渋谷の街では小雨からぱらつく雪へと変わり
今は大粒になり始めた。

ねぇ、君は雪の降るこの世界の景色をどう思うだろう。
きっと美しいと思うんじゃないだろうか。

たまにこうして世界はとても美しく愛おしいものへと変貌する。

君の不安や焦燥や悲しみも
この雪景色を観れば、少しはマシになるんじゃないだろうか。

世界は美しい。
残酷ではあるが、時に美しく、時に優しい。

だからね、君に不安や悲しみをもたらすのはこの世界ではないのだ。
君に苦痛を与えるのは世界ではなく、世間というヤツなのさ。

従って、君はこの世界と世間を混同してはならない。
君を孤独の淵に陥れるものは世界ではなく世間なのだから。

世界では生きとし生けるものは生まれ、やがて死にゆく。
それが摂理であるからだ。
世界はやがて君に死を与える。
生きたいと願えど死を与える。
僕らはそれに抗えない。それを受け入れるしかない。

が、世間というものは人が作りしものだ。
だから、君がそんな世間の為に死を選ぶことはないのだ。

おびただしい苦悩を世間という代物は君に押し付け
君を従わせようとするのだろう。
しかし、世間という俗悪なものの為には死ぬな。
そんなちっぽけで卑しいものの為に命を犠牲にするな。
否、君自身を犠牲にするな。
する必要なんて微塵もないのだ。

君だってこの世界と同じように時に美しく優しい存在だ。
残酷であろうが、たまには美しく優しく愛おしい者となれるのだ。

僕の住む街にこうして雪が降り、全ての厭らしさを覆い隠してくれるように
君の心の中にも雪が降る。
たまにかもしれないけれども、雪が降り、全ての孤独や焦燥を覆い隠してくれる。

世間なんてものからは離脱したって構わない。
只、世界からはドロップアウトするな。
君の意思に関らず、世界は時期がくれば君を適切な方法で殺してくれるのだから。

運命を受け入れよというつもりはない。
抗えばいい。
やがて君は自分自身が世界であることに気付くだろう。
その時まで君は生きなければならない。

この調子ならば、もしかすると今晩、雪は積もるかもしれない。
僕は何時か、君と、雪に就いて語り合いたい。