こんばんは~ or おはようございます or こんにちは~!


相も変わらず奇妙なテンションでお送りしております。

(怖い人になるからここいらでやめておこう。)


さておき。今回はナンバーを16と振っていますが、正確には16.5的なものです。

時間軸はほとんど同じなので…。


話は変わって。

やっぱり現代ものよりパラレルは嫌われる傾向にあるのでしょうか汗

もしくは前回更新時間が週末ぎりぎりになったことが災いしたのでしょうか。


カウンターとかを見ながら傾向分析してみたりするわたし。

また皆さんご意見ぷりーず!ハート



ではでは、本日も恋奇譚ですが、よろしければこの先へお進み下さいませ~ラブ











妖-あやかし-恋奇譚 16 

  ~月影の章~




『君を恋しいとか愛しいとか思って探していたわけじゃない』


 その言葉は、一瞬ではあったが、キョーコの心に重く響いた。

 それは、蓮の言葉にもあったように、久遠としての記憶がなかった以上仕方がない。

 記憶も、それに付随するはずの想いも、全てを失っていたのだ。

 探してくれただけ、ありがたいこと。そう思おうとしたのだ。


 しかし。


『自分のところの姫がどれだけ素晴らしいかを押し付けるように話すのもいてね…文が届いたり、贈り物が届いたり…』


 その言葉を聞いた瞬間。キョーコは自分の胸の中に得体のしれない闇がうごめくのを感じていた。


  ―― ソノ 『ヒメ』 タチト、フミノヤリトリヲシタノ?


 自分でもゾッとするほどの昏い感情。この心の声は、本当に自分の声なのか?

 そう思わずにはいられなかった。

 その気持ちを誤魔化すように口から出た言葉は、しかし自分の思っていたものとは違い。


『蓮さまは…私に出会わない方がよかったのではないですか?』


 押し隠すはずだった本音が、気付いた時にはほろりと口から紡がれてしまっていた。

 「どういうこと?」 と聞き返されて自分の口から紡がれた言葉を改めて反芻すると、キョーコは後悔の波にのまれる。

 しかし、一度口から紡ぎだされた言の葉は、取り戻すことはできない。

 そして、後悔していても、これまでにこころの奥底で感じてきた自分に対する自信のなさと、蓮に対する想いとでその心の調和の取れなくなっていたキョーコは、先の言葉に続いてその思いを吐露してしまっていた。
 しかし、その言葉も途中で蓮に遮られ、二人の間に再び気まずい沈黙が降りる。

 蓮も何か考えているようであったが、俯いていたキョーコには蓮の表情は見ることはできなかった。

 その沈黙の間も、キョーコは自分の心を支配しようとする闇に浸食されていく自分を感じていた。


  ―― そうよ。蓮さまは久遠だけど、久遠じゃない。

 ここで大納言という地位にあって、敦賀蓮という名を持つ以上、色々な方とのお付き合いがあって当たり前じゃない。

 私なんかの相手をしてもらえると思うことが…もともとおこがましい考えなのよ…。

 それに…私は蓮さまからのお文なんて…いただいたことないもの。


 出会いが出会いだっただけに、蓮との逢瀬はまっとうな手順を踏んでいるわけではない。

 それが蓮の思いを量る術になるかと言われれば決してそうではないだろう。

 だが、形として残らないものに対する疑念は、キョーコの心の闇を勢いづかせる。


『蓮さまは…色々な方からお文をもらったんでしょうね』


 黙り込んでしまっていた蓮に聞かせるつもりではなかったが、つい言葉が漏れてしまった。
 困ったように自分の名を呼んだ蓮に、自分の心の醜さを見抜かれたような気がして泣きそうになったキョーコは、それをこらえようと自分の手をこれ以上ないくらいに強く強く握りしめた。

 しかし、零れ落ちた涙を留めることはできず。

 霞んだ視界で、自分の握りしめた拳の上にはじける涙を見つめていた。


 と、そこに蓮の手が伸びてきたかと思ったら、自分の右手がその手に捕まれてぐい、と引っ張られる。

 え?と思う間もなく、キョーコはすっぽりと蓮の胸に引き込まれ、抱きしめられていた。


 

 強く抱きしめられて、キョーコの心がざわめく。


 嬉しい気持ち。

 優しい気持ち。

 

 でも、感じるのは綺麗な気持ちだけではない。


 疑う気持ち。

 否定の気持ち。



 自分と同じ気持ちでこうしてくれているのなら、これ以上嬉しいことはない。

 けれど…。

 自分の気持ちを知って、誤魔化すつもりの抱擁なら、これほど悲しいものはない。


 どちらの意味の行動なのだろう?とキョーコがぼんやり思っていると、思いもかけない言葉が耳元で囁かれた。


『俺を否定しないでくれ!』


 どういう意味かと聞き返そうと体を離して蓮を見ようとするが、さらに強く抱きしめられてその行動はとることができなかった。仕方なく名を呼ぶと、返ってきた言葉にキョーコは体を硬直させた。


『俺は…久遠としてではなく…君が…キョーコが…すき、なんだ…』



 

 絞り出すようなかすれた声で告げられた言葉に、キョーコは戸惑う。



 魂も、躰もすべて久遠に渡すことを約束した。

 それを後悔したことなどない。

 けれど、蓮を思うこころだけは、持っていたいと願った。

 結局どちらも自分がまだ持ち続けることを許されて、久遠も蓮も互いに存在しあう現状の中。

 久遠と蓮、どちらでもキョーコは冷静に向き合い、相手をすることができていた。…はずだった。


  ―― でも…今の私は……。

 


 上弦の月のごとく自分と違う世界での光を放つ側を久遠とするならば、

 下弦の月のごとく自分と同じ世界にいて静かに輝く光が蓮だろう。


 自分は一体今どちらの月に照らされて、心に影を落としているのだろう。

 月には決して見えることのない、光に照らされた先の影。―― 月影。

 

 照らされる光がまっすぐに強くなるほど、その影は濃く、より闇に染まる。



  ―― 私は、どちらの光に照らされることを望んでいるのだろう…?



 キョーコは生まれて初めて知った自分の中の 『嫉妬』 という暗闇に、今まで疑うことのなかった久遠と蓮への想いについて向き合わざるを得なくなっていた…。





  つづく




゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

前回、キョーコの心情がまったく判明しておりませんでしたので、ちょっとそっち寄りに同じ時間をトレースしてみました。
で、ほんの少しだけ話が進み。(←ホントか?)

う~ん、そろそろ終わりが見えてきたかな?

でもまだ続いてしまうのでした~はは



  

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