あれ?3連休の一日がもう過ぎてしまっている…。

先週まで頑張ってがしがし書いていたペースが、「妖~」を終えたことでペースダウンしてます…。

あ、いやもちろん仕事面の都合もあるのですが、無理が効かないと申しましょうか。…正直、暑さにもやられてます。

ま、言い訳はこのくらいにしておいて。


で、今週末の更新は「エンドレス~」です。

よろしければ以下からどうぞ~ラブラブ

















エンドレス・ワルツ 3



 何か自分が思うところと違うことを聞きたがっているようにしか見えない佐倉の期待の目に戸惑いながら、キョーコは申し訳なさそうに質問に答えた。


「…ご気分は、と言われてもですね。敦賀さんはきっと、不甲斐ない後輩が何かしでかすのではないかとご心配なさっただけでしょうから。申し訳ないと言うか何と言うか…」

「………そう…なの?」

「ええ。だって、それ以外に敦賀さんがわざわざ私に声をかけてくれる理由は思い当たりませんから」


  ―― さすがに女性対策に、盾としてないよりましな程度の私に声をかけてくれた、とは言えないわよね~。


 微妙な顔をしている佐倉たちに余計な誤解を招かぬよう、キョーコはさらに続けた。


「敦賀さんがご一緒してくださったおかげで入るときにも色々聞きとがめられることもなく会場にはいれましたし。本当にすごいですよね。どなたもご存じだ、っていうことは。私、後で気が付いたんですけど、セキュリティ上私一人だったら誰なのか分かってもらえなくて、きっと会場に入るまでに大変だったと思うんです。 『京子』 なんて知らない、って追い返される可能性だってあったんだ、って思うとご一緒させてもらえてよかったな、と」


 にこにこと話すその内容を聞いて、佐倉と小林は 『ないない、それは絶対にない!』 と心の中でハモっていたが、キョーコがそれに気付くはずもない。

 それこそ、佐倉も小林も何度か共演しているため、素のキョーコをよく知っている。

 その平素の姿であるならともかく。

 パーティー用にドレスアップされ、キョーコが “ミューズ”とあがめるテンがヘアとメイクをしてくれたその姿がどれだけ男の目を引き、女性ですら思わず見てしまう美しい姿になっているのか。

 それに気付いていないのが当の本人だけという状況に唖然とするしかなかった。

 自分たちですら声をかけるのに、かなりためらったほどだ。…というより二度三度見ていたのに確信が持てなかったのだ。

 自分たちが行きつくにはあまりに遠い道のりの先にある、あの中央のテーブルに集まっていた面々の中にいて少しも遜色のない輝きを放つキョーコが、自分たちの知る京子と同一人物であるのかどうかを。


 だから、違うかもしれない、と会場の他の場所も見てまわっていたのだが、先ほど一人になっている姿を見てようやく声をかける決断をしたのだ。

 何度も横を通り過ぎていたのに確信が持てなかった後ろめたさから、二人して偶然見つけたかのように声をかけてしまったのは致し方ない事だっただろう。

 だが、声をかけてみればやはりそこはいつもの見知ったキョーコで。

 二人が内心ひどく安堵したこともキョーコは知らない。
 そして先ほどのキョーコの言葉から、自分がどれだけ人の目を惹くのかに気付いていないあたりも、やはりキョーコはキョーコなのだと感じさせた。


 そうして若手が集まるテーブルに佐倉たちとともに入り込み、馴染んでしまえば先刻までの近寄りがたさはどこへやら。キョーコの美しさと、細やかな気遣いの会話と控えめな態度にキョーコとお近づきになりたいと思う者たちが増殖しているのだった。



一方。


「…どこに行ったんだ?」


 『ここで待っていて』 と言い置いたはずなのに、その姿は忽然となくなっていた。

 あれほど周囲に牽制をかけ、手を出すなと言わんばかりに自分の手元にとどめ、明らかに見て取れる馬の骨の増殖を防いでいたのに…。


 会場の入り口で、気付いていなかったのは彼女一人だけだろう。

 その美しくも何者をも寄せ付けない気品のある姿に、声をかけたくてもかけられない男たちがどんな目で見ていたのかを。

 そうなることを予想して、社に無理を言って会場入りの時間を間に合うように調整してもらいギリギリのところで捕まえた美しい蝶。なのに、自分がほんの少し目を離していた隙にどこへやらと飛んで行ってしまったのだ。


 焦りを隠さずに落ち着かない視線をさまよわせる蓮に、さすがに他の者たちも気付きどうしたのか尋ねる。


「さっきまでここにいたはずの俺のパートナーが…京子がいなくなったんです。ご存じありませんか?」


 言葉は丁寧だが、その様子には焦りの色がありありと浮かんでいる。

 何事かと蓮の周囲に集まるのは当然大物俳優・女優たち。

 パーティーの主役級が集まって話をしているのだから当然そこに注目がいく。


 大物たちの間で一大事が起きていることなど露知らず、和気あいあいと楽しんでいた若手グループの中からも、あっちで何かあったらしいよ、と話題になるまでに時間はそうはかからなかった。


「何かしら?結構な顔ぶれが集まってるわね」

「…ていうより今回のメインの人ばっかりじゃないか?あれ」

「本当…どうなさったんでしょうね」


 よもや自分がいなくなったことであちらが騒動になっているとは思っていない面々は、他人事のようにその様子を他の者たちと傍観していた。

 すると、そのうちになにやらこちらの方を指さしながら何か話す様子がうかがえるようになる。


「え?何かこっちを指さしてない?」

「あぁ。視線がこっちに向いてきてるよ…な」

「…誰かをさがしてるんでしょうか?」


 キョーコののほほん、とした言葉に佐倉をはじめそこにいたメンバーが一斉にキョーコを見る。


「え?あの、どうされたんです、皆さん?」

「あの、さ。京子ちゃん、あっちで騒ぎになってるのってひょっとして…」


 周囲の視線が心配そうにキョーコを見ているが、その視線の意味に気付かないキョーコ。と、キョーコの周囲の人垣を掻き分けて見知った人物が慌てて駆け寄ってきた。


「キョーコちゃん!ここにいたんだ!話しの途中かもしれないけど、一旦あっちに戻ってくれる?このままだとアイツが…」

「社さん?そんなに慌ててどうなさったんですか」


 あまりの社の慌てぶりに、キョーコは心配して「今、お水をお持ちしますね」と後ろのテーブルを振り返ろうとした。

 しかし、それすら社の慌てぶりを増強させる。


「お水とか俺への気遣いはいらないから、と、とにかくこっちへ…」


 社がキョーコの手を掴んでその場から離れようとしたまさにその時。


「京子!」


 ざわめきの中でも響き渡るように通る蓮の呼び声に、キョーコも社もその場に固まった。


「………遅かったか…」 


 社はそう呟くと、諦めたようにキョーコの手を離して明らかに 『ごめんね』 と目で訴えながらすっと一歩引いた。

 だが、キョーコの視線は社ではなく、その向こうに立つ蓮に向けられて固まっていたのであった。




つづく



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

さて、この後蓮サマはどう出るか?

ってもうちのヘタ蓮サマのすることなので、予想はついているかとは思いますが~苦笑

ともかく。まだ続いてしまうのは、オリキャラの人々に少し働いてもらいすぎたからか?蓮サマにもう少し頑張ってもらわなければ、ですね。


と、いうわけで、そのヘタ蓮サマには次回しっかり頑張ってもらいましょう!

そう言って今回の蓮サマの出番が少ないことをフォローしてみる。←なってないって汗


次の更新はお久しぶりの「動物園」でいきます。

明日までのUPはちょっと厳しいかな…。

来週末の更新になってしまうかも、ですがまた覗いてみていただけたら幸いです。




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