皆様こんばんは。
週末更新できずに、週明け更新でございます
今回、キリにしようと思った場所が意外に遠く、へんなところで切らざるを得ませんでした
切らないと、1回の量が膨大になるので…。
毎回ごとに長くなっていっているような気がするので、携帯ユーザーの方には真に申し訳ないです。
あ、でも今ってスマホなら大分違うのかな?
(持ってないので分からないのです )
そんなわけで、少しきりのよさそうなところで切ってみました。
だから、ひょっとしたら次の更新が週末でない所でやるかも、です。
ま、予定は未定なのでこのくらいにして。
では、お付き合いいただける方は以下からど~ぞ~
―――――――――
薄い青の不思議な空間。
キョーコはそこを知っていた。
十数年前に一度だけ訪れた、あの、お日様色の髪と、空の色の寂しい目をした少年がいた場所。
―― そう、か…私、久遠の名前を呼んでしまったから…
蘇る過去の記憶。
『今教えた俺の名前を、呼んだり、教えたりしたら、君はその場で儚くなって、俺に魂を渡さなきゃいけない。だから、俺の名前だけは絶対に人に言ってはだめだよ。それから、自分で 『死』 を選んではいけない。これが約束』
―― そう、約束したわ。
『でも、もう一つだけ教えておくね。もしも、自分の命と引き換えにしてでも何とかしたいことがあった時には、俺の名を他の者が聞き取れるように呼んで。…本来俺は、人の世界に干渉することを禁止されてる。だけど、契約を交わした 『人』 に呼ばれれば、一度だけ。その力を貸すことができるから』
―― だから、呼んだの。
『けれど、それは自らの命を捨てる事。だから、約束が果たされなければ、君は永劫に俺に魂を縛される。…異能の者が現世にいきることは容易くはない。いずれ、この契約を恨みたくなる日もくるかもしれない。けれど、覚えていて。苦行の “現世” に送り返す以上、俺は君の助けとなれるよう、もっと力をつけるから。君が人としての生を全うすれば、俺の呪縛からも放たれて、自由になれるから。だから、生きて…』
―― 何故か寂しそうにそう言ったわね…
『でも、あなた…さみしそう』
『…え?』
『わたし、そうなってもいいよ?でも、約束、だものね。頑張って生きるわ。だから、その後に久遠と一緒にいたい…。だめ?』
寂しそうな顔が、驚いた顔になって、それからすごく綺麗な笑顔になった。
『ありがとう…』
ありがとう、って言ってもらえたことは、はじめてな気がした。だから、絶対に約束を守るつもりで、でも、いつか久遠の元へ来られることを祈りながら毎日を過ごしてきた。
―― そう、だから儚くなることに抵抗はなかったの。
そうなっても久遠の元へ来れると信じることは、何よりも生きる支えになったから。
―― なのに、約束を守れなくてごめんなさい。
久遠に魂を縛されることはキョーコにとって怖くもないし、後悔もしないことだろう。蓮に会うまでは、その身も心もすべて一緒に持っていこうと思っていたのだから。けれど…。
―― 蓮様にうけいれてもらえないことは分かってるの。でも、心だけ。それだけは蓮様のもとにおいていくことを許して…
妖- あやかし- 恋奇譚 10
~蓮と久遠の章~
過去の記憶を呼び起こすことは、はっきりとできた。
だが、体の感覚がはっきりしない。肉体があるのかどうかすら怪しい気がする。
ただ、久遠の名を呼んだ以上、自分が生者でなくなったことは確かだろう。
魂だけの存在、というのはこのようなものなのだろうか、とキョーコはぼんやりと思った。
この空間に自分がいるのか、見えているのか、感じているのかすらわからない。
どのくらい時間がたったのだろう。
ひたすら静かな空間だと思っていたそこに、ふと、誰かの声と思われる音が聞こえだした。
「・・・・から、無理があると申し上げたでしょう?」
「しかし晴明。奴は内裏のあんなところまで手を出してきたんだ。放っておくわけにもいくまい?」
「ご心配には及びませんよ。内裏とはいえ、我々の世界ですからね。それに、あ奴…レイノとかいう道士は以前から道満に加担していたようですが、今回の失敗でどうやら姿を眩ましたようですし」
「ならば尚更…」
「さっさと消えたところをみると、私があの場で呪詛返しをしたことで自分の波動が捉えられたことは理解できたようです。術者としてはまぁまぁですが、ああいう手合いを仲間にする危険を感じて道満も少しは懲りたと思いますよ。ま、次に同じ手でくることはないでしょう。用心に越したことはありませんが、ね」
「たしかに…裏で手を引かれていたとはいえ、膝丸をあのような形で使われるとは…」
「貴方にしては珍しい失態でしたね。たかだか人の子一人にさされ…っと」
会話が途切れたことに、自分の覚醒が悟られたのだとキョーコが理解するのに時間はかからなかった。目は開かないが、そこに久遠と晴明が(何故か)いて、こちらを見たことがわかったからだ。
「・・!・・・・・・!」
久遠を呼ぼうとしたが、声が出ない。やはり自分の体はなくなったのか、とキョーコが思っていると、それに気付いた久遠が優しく言った。
「生身で 『こちら』 に来ているからね。体がちゃんと動かないのはそのせいだよ。無理に声にしなくてもいい。思ってくれれば、言葉は届くから」
≪え?そう、なの?≫
「そうだよ。ほらね」
≪……ごめんなさい≫
「?何?どうしたの?」
急に謝るキョーコに、不思議そうに久遠が問いかける。
≪久遠…ごめんなさい。約束、守れなかった…。でも、でも私、どうしても蓮様を助けたかったの!≫
「・・・・・・・」
久遠の沈黙に伴い、辺りがピリピリとした空気を纏う。キョーコはそれを、約束を守れなかった自分に対しての久遠の怒りだと思ったらしい。躊躇しながらも必死に久遠に話しかけた。
≪名前を呼ぶことが貴方との約束を破ることになるのは分かってた。でも、あの時、貴方を呼ぶことしかできなかったの!!≫
「…そう。それならなおさら、ここに来たくはなかっただろう?」
≪違うわ。私が言いたいのは、約束を破ってしまったことだけよ。だって、私はここに来ることをずっと望んでいたんですもの。ここには…貴方がいるから≫
「え…?」
再びの沈黙。しかし、見えないものの、キョーコは久遠が狼狽えているような気配を感じて不思議に思っていると、くすくすと晴明が笑うのが聞こえてきた。
「おやおや。これは久遠の分が悪いですねぇ。キョーコ姫は本当にお優しい…」
≪晴明様…≫
からかうような晴明の口調に、キョーコは先刻から気になっていたことを尋ねた。
≪晴明様、そういえば久遠とお知り合いだったのですか?≫
「ふふふっ。知り合い、と言えば知り合いですよ。…ところで久遠、貴方この子に何も話していないのですね?」
「っ!晴明ッ!」
「はいはい。余計なことは申し上げませんよ。それは貴方が話すべきことですからね。…では、私はこれであちらの収集をつけに参ります。久遠、貴方もお早く」
「分かっている。…あと少し、あちらを頼む」
「承知しておりますよ。ではまた。キョーコ姫も…」
≪あ、はい≫
音もなく晴明の気配が消えて、本当に久遠との二人だけになったことを感じたキョーコは、遠慮がちに久遠へ話しかけた。
≪先ほどは…お話を中断させてしまったみたいでごめんなさい≫
「ん?あぁ、晴明との話のこと?心配いらないよ。…ところで、まだ視覚も戻っていないみたいだね」
≪ええ。でも、何となく感覚として捉えられるから今、不自由な感じはしないの。体も動かないけど、こうしてお話しはできるし。そうだわ!…あの、…蓮様はどうなさったの?私、あの時何が起きていたのか、はっきりわからなくて。…そう、息、してらっしゃらなかったの!≫
焦ったように言うキョーコに、何故か久遠は苦笑いのような複雑な表情をして腕を組んだ。
「~~~。う~ん…。どう説明しようかなぁ」
≪???久遠?≫
視力の回復していないキョーコには、久遠の複雑そうな表情を見て取ることはできなかったが、代わりにその言葉の様子から久遠が困惑したような状況であることを読み取った。
どうしたのだろう、とその後に続くであろう久遠の言葉を待つ。
「あのね、キョーコ。『あれ』 はキョーコにとってどんな存在?」
≪…?『あれ』 って…まさか!蓮様のことっ?どういうこと、久遠!いくらあなたでも蓮様のことを 『あれ』 呼ばわりするなんて!!≫
待っていた久遠の言葉に、思わずキョーコが憤慨する。それに対して久遠は慌ててキョーコを宥めすかした。
「あぁ、ごめんごめん。悪気はないんだ」
―― “蓮” に対する嫉妬がなかったとは言わないけどね…
心の声を隠して久遠は続ける。
「…キョーコ、今から言うことをよく聞いてね」
≪なに?≫
「その、“敦賀大納言卿” …つまりは君の言う “蓮様” 、なんだけど」
≪ええ≫
「それ、……俺、なんだよね」
≪…は?≫
「だから…君の世界での俺の仮の姿、っていうか。俺であって俺でない者」
≪え?え?えぇぇ~!? それって、れ、蓮様が久遠で、久遠が蓮様、ってこと!?≫
つづく
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
…『自分(蓮)』 に嫉妬してる久遠
今回はこれと、道満を出したくて書いたようなもの?かな。
思ったよりキョーコの回想に時間がかかって玉砕。
久遠の活躍を期待していた皆様、ごめんなさい。
そして、蓮サマ復活まで至らず…。がっくし
切り所が難しいと思う今日この頃です。