あうぅ~!ぎりぎりの時間になってしまったぁぁ~!

今日中にUPできる、ってところで勘弁してやってくださいぃーっ!


そんなわけで(どんなわけだよ汗)サンタ後篇でーす。

(あれ?いつの間にか前後篇?とは言わないでやってください orz)








いたずらなサンタ ~とうさんの贈り物~ 後篇




「…なんだ、これは??」


 たまたま目にした報道番組に映る見覚えのありすぎる二人に、蓮はわが目を疑った。

 画面の中には空港に到着した父を秘書風の恰好で出迎えるキョーコの姿。

 最初こそ、ローリーからその時間に空港に到着することを聞いていたのでそれ自体にはさして驚くこともなかった。しかし、画面の中からはとんでもない報道がなされていたのだ。

 それはキョーコとクーの間で何やらやり取りがされた後、レポーターがキョーコを 「クーの隠し子か?」 などと聞き捨てならない言葉を発し、空港が蜂の巣をつついたような大騒ぎになっているものだった。


  ―― 父さん、いったいどういうつもりなんだ?


 売れっ子になってきたとはいえ、まだまだ女優歴の浅いキョーコがこの手のことで話題になることは芳しくないことである。なぜなら恋愛沙汰のスキャンダルではないとはいえ、相手は日本人なら知らない人の方が少ないクー・ヒズリ。このような派手な出来事が起こった時に世間から色々探られてつぶされかねないのはどう転んでもキョーコだ。

 確かに、キョーコは過去の自分(久遠)を演じ、いたく父に気に入られて [息子] として認められていた。だが、それをなぜ、今このタイミングのこのかたちで暴露したのか?

 蓮が、考えても答えの出ないその出来事にどう対処しようか考え込みかけた時。

 その思考を読み取っていたかのようなタイミングでローリーからの電話がかかってきた。


「はい…」

「お~お~、暗い声してんなぁ。その様子だと、今の報道見てたな?」

「…社長、あれはどういうことですか?あなたの差し金だとか言わないですよね」

「俺がここにいて何を操作できるってんだ?まぁいい。それより今日のお前のスケジュール、22時であがりだと社から聞いたが間違いないか?」

「…? はい、俺が聞いているのもその予定ですが」

「ふむ……。それなら、蓮。お前、その後ここへ来い。クーもその時間前後でここへ来る予定だからな。じっくり親子で話すといい」

「…何を話せと言うんです?」

「あぁ?お前、この状況聞いて放置か?あきれてものが言えんわ」

「俺が何を話せるっていうんです?」

「……それはお前が決める事だろう?正直今回クーが何を思って来日したのかは俺にもわからん」

「え?あなたと示し合わせてのことじゃないんですか?(どうせまた二人で何か企んでるものだと…)」

「お前な…どこまで俺を悪者にすれば気が済むんだ?今すごく俺に対して失礼なことを考えただろ」

「…(相変わらず鋭いな)いえ別に(悪事云々に関しては、実際に違うとは言い切れないと思うんだが…)」

「その間が言いたいことを言ってるようなもんだろーが。ま、それは置いといて、だ。そういえばこの来日を奴が決める前に、お前の近況として最上君のことは多少話をしたな」

「んなっ!何を話したんですっ?」


 やっぱり何か企んでいたんじゃないか!と言いたいところをぐっとこらえて、蓮はローリーの次の言葉を待つ。

 すると、思ったより真剣な声での返事が返ってきた。


「お前な。俺が気付かないとでも思ったか?」

「え……」


 ぎくり、と蓮の体が揺れた。見られていないのが幸いだが、嫌な汗が背中を流れ落ちていくのが分かる。

 そう、蓮は非常に大事なことをローリーに隠していたのだ。


「お前からの報告はないからきっと情けない付き合い方だとは思うがな。だから濁してクーに伝えてやったんだよ。最近二人が陰でこそこそ付き合いだしたらしい、とだけな」

「な…な…」

「ま、俺の要件はそれだけだ。じゃぁ、22時にまたな」

「ちょ、しゃちょ…う…って、もう切れてる」


 そうして蓮は、社が次の移動で呼びに来るまでの間、控室で切れた携帯片手に呆然と立ち尽くしていた。




++++++


 「社長、敦賀さまがお越になりました」


 トナカイの着ぐるみを着た褐色の肌の執事が恭しくローリーに告げる。

 サンタの格好をしたローリーが頷き通すように指示を出すと執事の開けた扉から飛び込まん勢いで蓮が部屋に入ってきた。そして、ローリーと執事の格好に対しての突っ込みもなく開口一番 「あの人はっ!」 と叫ぶように言う。衣装に対しての突っ込みがないことに少々すねてみたものの、蓮の迫力にそれどころじゃないか~、と残念そうにため息をつくと、ローリーは蓮の問いにのんびりと応じた。


「何だ、蓮?そんなにあわてなくてもクーの奴は逃げも隠れもしてないぞ」


 ホレ、と指で示した先にはソファーで寛ぐ…もとい、食事しながら寛ぐクーの姿があった。


「ほほ、ふぇん、ひはふぁ(おお、蓮、きたか)」

「…口にものを入れたまま話さないでいただけますか」


 ファンが見たらどれほどの人たちが幻滅するだろうかという勢いで料理を口に運んでいたクーに、冷静に蓮が言うと、クーが 「悪い悪い」 と言いながらあっという間に口中を空にして蓮を見た。


「すまん、さっきまで仕事で食事もろくに口に入れられない状況だったんでな」


 からからと余裕の表情で笑うクーに、蓮は苛立ちを隠さない表情のまま詰め寄ると、いきなり本題に入った。


「単刀直入に申し上げます。昼間の空港での騒ぎ。いったい何のつもりですか」

「ん?私が何かしたと?」


 にやり、と意地悪く微笑むその顔に、蓮は直感的に何か企まれていることを感じ取った。


「何を企んでいるんです?」

「何も企んだりはしてないさ。愛しい子供たちに会いに来ただけ、だからな」


 お互いに表面上は笑っているが、目は互いを探り合い笑っていない。漂う緊張を傍からローリーが見つめ、にやりと笑う。すると、蓮が先に動いた。


「この際なので言っておきます。変に彼女にからむのをやめていただけませんか?」

「…彼女って?」

「言わなくてもわかっていらっしゃるでしょう?キョーコ、最上キョーコです。彼女はこれからの女優だ。こんなところで潰してほしくない。今の彼女に貴方の存在は危険だ」

「だから、って自分たちの付き合いを棚に上げてそれを言う、か?ヘタな嫉妬は見苦しいだけだぞ」

「……っ」


 ふふん、と蓮の言葉はクーに一蹴されて、蓮はぐ、っと言葉につまる。

 確かに、ごく最近付き合い始めたばかりの二人であるが、自分たちのことが公になれば今のクーの話題どころではない。


「守るつもりも、守れる自信もないなら、先に私が彼女を庇護下に置かせてもらう。必要以上に関与するつもりはないが、少なくともコソコソしている君よりは確実に彼女を守ることができるだろう。その布石の一手はすでに今日の空港で打ってきたが、それを悪しざまに広めるほど世間は馬鹿じゃない」

「それは…あなたがすることだから…」


 いくらハリウッドに拠点を置いているとはいえ、クーの日本での人気と支持は絶大なものがある。悔しいが、蓮ではまだその域に追いついていない。

 過去に、その力の差でどれほど自分が追い込まれ、潰されそうになってきたか。

 その思いを掘り起こすようなクーの言葉に、蓮は自分の無力さを実感して俯く。

 そんな蓮を見つめるクーからは、つい先刻までの探り合いを楽しむ表情は消え、父親としての威厳と慈愛をたたえた視線が送られていた。


「そう、それすら私の力だよ、久遠」

「………!」


 その言葉と視線を受けてはっと顔をあげる蓮。そして敦賀蓮としてではなく、久遠・ヒズリとして…クーの息子として相対する。


「――― とう…さん」

「お前は納得しないかもしれないが、私は私の力で彼女を守る。そのためには私の娘として正式に養子として迎えいれようかと…」


 しかし 『養子』 と聞いた瞬間、蓮の先刻までの感情が再燃した。


「勝手なことを言わないでください!あなたの娘にするのなら、俺が…!」


 その言葉を冷徹に聞き流すクー。そして、蓮が過去を未だ引きずっている事実を突きつけた。


「自分の正体すら言えないででいるお前に何ができる?私の息子だと…久遠・ヒズリたということを、どうせまだ秘密にしているんだろう?」

「別に隠しているわけじゃ…」

「ならば言えばいいだろう?言えないならこのまま明日にでも手続きを取るぞ。そんな生半可な思いなら、私のほうがよっぽど深い愛情があるというものだ」

「愛情はそんな風に計れるものじゃないでしょう。ですが、わかりました。この後すぐにでもこの事実を伝えますよ。大体、貴方の勝手で彼女と兄妹にされたらかなわない。俺は彼女を…最上キョーコを愛してる。兄妹なんかでいられるわけがない!誰にも渡さない、彼女は俺が守りたい、只一人の女性だから!!」


 一気に蓮がそう言い切ったところで、ごほん、とわざとらしいローリーの咳ばらいが聞こえ、はっ!と我にかえった蓮がローリーを見る。何か仕組まれている、と思ったのにクーに乗せられてローリーの存在を忘れていた。


「あー、蓮。盛り上がっているところに悪いが、一人客人を待たせているんだ。客人を呼んでもいいか?」

「ま……さか…」


 興奮から一気に青ざめる蓮に、ローリーとクーがニターっと笑い蓮を見る。

 執事が隣の続き部屋のドアを開けるとそこに立っていたのは、蓮が今一番会いたくて、でも自分の情けない姿を見られたくなかった相手。


「キョーコ…」

「敦賀さん…ううん、コーン…が久遠さんで、敦賀さんだったんですね」


 はらり、とキョーコの頬に涙が伝うのを見た蓮がキョーコに駆け寄りぎゅうっと抱きしめる。


「黙ってて、ごめん。嘘をついてたつもりはないけど、結果的にそうなってたよね。本当に、ごめん」


 キョーコは蓮の謝罪にふるふると頭を振って、あなたは悪くない、と何度も繰り返した。

 それを聞いて、蓮がそっとキョーコを抱きしめていた手を緩め、キョーコの顔を覗き込んでことん、と首を傾げるようなポーズをとる。


「これでもう、隠し事はしてないよ。前に言ったよね。俺の隠し事をもし君が受け入れてくれたら…、って話」

「え…えぇ。で、でも今ここでその話をするのは…」

「してもしなくても、この人たちには関係ないよ。もう決定事項だから」


 しばらくの逡巡のあと、キョーコは恥ずかしげに俯いて小さくこくりと頷いた。

 それを見て蓮がこれまでにないほどの破顔を見せる。


「この先、何があっても君を俺が守りたい。君のそばで守らせてもらえますか?最上キョーコさん」

「本当に、私で後悔しないですか?」

「あたりまえだよ」

「なら…」

「ん?」

「私にも、敦賀さんを守らせてくださいね」


 最上級のキューティーハニースマイルを見せられて、蓮はここが社長宅でなければ…と、崖っぷち理性を総動員してその場でキョーコを押し倒すことは思いとどまった。しかし、それを見ていた二人には当たり前だが十分にバレバレである。


「帰りの道中だけはやめろよ、蓮」

「嫁入り前のキョーコが明日の仕事に出られないようなことがあれば、即私の養子にする手続きをとるからな」


 二人からの祝福なのかつっこみなのかわからない言葉を受け、真っ赤になりながらぺこりと頭をさげるとそそくさと家路につく蓮とキョーコ。

 その二人が微笑み合って歩いていく姿に、ローリーとクーがひそひそと話す。


「明日の記者会見会場は?」

「T国ホテルの会見場を予定してる」

「式の日取りは、私が出られる日に頼む」

「当然だろう?ジュリの予定もあるから多少無理してもらうと思うが」

「そんなものは当たり前だ。私の愛しい子供たちの式なんだからな」


 スケジュールをあれこれ考え始めたクーに、やれやれ、といった様子でローリーがため息をついた。


「最上君もお前たちのところに嫁ぐんじゃ、色々大変そうだな」

「ボスが仕掛けておいてそれはないだろう?そもそも、久遠の妻となって幸せにならないわけがない!私とジュリと久遠、3人から愛されるんだから」

「それが重い、つってんだろーが」

「なんだと!そんな偽物サンタな恰好をしたボスに言われたくない!」

「この格好が羨ましいならそう言えばよかったのに。すぐにでも準備させるぞ」

「そんな恰好をしなくても、あの二人には今一番の幸せをプレゼントしたんだからいいんだ!」

「……まさかお前、それがしたくてこの時期に向こうの監督脅してまでこの来日を決めたんじゃ…」

「当たり前じゃないか!こういうことは、記念すべき日に成されなくては意味がない!そう教えてくれたのはボスだろう!? 」


 後の苦情処理が大変になりそうだなー、と思いつつも、ローリーはクーの考えに賛同するのだった。



 こんないたずらなサンタたちに翻弄されるとは知らず、今宵幸せな時間を過ごす蓮とキョーコなのであった。

 




おしまい。



゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

主役は何だかクーとローリーに持ってかれた感のあるものになってしまいました…。

こんなオチになってしまいましたが、お気に召したらぽちっとしてやってください。

ついでに気が向いたらコメしてやってくださいvv


あと1時間でキョコたんのお誕生日が終わってしまう~!そしてクリスマスも…。







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