マクシミリアン(マックス)・フェリンジャーを父親に持つ3人の異母兄弟が

それぞれ愛する相手を見つけることになるこのシリーズ
父親の死後それぞれの存在を知ることになった3人は
父方の祖母リディアのオレゴンの牧場で初めて顔を合わせた時(まだ子供)はぎくしゃくするが
一緒に過ごす機会を経て、年長のブランドン、C・J、マギーの間に本物の兄弟のような絆ができる


「赤い髪の伝説」 Maggie's Man 1997       Alicia Scott (Lisa Baumgertner)


マギー・フェリンジャー 27歳 赤毛(母方はハザウェイ・レッドの末裔)
カイン・キャノン     ?歳  脱獄犯


*その日陪審員の義務を果たすため裁判所に出向いたマギーは、
看守の隙をついて脱獄を図った恋人殺しの犯人カインの逃亡劇につきあわされることになる
はじめは殺人犯の人質となった恐怖から何とか逃げ出そうと抵抗してみるが
一緒に過ごすうち、目的地に着くことだけを望んでいるカインが冷酷な殺人犯とは思えなくなり
やがて内気で奥手だったマギーは自分が彼に惹かれていることに気づき
目的地に到着する頃には彼の無実を信じるようになっていたため、ためらうことなく身を捧げる

無実の罪ですでに6年服役していたカインにとって身の潔白を証明するには脱獄という手段しかなく
たまたま巻き込んでしまったマギーに対して、心のうちでは申し訳ないと思いつつ
目的のためには時に冷酷な殺人犯を装い脅してでも言うことを聞かせるしかなかったが
マギーが人質に選んだ時に思っていたような大人しく従順な女性ではなく
怯えながらも自分の意見を通すためには一歩も引かないことがわかり
そんな勇気あるマギーに次第に惹かれていく
何度も追っ手をふりきった末目的の場所に近づく頃には
誰ひとり味方のいなかった彼にとって大切な存在になっていたマギーに真実を話すことになり
貴重な贈りものまでもらうことになるが、カインには成し遂げるべきことがあり
マギーを守るためあえて遠ざけると、一人対決の場に向かい・・・*

マギーが7歳の時父マックスの乗った飛行機がインドネシアで墜落し死亡したと伝えられ
遺体が無いまま1年後ブランドン、C・Jとともに追悼式をしてけじめをつけた
マギーは父親がスパイだったのではないかと考えていた
母親は相手を次から次へと変える恋多き女で、そんな母を持つマギーは自然と奥手に
マギーの兄C・Jは元海兵隊員(偵察部隊)、ブランドンはウォール街の投資家

マギーの職業は結婚カウンセラーということなんだけど
独身でVでもありなのか?と気になっても、あの性格なら納得できるかも
それにしてもとっても良い子ちゃんのマギーは、どこの世界で生きてきたの?ってくらい
父親からも母親からもある意味裏切られているから荒んだ性格でもありなのに
もうとことん善人キャラでまいったまいった
今時修道院育ちでもこんな善人いないでしょってくらいの描き方ですが
オイオイと突っ込み入れつつも
こういう人間がいることを信じられなくなっている自分に問題ありかと反省し
最初から最後まで引きこまれて満足できました


12の時母親を亡くしているカインの父親と兄はアーリア人至上主義の極右武装集団
その子供時代を想像すると、よくもこんな正義感のある大人に育ったと感心
やはり遺伝子の力は大きいのかしら?
読みながらすぐにトム・ベレンジャー主演の「背信の日々」を思い出し
映画館で観た当時は大好きなトム・ベレンジャーがこんな役を~!?という
ショックが大きかったことくらいしか今では記憶も定かではなかったから
今回チェックしてみて、同じくZOGに抵抗する極右グループだったのねと知りました
多分この映画でこういうグループの恐ろしさを初めて知ったと思うのですが
本当にこんな世界があるのねと信じられないくらい怖かった(そのあと現実のニュースでもみた)
だからそういう親を持つ家庭に育った子供が洗脳されずに我慢し続けたってことが
どれほどだったか想像できるだけに、なんかカインの魅力が何倍にも増した

マギーとカインのやり取りは、ハピエンありきとわかって読んでるから安心できたけど
ちょっと引いてみると、マギーちゃんやりすぎじゃない!って場面もあったことも確かで
それでもカインが本当に素敵なヒーローで
同じようなシチュエーションのサンドラ・ブラウンの「侵入者」や
リンダ・ハワードの「2人だけの荒野」を久々に再読したくなった1冊でした


一か所だけ引っかかったのは、額にあざのあるカインをマギーがゴルバチョフに例えるところは
ヒーローを例える相手としてどうなの?と疑問も残ったのは私だけ?
(そのあとずっとゴルビーさんの顔が浮かんでしまったわ)


「月夜の復讐」  Macnamara's Woman 1997

前作から1年後 アリゾナ州 セドナ

C.J.マクナマラ  36歳 元海兵隊員 バー{エインシャント・マリナー}のオーナー ブロンド
             18で海兵隊に入り12年で除隊後、バーの経営者に

タマラ・アリステア 30歳 NYの広告代理店のエリート
        

*10年前、両親とボーイフレンドが死に自分も重傷を負った当て逃げ事故の真相を究明するため
 偽名を使ってセドナに戻ってきたタマラ・アリステア
 時期大統領選に立候補した地元の上院議員のボランティアを務めながら真相を探るつもりが
 まるで何者かがタマラの目的を知っているかのように、不審な出来事が次々ふりかかり
 危険な目にあった際バーの経営者で元海兵隊員のC・Jに助けられたことがきっかけで
 彼に関心を示されるが、事故後頼る者は自分だけと強い意志で生きてきた彼女は
 素直にC・Jに頼ることができず、何度か窮地を救われても頑なに拒み続ける

 6年前買い取ったバーを経営するかたわら、時には保安官の手伝いをすることもあるC・J
 ある夜車のトラブルにあったタマラと遭遇し、助けを申し出るがすげなく断られ
 それでも彼女が気になったC・Jは、何かと口実をつけてアプローチを続け
 なかなか心を開いてくれないタマラの真の目的と、そのせいで危険な目にあっていることを知る

 そんな2人の距離が近づいた時、犯人では?と疑っていた人物が関係なかったとわかり
 タマラは真相追及をあきらめてNYへ戻ることを考え始めるが
 事件の真相を知られたくない人物はC・Jにまで手を引くよう脅しをかけてきて
 タマラもさらなる窮地に陥ることになり、ついにC・Jの救いの手を受け入れた彼女は
 彼と2人で犯人を突き止めることになり・・・*
 
 

タマラは10年前の事故の際、愛する者たちが死んでいくのを見ているしかなかった状況で
彼らを救えなかったことと一人生き残ったことに罪悪感と怒りを抱えていたため
なかなか心を開こうとせず
白馬の騎士のようなC・Jが現れても、自分が楽しんだり幸せになることに消極的

 

マギーやブランドンとは違って母親と2人貧しい環境で育ったC・Jは
母が病気になって死んでいく時、子供の彼には何もできなかったことで
普段から困っている相手を助けたいという思いが強い

過去の出来事で心身ともに傷を抱えたタマラの心の壁を突き破るC・Jのキャラが良い
サスペンスも適度にあって
ロマンスは文庫本シリーズより(まだこの時点で2冊しか読んでないけど)ホットで
なにより3人の母親違いの子供をつくったマックスがいったいどういう人物なのか知りたくて
本がおけなかったけど、この2作目では彼についての真相解明はなくラストの3作目に期待
 

 

C・Jの母親が病死した時彼は11歳、未婚の母だったため一人ぼっちになったC・Jは
母の死後戻ってきたマックスに同行して1年あまり世界中を飛び回るが
その後飛行機事故でマックスも死亡し、祖母リディアの牧場で存在を知らなかった異母兄弟と対面
父親はいかがわしい職業に関わっていたと推測している(詐欺や密輸など)

 


「探し求めたものは・・・」  Brandon's Bride 1998


ブランドン・フェリンジャー 37歳 元ウォール街の投資家で億万長者 登山家 

ビクトリア・ミーズ   27歳 女手一つで牧場を経営し一人息子を育てる 
                  別れた夫ロナルドは麻薬取引の罪で服役中
ランディ・ミーズ     8歳 ビクトリアの息子    

 

オレゴン州ビーバービル
*マクシミリアンの子供の中で、一番父親の死の謎に関心を持つブランドンは
 手がかりを追ってビーバービルまでたどり着き、森林消防隊の消防士となって滞在するかたわら
 父親のパートナーだった人物の消息を探るつもりだった
 ブランドンが滞在先に選んだのは、女手一つで息子を育てるビクトリアの牧場で
 出会ってすぐに、4年前妻を亡くして以来失っていた感情を呼びさまされることになる
 半年だけの滞在で、森林消防士として呼ばれればいつ戻って来られるかわからないこともあり
 気楽な気持ちで相手にすることはできないと、必死の思いで自制するが
 ブランドンのまわりで不審な出来事が次々起こり、怪我を負ってビクトリアの看病を受けるうち
 求めあう気持ちが高まって2人は愛を交わすことになる
 だがブランドンがマックスの死の謎を解明することをよく思わない人物は
 ブランドンを亡きものにしようとチャンスを狙っていて
 やがて彼が父親の過去の真相に近づいた時
 出動要請が出てチームと共に森林火災の消火活動にあたることになったブランドンは
 それまでチームプレイを不得意としてきた生き方を試され
 さらに生死をかけた闘いを強いられることになり・・*

ブランドンは4年前NYのウォール街で投資家として仕事優先で生きていた時期
妻のジュリアを強盗に殺され、その時の自分が妻を顧みなかったことの罪悪感もあって
父親の謎の死について調べていた妻が死んだのは、父親と関係があるに違いないと思い込み
とりつかれたように危険な生き方を選んだり、妻の死の罪悪感の大元の金など欲しくないと
資産を減らそうとするが、逆に財産は増えるばかりという悪循環を続けていて
他の2人よりも、父親の死に強い関心がある

 

高校卒業の2ヶ月後に妊娠、結婚したビクトリアは、愛した相手がまだまだ子供だったと思い知り
それでも結婚生活を続ける努力をするが、夫が麻薬のために貯金にまで手をつけた時点で離婚
8歳の息子と共に、両親の援助で手に入れた牧場経営に精を出す日々を送っていた
そこへ現れたブランドンにすぐに心惹かれるが、彼は去っていく人とわかって先には進めず
それでも怪我を負ったブランドンを看病するうちに女として惹かれる気持ちが募る

いよいよマックスの死の真相が明らかになる3話目のこのお話では
ヒーローが死んだ妻に心を残しているという苦手な展開かと心配でしたが
シリーズ3作に共通する、一目見たとたん衝撃を受けるほど惹かれるという好みのパターンで
ブランドンの妻への思いも、愛していたからというよりも自分が顧みなかったという罪悪感からで
4年後ということもあり、自分の中の基準
(前妻を愛していた場合5年以内に愛する相手を見つけたら、ちょっと引くという狭い了見)では
なんとかクリア

そしてこのお話もドラマか映画で観た覚えが・・と必死で思いだしたのは
多分スコット・グレン目当てに観た「ファイアーストーム」という映画で
銀色のシートを被って炎を逃れるシーンは
この映画(多分)で観てたから、お~まさにあの場面ね~!と面白かった

3作中ではこのお話のビクトリアの存在感がやや薄く思えてしまったけど
ブランドンのキャラも好みで
ヒーローは 1作目(カイン)→3作目(ブランドン)→2作目(C・J)
ヒロインは 1作目(マギー)→2作目(タマラ)→3作目(ビク)の順番でお気に入りとなりました

マックスはマギーとブランドンの母とは結婚したものの金目当て
C・Jの母親とは貧しかったせいか結婚せず、C・Jだけフェリンジャー姓ではない
で、結局このマックスですが、どうして母親違いの子供をつくったのかわからないまま
マギーの母とブランドンの母はリッチで、彼女たちの金目当てって言っても
彼の職業でどうしてそんなにお金が必要だったの?って謎だったし(経費で落ちるはず?)
ブランドンとC・Jなんて1年違いの異母兄弟ってことは、倫理観ゼロってキャラなのか
もっと正当な理由を期待していたから、そこだけ納得できなかったような・・
まあ、なんにせよ子供たちは単に父親にないがしろにされたことよりも
他にも家庭があったってことで心に傷を負うわけで
無責任もいいところなやりたい放題の男だったってことなのかしら
まあそれゆえ傷を負ったヒロイン、ヒーローのお話となるわけで追求するところではないのかな

以前どこかのロマンスサイトの紹介で面白そうと知り、探しまくって入手したのに
いざ読もうとしたら、何だか乗れなくて(その当時の心境のせい)何年も放置したまま
いつしか処分本エリアにほおり込んでおいたのを必死で探しまくって救出
せっかくリサ・ガードナーにはまれたんだから、過去の初期作品を読むのは必修と
手放す前に読めて良かったと
特に謎解きもの、シリーズもの大好きな自分には、3作とも面白く読めました