よく、「和」とは「仲良くすること」と安易に言われますが、「和」ってそんな簡単な概念なんでしょうか。

「和」とは「輪」に通じ、円相を意味する言葉でもあり、茶道における第一義とされます。また、日本の古名である「やまと」の表記が「大和」であることから「日本」そのものを意味する言葉として「和服」などのように用いられる言葉です。

 和には「互いに相手を大切にし、協力し合う関係にあること」という意味もあり、茶道において「和」といえば、私はこちらの意味になると思っています。

 これは主客の関係性を表した言葉であり、一座建立するためには主=亭主の努力だけでも、客=正客および連客(相伴客)の努力だけでもだめで、互いに大切に思い合い、協力し合う関係にあなければ成り立たないことを言い表していると言えます。

 つまり、「仲良くする」のではなく「一座建立のために協力し合う」という意味になります。そのために仲良くすることが必要ならば、当然仲良くする訳で、必ずしも「仲良くする」ことが必要ではないと言えます。

 逆に、切磋琢磨するライバル関係であっても、一座建立のためにならば協力し合うということであれば、それはとても素晴らしい「和」ではないでしょうか。

 普段は口も利かないほど毛嫌いしていたとしても、その場に入れば、一座建立のために互いに尽力する。それこそが、本当の「和」であると、私は考えます。

 故に私は「和」は「以和為貴(和を以て貴しと為す)」という聖徳太子の十七条の憲法の第一条が相応しいと考えるのです。