≪ご案内≫この話は魔人様のリク罠ドボンで書き始めたお話です。

  自分に楽しく、(←汗)のんびり進めていきますので、お時間がございましたらぜひどうぞ~v




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魅惑の花 9




 都内、某総合病院。ここは政財界の重鎮が御用達にしているほか、LMEの所属者が使用する病院でもある。セキュリティ上の信頼性と、医療面での評判。どれをとっても都内、いや、全国でもトップクラスと言える病院である。

 ちなみに、LMEがこの病院を使用する事になっているのは、院長とローリィが昔馴染みの知り合いでもあることによる。入院や検査で訪れる一般者用の入口とは別に、一般の病棟とは隔離されている特殊構造になっていることも、各界の御用達となっている由縁である。

 そして、この病院へと定期検診の為に訪れていたキョーコに一人の医師が声をかけた。


「キョーコちゃん、だよね」

「え…?あの…」


 不意に呼ばれた自分の名前。気のせいでなければ芸名の方ではない発音で呼ばれていた。

 病院に知り合いはいないはず…。そう思って振り返ってみたキョーコは、自分を懐かしそうに見つめる男性に驚きを隠せずに、返事ができずにとまどっていた。

 清潔な白い白衣に、胸元にかけられているネームプレートから、声をかけてきたのが医師であることを悟り、キョーコは自分の名前を知っていたのは検診時の自分の名前を見たからだと納得する。しかし、それでもまだ、なぜ自分を懐かしそうに見ているのかがわからない。

 その様子に苦笑して、医師はキョーコにしか分からない話題を切り出した。


「昔…京都で過ごしてた時に、世話をしてた鳥がいたよね。あの空へ飛ばした鳥、元気にしてるかな?」

「――― !!も、しかして…」


 キョーコの目が、白衣についた名札に向く。

 そこに記されている名は 『八坂』 の二文字。


「八…坂…お兄ちゃん?」


 驚きと、同時に嬉しそうな様子で自分の名を呼ばれた八坂は、普段の彼を知っている者であれば驚いて振り返るであろう、柔らかい微笑みを浮かべてキョーコを見た。


「覚えてて…くれたね」

「ご、ごめんなさい、すぐに思い出せなくて」

「いや、それはそれで仕方ないよ。あれから随分と時間がたってるし、お互いに見た感じは変わっているから」

「……そう、ですね。でも、それならどうして私だとわかったんですか?」

「うん…。この間週刊誌に出てた歌舞伎役者、相馬龍之助の事は知ってるよね?」

「はい、この間舞台も観させていただきました」

「…そう。その、彼の後見役の樫山さんとキョーコちゃん、先日のパーティー会場で一緒にいたよね」


 そこまで八坂が言うと、キョーコは「あっ!」と小さく声をあげた。

 膝の痛みに苦しむ樫山に、いち早く声をかけてきた、医師を名乗った人物。あの時は樫山の状態が心配で、あまり気にしていなかったが、そう言えばその医師と同じ声だと今更ながらに気付いた。


「あの時、樫山さんを診て下さったお医者様!…八坂さん、だったんですね」

「うん、彼が帰り際に君を『キョーコちゃん』と呼んでたからね。それで俺もやっと気が付いたんだから、お互い様ってところか。…それで、その…」

「はい?何でしょう?」


 ここまでは八坂がシミュレートした通りに話が進んでいたのだが、この先はキョーコの返事次第で幾通りもの予測できない話の展開になる。期待通りのこともあれば、残念な結果になることも予想できる。どちらかと言えば、八坂の頭の中には残念な結果になることの方が多く予想されていた。

 そのため、なかなか話を切り出せず、しばらく言いよどんでいた八坂だったが、このままでは先に進まない。意を決したように小さく頷くと、キョーコに小さな声で尋ねた。


「その…樫山さんたちとは…いや、はっきり言った方がいいか。相馬龍之助とはどういう関係なの?」

「……・はぃ?えっと、関係、ですか。樫山さんは昔お世話になってた旅館によく宿泊されていた方で、龍之助さんは…お友達、です」


 八坂の予想に反して、キョーコから返ってきた返事は、至極シンプルな友人という関係。だが、その言葉を鵜呑みにしてはいけない、とその言葉を追及する。


「友達…?それって今噂になってるお付き合いの相手っていうことを隠してるの?」

「は?ち、違いますよっ!何でそうなるんですか!お互いに芸の道を進む者として、です。私が教えていただいている一方、ですけど。何しろ龍之助さんの舞台は本当にすごいですから!」


 言葉だけでは分からないが、キョーコの龍之助を本当に異性として見ているというよりも、ライバル、もしくは尊敬に近い感情を持っているということが、その力説する様子で知ることができた八坂は、少し安堵した様子で無意識のうちに入っていた肩の力を抜いた。


「ふぅん。じゃぁ、付き合ってるわけじゃないんだね」

「もちろんですっ!それに私が相手では、龍之助さんがご迷惑ですよ」

「は?何でなの?」

「だって!私みたいに美人でも、色気があるわけでもない女が相手では龍之助さんの歌舞伎役者としての格に傷がつきます!」

「・・・・・・・・・・・」


 力説するキョーコに一瞬呆気に取られた八坂だが、その後で小さく 「それはないと思うけど…」 と呟く。しかし、それはキョーコの耳には届かなかったようだ。


「何か言いました?」


 不思議そうに首を傾けるキョーコに、八坂は苦笑しながら首を横に振り何もないと否定する。


 ――自覚がないっていうことは、良いのか悪いのか。少なくとも隙にはなるよなぁ。


 八坂は複雑な心境になりつつも、その隙をつつかせてもらうことに決めた。


「じゃぁ、今、お付き合いしている人はいるの?」

「いません!私はそんなことに現を抜かしているわけにはいかないんですから!それに…」

「それに?」

「目標にしている人がいるんです。その人に並んで立てるくらいの役者になる、って。だから、今は役者としてのスキルを上げることが一番大切なんです!」


 うっすらと上気した頬でそう力説するキョーコに、八坂は嫌な予感がして続けて尋ねた。


「へぇ…。聞いてもいい?その、目標にしてる相手、って?」

「八坂さんも知っていると思いますが、同じ事務所の敦賀さんです」

「………・そう。ところで、役者のスキルを上げたいって言ってたよね。役者って色々な経験が役立つんじゃない?あぁ、でも忙しいとなかなか話題のスポットとかには出かけられないか」

「あ、そう。そうなんですよ。おかげさまで私も少しずついろいろお仕事はもらえているんですけど、以前のように気軽にあちこち、ってわけにはいかなくなってて…」


 さりげなく遠ざけた蓮に関する話題に対して、あからさまにほっとした様子を見せたキョーコに、八坂の予感は確信に変わった。

 だが、八坂もここで引く気はなかった。話を逸らすようにさりげなく近況を聞きながら、キョーコが最近行きたいと思っている場所などを聞き出す。

 昔馴染みという気安さと、八坂の医師として培ってきた相手から話を引き出す話術に、キョーコは何のてらいもなく、気になる場所を八坂に伝えていた。


「それなら、今度一緒にそこへ行こうよ」

「え?で、でも私より八坂さんの方が忙しいでしょう?お医者様は年中無休ですもの」

「平気。溜まりにたまってる年休があるし、上司からもたまには休みを取れ、って言われてるくらいだから」

「そ、そうなんですか?」

「うん、じゃ決定ね。今スケジュールわかるかな?あ、それから連絡先も…」

「は、はい。えっと、予定はですね…・」


 話しの流れのまま、あれよあれよと言う間に、出かける予定と、メールアドレスを交換していく手際の良さに、キョーコは 『さすが、お医者様だと手際がいいわねぇ』 などと奏江あたりがその言葉を聞いたら大声で怒られそうな暢気なことを考えていた。


「さて、引き留めてしまってごめんね。まだ検診の最中だったよね。この後はどこをまわるの?」

「え~っと、あとは…CTと総合診8で今日わかる結果を聞いて終わりです」

「そう。じゃ、また今度。詳しいことはまた連絡するよ」

「あ、はい。それでは失礼します」


 八坂の言葉に、キョーコは検診の最中であったことを思いだし、綺麗なお辞儀を残して去って行った。

 その後ろ姿を見送り、八坂も医局へと足を向けるのだった。

 


 つづく




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

・・・・・・どうしてこう、蓮サマの出番がないんだろう。

つ、次っ!つぎこそは!←って、ぜったい自分の首を絞めてる。(笑)


進みが悪くてすみませーん!次も懲りずにぜひお付き合い下さいませ~ラブラブ 




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