こんにちは。

今週も今日と明日で一本ずつUPできそうな気配です。

まずは一本目。

先週スタートさせました捧げものシリーズです。

キリのいいところまでにしたらば、ちょい短めになりましたが…このくらいのほうが読まれる方の負担にもなりにくいかな、と。

…読みやすい文章を目指してはいるんですけどね。

現実は… orz


さておき、以下からスタートです。

読んでやろう、という寛大な方。どうぞお付き合いくださいませ。













エンドレス・ワルツ 2



 場違いと感じていた会場中央のテーブルを呼びに来た若手二人に誘われるままに離れ、ゆっくりと話をしながらキョーコたちが向かった先は、丁度先刻いた場所からは見えにくい場所で少しホッとする気楽さが漂っていた。

 そして、キョーコは自分がなぜあの中央のテーブルにたどり着いていたのかを二人に聞かれるままに説明していた。


「へぇ、じゃぁ敦賀さんと一緒だったんだ」

「そうなんですよ。偶然入口のところでお会いして、声をかけて下さって…」

「それじゃぁ小林くんが気付くわけないかぁ」

「さ、佐倉っ!」

「……?」


 意味深な言葉を “小林くん” と呼んだ彼に投げかけてニヤリと笑う佐倉。

 慌てる小林が佐倉を止めようとじたばたしていると、キョーコは思わず二人に言った。


「撮影の時から思ってたんですけど、お二人って仲がいいんですね」


 にこにこと、悪意のないキョーコの笑顔は小林の儚い思いをあっさりと打ち砕いてしまった。

 が、それにめげているような根性なしではこの業界でやっていけない。

 努力だ、根性だ!とばかりに復活した小林はキョーコの誤解を解きにかかった。


「っ!ち、ちがっ、ちがうよっ!!佐倉とは同期っていうだけでその」

「あはは~!やだ~キョーコちゃんったら!」

「え…?私何か変なことを言いましたか?」


 キョーコに小林の愁派が全く届いていないことを佐倉も哀れに思ってしまうほど、キョーコは訳が分からない、という顔をしていた。


「違う違う。小林くんと私は珍しくもこの業界で気の合う仲間なのよ」

「一方的に俺がいじられてる気はするけどな」

「悔しかったら入り口でさりげなく女性をエスコートできちゃう敦賀さんを見習いなさい」

「なんだよ、それ…。いきなりハードル高すぎじゃないか?」


 二人の会話に、その時のことを思いだしたキョーコは思わず赤面してしまった。

 目ざとくそれに気付いた彼女は、今度は矛先をキョーコへと向ける。


「…で、トップ俳優にエスコートされたご気分は?京子さん」


 記者の質問のように手でマイクを持つような格好でキョーコに答えを求める佐倉に、より鮮明にその場面を思い出してしまった。


-・-・-・-・-・-・-・-

 あの時…。


 振り返るつもりはなかった。背後で黄色い歓声があがったから、きっとどこかの人気俳優が到着したのね、程度で邪魔にならないように歩調を早めてさっさと中に入ろうとしたその時。


「つれないね。 『事務所の先輩』 を待とう、って気はないのかな?」


 そこそこ距離は離れていたし、大きな声でもなかったはずなのだが。

 その声にキョーコは足を止めるしかなかった。

 有無を言わせぬその声の主は言わずと知れたLMEトップ俳優の敦賀蓮。

 その醸し出す妖艶な雰囲気はキョーコ曰く 『男には無用なほどの色気』 が全開で。


「俺一人で来てるんだ。女性をエスコートして入るくらいの格好はつけさせてくれないかな?」


 近寄るその雰囲気は何故か刺々しい。振り返らなくてもわかる。


 ―― 似非紳士スマイル全開だわ…


 かといって、声をかけられているのに無視することなどできない。できるわけがない。

 この羨望と嫉妬の(後者が90%以上と思われる)理不尽な視線が集まる中、逃走することもできるわけなく、キョーコはゆっくりと振り返った。


「こんな素敵なレディを放っておくなんて、俺にはできないしね。さ…お手をどうぞ」

「…し、失礼します。 “敦賀先輩”」


 ぴく、と蓮の眉が寄ったことには気付いたが、キョーコは自分を守るその言葉を言わずにはいられなかった。

 実際、先輩と後輩、という関係を自分がはっきりさせたことで、この周囲から寄せられる殺気は幾分か減ったことも確かなのだ。

 と、蓮から幾分離れた場所にいる彼の有能マネージャーが何故か憐みのような複雑な視線をこちらに送っていることに気付いたキョーコは、ここでもとんでもない勘違いをしてしまった。


 ―― そうか、そういうことね!


 これだけの衆目が集まっている以上、この蓮の行動は他の女性に言い寄られないようにするために自分をスケープゴート(生贄の羊)に選んだだけなのだろう。

 自分であれば事務所の先輩と後輩で誤魔化せるし、他の女性が近寄ってきてもエスコートしている相手がいる以上相手は必要以上に近付けない。


 ―― だから、危険で申し訳ないけれど、敦賀さんを守ってくれ、というサインだわ!


 と、社が聞いたら卒倒しそうな勘違いを果たし、キョーコはにっこりと蓮にエスコートされる役を演じることに集中したのだった。




つづく


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

まずは撃沈やっしー。

憐みの視線は 『蓮、お前馬の骨を牽制してるつもりだろうけど、キョーコちゃんには全然理解されてないぞ…』 と、キョーコではなく蓮に向けられたもの。

知っててスルーした蓮ですが、それによってキョーコがしっかり誤解してしまいましたとさ。(笑)


明日は 『妖~』 の最終話になる予定です。

…言っといてUPに漕ぎつけなかったら、まぁ毎度のことだな、と流してやってください泣き1




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