裕太はあわてて、颯太の後をついて行く。
廊下を真っすぐ行き、右手にトイレ、真ん中に階段。
洗面所は確か、もう少し廊下の奥の方にあるので、
まずは、手を洗いに行くのかな、と思いきや、
キッチンのあるドアへと向かう・・・
ドアに近付くと、何やら楽しそうな声が聞こえてきた。
いきなり母さんに会うのか・・・
裕太は少し緊張した。
そんな友の変化にはおかまいなしに、颯太がスタスタと灯りの方へと、
近付いて行くと・・・
母さんたちが、珍しくはしゃぐようにして、笑いさざめいて
いるところだった。
颯太は少し、バツの悪い顔をしたが、それでも堂々と入って行く。
裕太はためらいつつも、颯太の後に続いた。
一歩足を踏み入れると・・・その部屋は、先ほどの裕太の家とは
一変して、まばゆい明るさに満ちていた。
美味しそうなニオイに混じって、楽しそうに笑う、母親たちの声が
響き・・・そこには、力強い明るさ、生命力のようなもので、
みなぎっていた。
そこにいるのは、まぎれもなく毎日慣れ親しんだ顔・・・
今朝見かけた自分の母親が、別人のように、楽しそうに
はしゃいでいた。
これが、あれほど憔悴しきっていた、自分の母親なのか?
裕太は、まるで珍しいものを見るような思いで、ボンヤリと
目の前に広がる光景を、見つめていた。
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