できないので、ファンダメンタルを改善する施策が必要になってきます。

3.消費者物価は上がるのか?

今の日本はデフレです。上念司氏などは「金融緩和でデフレ脱却だ!」などと言っていますが、本当に金融緩和で消費者物価は上がるのでしょうか?

「本当の日本経済ニュース」から拝借したグラフをみてみましょう。

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マネタリ―ベースと消費者物価には、ほとんど相関関係がみられないようです。上念さん、残念でしたねw

そもそも、「お金」の量というのは、大きくわけて2種類あります。

・マネタリ―ベース:日銀が発行したお金の総量
・マネーストック:日銀だけでなく、民間銀行が貸出増によって増やしたお金も含む総量

いくら、日銀がお金を増やしても、民間銀行が貸出を増やさなければ、マネーストックは増えません。

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ご覧のとおり、マネーストックは増えていませんね。財政出動によって消費と投資を増やせば、資金需要が増えるので、それで「もっとお金を借りたい!」と企業が思えば、貸出が増えてマネーストックは増えるでしょう。

つまり、マネタリ―ベースを増やすよりも、財政出動を増やしたほうが消費者物価は上がるのではないでしょうか?
※マネーストック=消費者物価・・・ではありません。たとえマネーストックが増えても、それが「不動産投資」など資産投資のための貸出増であれば、消費者物価は上がりません。
※物価とは、財需要と財供給の関係で決まるため、財需要が財政出動で増えれば、物価は上がるはずです。

4.金融緩和の弊害

金融緩和には弊害も多いです。一番の弊害は、各国がお金を増やし過ぎることによってファンダメンタルを超えて資産価格が上昇し、「バブル」になることです。今は資本移動が自由化されていますから、たとえ日本国内でバブルにならなくても、海外でバブルになるかもしれません。

日本やアメリカのジャブジャブになったお金が、海外のどこかへ流れてバブルを生むわけです。2008年のアメリカ発金融危機も、世界中のジャブジャブになったお金がアメリカへ集まることで生まれました。

金融緩和は、真っ当なビジネスの需要が少ない時には、投機筋へお金を提供するだけ・・・となりかねない危険性を孕んでいます。

「どうせバブル崩壊しても、また金融緩和すればいいじゃないか!」と思うかもしれません。しかし、無闇にバブルによって景気変動を大きくすれば、庶民の生活は悪化していきます。庶民は富裕層と異なり、株などの資産をあまり持たないからです。

一方で、資産家は株式市場の変動によって大きな利潤を得ることが可能です。日本でも、リーマンショック後、株価が20分の1になった銘柄があります。それならば、最高値で空売りしまくって、底値で買えばボロ儲けです。しかし、庶民には空売りのテクニックなんてできません。株式市場の変動を大きくすることは、「格差を無闇に大きくする」結果につながるのです。株価暴落時は失業率も上がるため、なおさらでしょう。

5.まとめ

以上、みてきたことから、以下のように結論づけます。

・金融緩和にはそれなりに効果がある
・しかし、異常な円高が解消されて、株価上昇も停滞している現在は、効果が薄れてきている
・金融緩和には弊害も大きい
・よって、総合的に考えると、金融緩和一本でのデフレ脱却は難しい
・名目金利がゼロパーセント近い現在は、財政出動のほうが効果が大きいと考えられる
・今後は、金融緩和よりも財政出動を重視するべきである


結局、金融緩和は「ただマネタリ―ベースを増やすだけ」であり、増えたマネタリ―ベースが「その後、どう使われるのか?」まではコントロールできない欠点があります。

だからこそ、「真っ当なビジネス」ではなく、投機へお金が流れて、迷惑なバブルを生むのです。

財政出動ならば、政府がある程度「お金が何に使われるか?」コントロールできます。このメリットはやはり大きいといえるでしょう。


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