【政治部デスクの斜め書き】

 鳩山由紀夫前首相が参院民主党の反乱により退陣に追い込まれ、何が何だか分からないうちに代表選が行われ、あっという間に菅直人新首相が誕生した。これにより、内閣・民主党支持率は「V字回復」を果たし、つい10日ほど前まで悲壮な面持ちだった民主党議員はみな意気揚々とし、逆に自民党議員はまたも奈落に突き落とされた。

 菅首相の登場で民主党がこれほど息を吹き返したのはなぜか。

 一つは前任の鳩山氏が憲政史上に残るほど愚劣な宰相だったことが大きい。「命を守りたい」と繰り返すが、夢想するばかりで具体性はゼロ。実母から毎月1500万円の「子ども手当」を受け取っていたことがバレても「知らなかった」とシラを切り、安全保障の根幹に関わる問題でさえも連日のように発言はブレ続け、ついに米国に「ルーピー」呼ばわりされた。このままでは日本人が半世紀以上かけて培ってきた国際信用力は地に堕ちてしまう。鳩山氏を除く多くの日本人がそんな危機感を感じていたはずだ。

 では、菅氏はどうか。市民活動家から政界に飛び込み、ウン十年も苦労を重ねてきただけに、鳩山氏のような甘ったれたところはない。所信表明演説で打ち出した「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の一体的な実現を唱える「第三の道」論も、「責任感に立脚した外交・安全保障政策」も、「戦後行政の大掃除」も、面白味はないが、手堅く現実的に聞こえる。

 ただ、極めて「自民党的な言い回し」と言えなくもない。麻生太郎元首相が唱えた「着実な経済成長」「安心できる社会保障」「誇りと活力ある外交」とどこが違うのか。

 また、「手堅く現実的」ということは「甘ったれで非現実的」だった鳩山政権の否定に等しい。

 新政権発足のドサクサの中で、再任された長妻昭厚生労働相は平成23年度からの子ども手当の満額支給(月額2万6000円)を断念すると表明。同じく再任された前原誠司国土交通相は「公共事業費はもう減額しない」と宣言し、財務副大臣から昇格した野田佳彦財務相は財政健全化に向け、「抜本的な税制改革を行っていく」と明言した。

 これらの発言を裏打ちするように、11日の民主党の政権公約会議(議長・菅首相)では、参院選マニフェストに「消費税を含む税制抜本改革を行う」と明記することを決めた。「コンクリートから人へ」のスローガンは消えるという。

 日本の税財政事情を考えるといずれも妥当な判断だといえる。

 だが、ちょっと待てよ。予算の組み替えと税金の無駄遣いを改めることで「16・8兆円の財源」を生み出し、子ども手当(5・4兆円)、農家の個別所得補償」(1兆円)、高速道路無料化(1・3兆円)などに充てると強弁し続けたのはどこの政党だったか。

 しかも菅首相は国会の会期延長をやめ、6月24日公示、7月11日投開票で参院選に踏み切ることを決めてしまった。政権のボロが出ないうちに参院選をやってしまいたいとの思惑が見え見えだが、これに伴い、公務員幹部人事を一元管理する国家公務員法改正案も、国家戦略局を創設するための政治主導確立法案も、温暖効果ガスの25%削減を明記した地球温暖化対策法案も、労働者派遣法改正案も、廃案もしくは継続審議となる。いずれも鳩山氏が「官僚の手から国民の手に政治を取り戻す」などと言って内閣の最重要課題に掲げた法案ではなかったか。

 米軍普天間飛行場移設問題では、菅首相は「5月末の日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に尽力する」として、沖縄県辺野古崎地区への移設に向け協議を進める構えだ。普天間問題は鳩山氏が迷走の末にたどり着いた結論ではあるが、先の衆院選で鳩山氏は民主党代表として「最低でも県外」と繰り返し訴えており、少なくとも政権交代時の主張は全否定したことになる。そもそも菅首相が唱える「現実主義を基調とした外交」「日米同盟を外交の基軸とする」と明言すること自体が、鳩山外交の否定ではないか。

 つまり、菅政権は、鳩山政権を真っ向から否定することで人気を博しているわけだ。

 だが、菅首相は、鳩山内閣で筆頭閣僚の副総理を務め、8カ月にわたり、鳩山氏の政策を是認し、あらゆる閣議で署名したことをお忘れか。しかもいまも鳩山氏を「盟友だ」と公言しているではないか。まさか「内心は反対だった」とは言えまい。

 枝野幸男氏を幹事長に、仙谷由人氏を官房長官に起用し、「脱小沢」路線を標榜しているようだが、これもおかしい。菅首相は先の衆院選まで党代表代行を務め、鳩山、小沢の両氏とともに「トロイカ体制」で党運営に当たっていたではないか。鳩山政権で一度でも小沢氏を批判したことがあったか。何より、今年の元日に、日本酒を持って真っ先に小沢邸に駆けつけたのは菅首相ではなかったか。そう考えると小沢氏が童話「泣いた赤鬼」の青鬼に見えてくる。

 「1丁目1番地」とこだわってきた郵政改革法案を先送りされ、閣僚を辞任した国民新党の亀井静香代表も被害者の一人だろう。郵政改革法案の是非はともかく、菅首相はつい一週間前に亀井氏に「1丁目1番地とは言わず、100丁目100番地までともに行きたい」と明言し、郵政改革法案は「今国会で成立を期す」とする連立合意を交わしたはずだが、舌の根も乾かぬうちに反故してしまった。鳩山氏の「プリーズ・トラスト・ミー」事件を彷彿させないか。ここまでコケにされた国民新党が連立離脱しないことが不思議でならない。

 結論を言おう。菅政権の本質は「約束違反」であり、「自己否定」であり、「裏切り」である。そう言われたくないならば、今の外交・内政政策を掲げ、「信」を問うしかない。(石橋文登) 

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 札幌市で開催されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易担当相会合は6日、先進13カ国・地域の貿易、投資の自由化の進展を確認したなどとする議長声明を採択して閉幕した。域内の地域経済統合や成長戦略なども議論を継続し、11月に横浜市で開催される首脳会議に示すことが盛り込まれた。

 議長声明とは別に、停滞している世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)に関し、早期妥結と保護主義の抑止に向けた閣僚声明をまとめた。

 貿易相会合にはアジア太平洋地域の21カ国・地域の閣僚が参加。6日までの2日間で、貿易投資の自由化を規定した「ボゴール目標」に関して先進13カ国・地域を対象にした達成度の評価、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想を中心とする地域経済統合の加速、域内の成長戦略などを議論してきた。【立山清也】

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 宮崎県の口蹄(こうてい)疫問題で、同県と政府の現地対策本部は24日、牛や豚など家畜へのワクチン接種が同日で全体の7割程度まで進み、25日中にもほぼすべての対象農家で接種が完了する見通しであることを明らかにした。東国原英夫知事は24日、関係市町長、農業団体と協議し、殺処分した家畜を埋める用地確保の問題を中心に、殺処分のプロセスや早期出荷、農家の経営再建などについて協議した。県の考えを近く公表する方針だ。
 ワクチン接種は22日に開始し、約10万頭に及んだ。獣医師79人、79チームで作業を行っている。発生地から10キロ圏内の家畜はすべてワクチン接種の対象だが、対策本部の関係者は強硬に接種を拒む農家が現れることを懸念している。
 東国原知事らによる協議では、家畜を埋める用地を県が購入したり、県有施設などを活用したりした場合、既に自己負担で用地を確保した農家が不公平とならないよう配慮すべきだとする意見が出たもよう。
 東国原知事は協議後、記者団に対し「県が用地を買い上げる場合、国がどれだけ(費用を)持ってくれるのか、協議しなければと思う」と述べ、国にも負担を求める考えを明らかにした。 

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