■定小紋
 定小紋は各藩によって大きくことなり、鮫小紋でもさまざまなものがあったりします。これらは「御留柄」といわれ、その藩の者以外身に着けることを許されず、また、町人は身に着けることができませんでした。このため無紋でも色無地一つ紋より格が上とされます。
 一般的には柄が細かいほど格が上となりますが、有名どころでは以下のようなものがあります。

・徳川将軍家 御召十
・五代将軍綱吉 松葉
・紀州大納言家 極鮫
・肥後細川家 梅鉢
・加賀前田家 菊菱
・肥前鍋島家 胡麻(鍋島小紋)
・土佐山内家 青海波(鮫)
・薩摩島津家 にたり大小島津(鮫)
・信濃戸田家 通し
・備後浅野家 霰小紋
・甲斐武田家 武田菱
・出雲佐々木家 宇田川小紋

■三役・五役
 これに対し、三役とは、定め小紋から生まれた「定形のもの」を意味します。同じ鮫でも、基本的に大きさがすべて統一されていたり(手書きのために多少の誤差はあるものの)と定小紋とは少し異なります。このため、一つ紋を入れることで礼装扱いになります。

・鮫
・行儀
・角通し

 この三役に

・万筋
・大小霰(あられ)

 を加えたものが五役です。万筋ではなく「縞」という方もいます。ただし横縞は武家では腹切りを連想させることから、嫌ったという話もありますので、ここは万筋としておきます。
 ちなみに紋を入れることができるのはこの五役までで、他のものは紋を入れることはありません。
 つまり、五役以外の江戸小紋は小紋と同じ格として扱われるということです。

 また、五役は「縫い紋」、三役は「染抜紋」または「縫い紋」、定小紋は「染抜紋」とされます。ただし、染抜紋を入れる場合、反物から染めてもらう必要がでてきますので(石持ちといって、丸く紋の場所を開けて染めてもらう必要があるためです)、男性でも絵羽のようにして紋の位置を決めて染めるそうです(私は一つ紋ですが、小紋の染抜紋をしていただいたものを持っています)。


■格
 以上のことから着物の格としては

略礼装
 訪問着(紋無し)<色無地(一つ紋)<定小紋(無紋)<五役(一つ紋)<三役(一つ紋)

准礼装
 訪問着(紋付)=色留袖(一つ紋)色無地(三つ紋)<三役(三つ紋)<定小紋(三つ紋)<色留袖(三つ紋)

礼装
 色無地(五つ紋)<定小紋(五つ紋)<色留袖(五つ紋)<黒留袖(五つ紋)

 となります。男性は基本的に多くが色無地であり、紬でも紋を入れますが(紬は縫い紋)、紬の上が定小紋(無紋)と覚えておけばよいかと思います。とはいっても、今どきは定小紋をみて解る人も少ないですから、紋を入れておくにこしたことはないですね^^

 ※江戸時代の風習では町人は三つ紋までで正装となります。武家の略礼装が三つ紋でした。武家の正装は裃ですので、紋付袴自体が准礼装であったということになります。