岸本先生は、思い出していた。
なんとか刑事さんと、中に入ったものの、
あまり話を男から、聞き出せなかったことを。…あきらかに、何かを隠しているようだったのに、
『はめられた』としか、言わなかった。

「でも、何か、引っ掛かるだよね~」
岸本先生は、頭をかしげつつ、言う。
「なんだろう?
何か、とても大事なことを、見落としている気がするんだ…」
吉川先生は、へーっという顔をして、岸本先生を見る。
「先生のそんな顔、初めて見たかもしれないな~」
と言う。
「あの男に会えばいいんだが、警察のガードが厳しくて、そこまでたどり着けるかどうかなんだ」と言い、
「警察の知りあいがいれば、一番なんだけどなぁ」と言った。
すると、吉川先生は、
「いるじゃないか!」と、笑いながら言う。
「えっ?いませんよ」と、切り返すと、
「ほう、そうか?」と、岸本先生を見た。
「例の、あの刑事がいるじゃないか!」
と言うと、
「あ~それは、ダメダメ!」
岸本先生も、引き下がらない。
「あの刑事さんに、もうこれ以上、関わらない、と釘を刺されたんだ!」と言う。
「なんだ、そんなこと?」
吉川先生は、不敵な笑みを浮かべる。
「それくらい、気にすること、ないって」
と言うと、
「さ、電話して!」と、電話を差し出した。




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