最終日にもうひとつ | 太亮の独言毒言

太亮の独言毒言

絵本作家、イラストレーター、デザイナー、アート・ワークショップなどで
活動している木村太亮の公式ブログ。
まあ、単なる戯言だとお聞き流し下さい。連絡先は、deeworks3623☆gmail.com

最終日、一般の方を対象にしたワークショップ終了後、
もう一つお約束が増えました。

一番最初に倉吉に伺った時に出会った一人の少年T君との再会です。

彼は、一般的には「ハンディキャップ」を持っていると
言われる少年でしたが、僕にはそんな風には映りませんでした。
単純に「絵を描く事が大好きな少年」それだけでした。

当時、彼は全ての授業中、絵を描いていればOKということになっており、
国語の時間はその物語の絵を、書道の時間はスミを使って、
とにかく絵を描く事だけに没頭していました。

彼の友達たちはその意味が分かっているものの
でも学年が上級生になってくると、
親や子どもの中にも反感を持つ人がいたりして・・・。

そこでタイミング良く僕のワークショップが行われたのでした。

当時、行っていたのは、金さんと一緒にやっていた
クレヨンゴシゴシアートワークショップです。
T君は、クレヨンを良しとせず、サインペンで参加しました。
(まあ、消せない画材だから別に良いのです)

彼は、とにかくモクモクと煙を出しながら、
何かを呟きながら絵を描く事に没頭しておりました。

んで、講評です。ホントは講評が一番大事なのです。
最近では作品を作って終わってしまいますが、
本当に大事なのは、この「講評」なのです。

講評では、人の作品の「良い所」を見つけて発表してもらいます。
「悪い事」は、なしです。「良い所」だけに注目するのです。
そこの小学校の生徒は非常に素直に育てられている感じがしました。
褒めるのが上手です。

んで、T君の作品も講評後、僕はこう付け加えました。
「T君は、ずっと呟きながら絵を描いている。これはとても素敵な事。
彼は物語を作りながら、絵の中に登場するイキモノたちに命を吹き込みながら
描いている。これはなかなか出来ない事なんだよ」

周りの子どもたちも彼の才能は認めていたので、
納得してくれた様でした.結果、彼が卒業するまで、
周りの人たちの暖かい見守りの中で
彼は彼のスタイルを貫く事が出来たのです。

その後、彼は街の名産品のパッケージを手がけたり、
お祭りのTシャツのデザインをしたり、
引き続き、暖かい街の人たちの見守りの中にいます。

で、数年前、高校生になった彼の絵を見せてもらいました。
相変わらず描き続けているようでしたが、まあ、ずっと見ていた訳ではないので
一時期のパワフルな自由な奔放さが欠けているようにも思えました。

ウ~~ン、何と言うのでしょう。たぶんテクニックを持ってしまった。
「上手」というモノサシを持ってしまった。
そういうことなのだと思います。
でも、正直言えば、ちょっとツマラナカった。
君はもっと破天荒でいいのに!そんなことを言ったように思います。

んで、今日彼から園長先生に連絡があり、
僕が倉吉に来る事をどこからか聞いて、「是非会いたい!」と
連絡して来てくれたそうです。まあ、なんて素敵な話。

そりゃ、会わずにいられないでしょう。でもスケジュールはパンパンだから
最終日、時間がどうなるかは別にして、
「僕も会いたいよ」と伝えてもらう事にしました。

出会った時にエネルギーが残っている事を祈ります。アハハハ