誕生日がきて49歳なんてものになってしまい
ツイキャスをやり
49歳、来年は50歳・・半世紀
といっていると、
別にもはや
49も50も
大して変わらないのだし、
50歳にしておこうと思いました。
50歳の人に対して、
なかなかお説教なぞ出来やしません。
仮令、文句があろうと、
それだけ生きた人に文句はいいにくく
間違っているなぁと思っても、
それで50年も通してこられたのなら、
仕方がないかと
諦めてもらえます。
今年も沢山、お誕生日プレゼントやら
メッセージやらお手紙やらを頂きました。
野ばらさんはずっと変わらないのです
野ばらさんの嘘のない言葉に救われます
書いてくれますが、
いや、驚くほどに変化してるし、
嘘ばかりの文章だぞと、苦笑します。
でもまぁ、野ばらさんとして
未だ生きておるし、
野ばらさんとして
文章を紡いでいるので
そういう意味では、変わらず
野ばらさんは野ばらさんであるのを
誤魔化すことなく
正直に、野ばらさんをやり
野ばらさんとして
執筆を続けてるのでしょう。
子供の頃、自分が不完全であることが
とても悔しかった。
こうありたい、ある筈だと思う自分に
物理的な理由で、まるで遠く、
——自分は超能力を
使える者である筈なのに
スプーン曲げすら出来ない。
自分はケーキしか食べず
暮らす人の筈なのに
お米を食べるのを
強要され、拒否出来ぬ。
自分は2メートルの筈なのに、
測ってみると、1メートルにも満たない——
苛つき、途方に暮れていました。
だから少しずつ、
それらが改善されるよう
世界を捻じ曲げることに
心を砕いてきました。
(自分を変えようとはしないのです。
自分は本来、考えている
自分であって然るべきなので、
おかしいのは
それを認めぬ世界のほうなので
世界がこっちに合わせて、変わるべきだ)
そして、完璧ではないものの
随分と、世界は
僕が好む有様へ
カスタマイズされました。
全然、思ったようにはなってないけれども
それでも、ある程度、
マシになりました。
実際の超能力は使えやしませんが、
たった一言で人を
呪い殺せるような言葉、
或いは多少、肩の荷物を
おろせた気分にさせるのが
可能な文章を書いて、
ケーキばかし食べてはいませんが、
私は妖精なので
草花の露のみで生きていますと
嘘吐いても、
それなりに納得してもらえ、
身長は160と少ししかないですが
ロッキンホースを履けば、
背を高くすることが可能です。
これ以上、
世界は捻じ曲がらないだろう。
これくらいが、
カスタムの限界なのだと思う。
もはや50歳であるから、
可能だとしても
体力とか気力とか
衰えていくばかしなので
掘り進めても、
どっこらしょうと、休んでいる間に
波が来て、
せっかくこしらえた穴は
潮が引くと同時に埋め戻される。
新しい高性能の掘削機が
発売されたようであるが、
老人なので
扱い方が解らず
買えません。
貴方が僕を愛してくれるのは、
貴方がなろうとして、
なかなかなれないものに
僕が最も
近い形態として
存在したからでしょう。
でも、
貴方の為に
こうなったのではないけれども
私はまだなれないので、
なれるまで代わりに
なったままでいて下さいと
いうのなら、
よし、
先輩として
引き受けた。
貴方が、
貴方が思った貴方になれるまで
暫くまだ、いてあげよう。
しかし、繰り返すが、
僕はもう半世紀を生きたので
ここからの作業が余り捗らない。
早く、
貴方は僕と
この役目を交代して下さい。
年寄りを酷使してはなりません。
やがて僕は、
僕の代わりに
世界を大きく捻じ曲げる
貴方に養われ、
物分かりのいいご隠居さんとして
貴方の帰りを
待つ人になる。
貴方の友人達に招待状を送り
貴方が誕生日を
盛大に迎える用意をせっせと整える。
沢山、駆け付けてくれた人達に
自分のことのように
貴方の業績、
貴方という人を自慢する。
さんざんと褒めそやし、
そうして最後に
「私の跡を引き継いどるだけに過ぎん・・
全部が私の物真似じゃぁ・・」
と、批判することも忘れない。
しかし貴方は逆らえないのだ。
半世紀以上を生きた老人に、
何を、説教出来ようか?
仮令、文句があろうと、そのうち
くたばるんだからと我慢しろ。
間違っているなぁと思っても、
ジジイだから仕方ないと、
黙って耐えるしかない。
へそを曲げられ、
遺言状に
遺産は全部、
福祉施設に寄付します
と書かれたら、嫌でしょう。
従順を装っておれば
そのうち全部が
貴方のものになる。
僕が捏造した
少しは愉しい世界、
貴方もいいなぁと
憧れた、向こうよりも割と
可愛いものが
評価される世界は
ごっそり、貴方のものとなる。
そうなったら、
僕の意図と無関係で
貴方のいいよう、
更に変更してしまえばよい。
でも何処か
貴方の庭の片隅に、
粗末な墓くらい建てろ。
前方後円墳がいい。
三体くらいは
ハニワも入れろ。
紙の粘土でこしらえて欲しい。
嶽本野ばら