『夢工場』 | リュウグウノツカイ-岸大武郎のBlog

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日々の雑記を中心に、最近始めたKDP(Kindle Direct Publishing)やCG、お仕事の話などを。

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これを描いていた'94~'95年頃は、友人知人に結婚式が相次ぎまして、作中で、
「・・・まぁた友だちの結婚話かよ・・・」
とか言うセリフを言わせたりしていますが、そんな時期でした。

晴れの門出に水を差す野暮を承知で書きますと、結婚式ってのはご祝儀・2次会・その他諸々で、一回招待されると4~5万が吹っ飛びます。ましてこれが月に二度、三度あったりすると、もう大変。新連載で物入り続きの自分はもとより、こりゃ何とかしようゼ!と言うのがその頃の友人一同の見解でしたので、我々の間ではとある「紳士協定」が結ばれていました。

「ご祝儀は2万で文句無しな!抜け駆け禁止!!」

これはとても助かりました。何故なら、迷惑な験担ぎの所為で2で割れる枚数はタブー、そこで1万か3万しか無いわけですが、当然1万ってワケには行きません。で、3万。・・・しかしそれはキツ過ぎる金額でしたので、2万OKはとにかく有り難かったワケです。
(付記:1万円札1枚+5千円札2枚で出せば良いようですね。当時は「Yahoo知恵袋」は有りませんでしたw)


そんなある時、友人T君の披露宴に招かれました。T君は中学の時からの友人で、「紳士協定」の外に居た人でした。外の人の場合、不作法の事前了解はありません。2で割れるのはマズイとか最初に言ったヤツを呪いながら、まぁ個人的にお祝いの気持ちも強かったので、あれこれと工面して捻出した3万を包んで(ホントはこっちが常識ですw)出かけました。

会場は確か日本橋だったので、銀座線に乗り換えようと新橋駅で東海道線を降りました・・・と、その瞬間!

ベコッ!

と言う音と共に右脚に味わった事のない違和感が。ふと足元を見ると、な何と革靴の底が取れてホームに転がっているではありませんかw!
「うそ~っ(爆)!」
間抜けな出来事に周囲と一緒に笑った後「やべ~・・・」と青ざめました。

経験者は分かると思いますが、靴底が取れるとホントにどうしようもなくみっともないです。周りにバレないように歩く事が出来ないかと、しばらく試してみたりするんですが、とてもとても・・・あれはどうしたって取り繕えるようなアンバランスじゃありません(笑)。いっそ左足の靴底も取ったら目立たないかな?などとも考えましたが、ふざけている場合じゃありません。

「修理せねば!」

幸い新橋駅の地下に靴の修理店が有るのを知っていたので、冷静になってホームのベンチに座り、壊れた靴をよく見ると、底が取れたと言うよりいつの間にか靴底全体がぼろぼろになっていて、修理で直るような状態では有りませんでした。マンガ家が黒の革靴を履くなんて事は滅多に無いので、安物で済ましてた自分が悪いのですが、後の祭りです。

開宴の時刻も迫ってくるし、これはもう新しい靴を近所で買って履き替えるしか有りません。しかしその時は連載中で多忙なため、2次会その他を欠席するつもりで持ち合わせもそれほど無かったし、今のように365日24時間動いているATMも無く、

「やべ~。マジで結婚式どうしよう?・・・急用で欠席にしようか・・・」

と、真剣にドタキャンを考え始めたその時、自分の中の「悪魔w」が飛んでもない名案を思いつきました。

「そうだ!ご祝儀がある!!」

おお、何という素晴らしい、しかし情けない名案でしょう(爆)!
マンガ家という仕事を不作法や非常識の免罪符にするような態度だけはとりたくない、と言う信条が、常々あるにはあったのですがw、けれど隠しおおせぬ恥ずかしい足下を考えればネコババの誘惑に勝てるはずもなく、もとい、まだ渡してないんだから「ネコババ」では有りませんが、
気がつくと礼服の内ポケットからご祝儀袋(幸いな事に中袋に金額は書いていませんでした)を取り出して、(何故か周りに気を使いながら)そ~っと1万円札を抜き取っていました。

そして靴屋さんへ一直線!

かくしてピカピカの新品(ですがまた安物)の靴に履き替え、銀座線に乗り、日本橋へ急ぎました。
中袋に、今度はしっかりと「20,000円」と書き添えてw。

と言うわけで今更ですが、

「T君、ごめんな~~~!けどオレは行った!行ったと言う事を評価してくれw!・・・気持ちは3万だったんだぜ~~ww」