鼻のレディエッセ注入による失明のブログ記事を書いてから、
重篤な合併症に関する質問を受けるようになりました。
そこで、非常に深刻な重たいテーマとはなってしまいますが
ヒアルロン酸・レディエッセ注射による脳梗塞のリスク
に関して書いていきます。
医学論文を検索していったところ、
鼻のヒアルロン酸注射による脳梗塞をきたした症例報告が世界で２例ありました。
この２例の特徴としては
・必ず失明を伴っている。
・失明の症状は注射して直後（数分以内）に出ている。
という点です。
では、これらの症例の詳細を紹介していきます。
ケース１
25歳女性が鼻にヒアルロン酸注射をした後、直後に右眼が見えなくなり、失明した。
また９時間遅れて左手の力が弱くなるという脳梗塞症状が出現した。
（網膜中心動脈の閉塞と左中大脳動脈領域の脳梗塞がMRIで明らかとなった。）
ー参考文献１
（http://www.jfma-online.com/article/S0929-6646(15)00385-X/fulltext）
ケース２
23歳男性が鼻にヒアルロン酸注射をした後、右眼を失明し、右顔面神経麻痺、左手足の麻痺症状という脳梗塞症状が出現した。
（眼動脈の閉塞と右中大脳動脈領域の脳梗塞がCTで明らかとなった。）
治療・急性血栓溶解療法が行われたが症状は軽快しなかった。
ー参考文献２
以上が、症例の詳細となります。
つまり、
鼻根部・鼻背部へのヒアルロン酸注射
→ヒアルロ酸が鼻背動脈に入る
→逆行性に眼動脈まで入り、眼動脈閉塞
→眼動脈から逆行性に内頚動脈、中大脳動脈へとヒアルロン酸が入る
→中大脳動脈領域の脳梗塞
という機序で脳梗塞が起きたんだと思います。
そのため、かなりの量のヒアルロン酸を入れた可能性がありますね。
（またの機会に、どれくらいの量のヒアルロン酸が血管に入れば眼動脈が閉塞するのか、脳梗塞が起きるのかを計算したいと思います。）
また、失明だと症状は直後に起きるため
「私は昨日鼻にヒアルロン酸注射したけど大丈夫かな？」
などの心配をする必要はまったくありません。
世界で２例の症例報告ということで、確率的には非常に非常に稀ではありますが起きる可能性がゼロではないということは一つの事実ですね。
そのため、私は鼻にヒアルロン酸注射をする場合はそのような確率をほぼゼロにするために４つの工夫をしています。
１ 血管収縮剤入りの局所麻酔を事前に鼻に注入する。
血管が縮まり血管内にヒアルロン酸が入りません。
２ 骨に針が確実に当たっている状態で注入する。
骨膜上には血管はないので安全です。
３ 細かく注入し、大量には注入しない。
大量に入れるとリスクは上がります。
４ できるだけ正中に注射する。
少しでも正中から外れれば動脈に入ってしまうリスクが上がります。
これらの工夫をすれば鼻のヒアルロン酸注射は安全なため良い施術と言えます。
またインターネットの記事を読んでいると
「ヒアルロン酸の合併症は顔面の血管走行を知らない初心者がすることにより起きる。自分はエキスパートであり、解剖を熟知しているから大丈夫だ。」
と書いている先生もいるようです。
しかし、実際には心臓が左ではなく右にある人がいるように
血管の走行というのは、変則的なパターンの人もいます。
全ての人が解剖図譜通りに走行しているわけがありません。
そのため、解剖を熟知していることはもちろん大事だと思いますが、
血管収縮剤入りの局所麻酔を使用したり骨膜上に注入したりするなどのテクニック的な工夫をした方が安全のように考えます。
以上より、
ヒアルロン酸の鼻への注入をどこの美容外科・美容皮膚科でしようか考えている方は
「血管収縮剤入りの局所麻酔を事前に打ってくれるクリニック」かどうかを確認した方が良いと思います。
（品川スキンクリニック・品川美容外科ではしています。）
もしも打ってくれないクリニックだとしたらそこでの鼻の注射は仮にどんなに料金が安くてもやめておいた方が良いと言えるでしょう。
（また、鼻にレディエッセ注射はやめましょう。）
参考文献
１ Kun-Ta Li et al:Delayed-onset cerebral infarction after cosmetic facial injection using hyaluronic acid.
J Formos Med Assoc. 2016 Jul;115(7):587-8.
２ Kim EG et al:Severe visual loss and cerebral infarction after injection of hyaluronic acid gel.
J Craniofac Surg. 2014;25(2):684-6.
品川美容外科 千葉院主任 武内大
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重篤な合併症に関する質問を受けるようになりました。
そこで、非常に深刻な重たいテーマとはなってしまいますが
ヒアルロン酸・レディエッセ注射による脳梗塞のリスク
に関して書いていきます。
医学論文を検索していったところ、
鼻のヒアルロン酸注射による脳梗塞をきたした症例報告が世界で２例ありました。
この２例の特徴としては
・必ず失明を伴っている。
・失明の症状は注射して直後（数分以内）に出ている。
という点です。
では、これらの症例の詳細を紹介していきます。
ケース１
25歳女性が鼻にヒアルロン酸注射をした後、直後に右眼が見えなくなり、失明した。
また９時間遅れて左手の力が弱くなるという脳梗塞症状が出現した。
（網膜中心動脈の閉塞と左中大脳動脈領域の脳梗塞がMRIで明らかとなった。）
ー参考文献１
（http://www.jfma-online.com/article/S0929-6646(15)00385-X/fulltext）
ケース２
23歳男性が鼻にヒアルロン酸注射をした後、右眼を失明し、右顔面神経麻痺、左手足の麻痺症状という脳梗塞症状が出現した。
（眼動脈の閉塞と右中大脳動脈領域の脳梗塞がCTで明らかとなった。）
治療・急性血栓溶解療法が行われたが症状は軽快しなかった。
ー参考文献２
以上が、症例の詳細となります。
つまり、
鼻根部・鼻背部へのヒアルロン酸注射
→ヒアルロ酸が鼻背動脈に入る
→逆行性に眼動脈まで入り、眼動脈閉塞
→眼動脈から逆行性に内頚動脈、中大脳動脈へとヒアルロン酸が入る
→中大脳動脈領域の脳梗塞
という機序で脳梗塞が起きたんだと思います。
そのため、かなりの量のヒアルロン酸を入れた可能性がありますね。
（またの機会に、どれくらいの量のヒアルロン酸が血管に入れば眼動脈が閉塞するのか、脳梗塞が起きるのかを計算したいと思います。）
また、失明だと症状は直後に起きるため
「私は昨日鼻にヒアルロン酸注射したけど大丈夫かな？」
などの心配をする必要はまったくありません。
世界で２例の症例報告ということで、確率的には非常に非常に稀ではありますが起きる可能性がゼロではないということは一つの事実ですね。
そのため、私は鼻にヒアルロン酸注射をする場合はそのような確率をほぼゼロにするために４つの工夫をしています。
１ 血管収縮剤入りの局所麻酔を事前に鼻に注入する。
血管が縮まり血管内にヒアルロン酸が入りません。
２ 骨に針が確実に当たっている状態で注入する。
骨膜上には血管はないので安全です。
３ 細かく注入し、大量には注入しない。
大量に入れるとリスクは上がります。
４ できるだけ正中に注射する。
少しでも正中から外れれば動脈に入ってしまうリスクが上がります。
これらの工夫をすれば鼻のヒアルロン酸注射は安全なため良い施術と言えます。
またインターネットの記事を読んでいると
「ヒアルロン酸の合併症は顔面の血管走行を知らない初心者がすることにより起きる。自分はエキスパートであり、解剖を熟知しているから大丈夫だ。」
と書いている先生もいるようです。
しかし、実際には心臓が左ではなく右にある人がいるように
血管の走行というのは、変則的なパターンの人もいます。
全ての人が解剖図譜通りに走行しているわけがありません。
そのため、解剖を熟知していることはもちろん大事だと思いますが、
血管収縮剤入りの局所麻酔を使用したり骨膜上に注入したりするなどのテクニック的な工夫をした方が安全のように考えます。
以上より、
ヒアルロン酸の鼻への注入をどこの美容外科・美容皮膚科でしようか考えている方は
「血管収縮剤入りの局所麻酔を事前に打ってくれるクリニック」かどうかを確認した方が良いと思います。
（品川スキンクリニック・品川美容外科ではしています。）
もしも打ってくれないクリニックだとしたらそこでの鼻の注射は仮にどんなに料金が安くてもやめておいた方が良いと言えるでしょう。
（また、鼻にレディエッセ注射はやめましょう。）
参考文献
１ Kun-Ta Li et al:Delayed-onset cerebral infarction after cosmetic facial injection using hyaluronic acid.
J Formos Med Assoc. 2016 Jul;115(7):587-8.
２ Kim EG et al:Severe visual loss and cerebral infarction after injection of hyaluronic acid gel.
J Craniofac Surg. 2014;25(2):684-6.
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