真面目な研究がNATROMの首を絞める。-4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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3)推奨グレード、推奨度


エビデンス・レベルに加えて、この推奨の確信度合いについてもわかりやすいように分類したものが、「推奨グレード」と呼ばれるものである。

このグレードの付け方はガイドラインによって異なるが、通常はA~Dに分類され、グレードAはある治療法を行うことを「強く勧める」、Bは「勧める」、Cは「勧めるかどうかあまりはっきりしない」、Dは「行わないように勧める」と分類されている。

ただし、すべてのガイドラインがこの定義を採用しているとは限らないので、それぞれのガイドラインの注意書きを読む必要がある。

4)推奨グレードとエビデンス


一般にエビデンス・レベルの高いことがらほど、確信をもって推奨できるとされている。

しかしながら、推奨グレードはエビデンス・レベルと必ずしも1対1に対応するわけではない4。エビデンス・レベルは、研究のデザインを中心に決定され、アウトカムの適切性、測定の適切性、効果の大きさ、効果と弊害のバランス、対象者の適切な選択などについて総合的に検討したうえで推奨の強さ(推奨グレード)を決める必要があるからである。

つまり、高いレベルのエビデンスがあれば信頼できるというわけではない。例えば、研究デザインはよくても海外の研究しかなくて、遺伝的な違い等から日本人にはあてはまらないと考えられていることがらなどもある。

逆にエビデンス・レベルの高い研究がないからといって知見が信頼できないわけではない。

上述のとおり、コインを振った表裏で治療を割り付けて検証するランダム化比較試験はエビデンス・レベルが高いとされるが、コインなどで治療を決めることが倫理的に許されるのは、研究前に治療効果が確定しない場合のみである。

例えばタバコを吸うと肺がんが増えるかどうか、ということについては、タバコを吸う群と吸わない群をくじ引きで決めることは許されないため、そのような研究は不可能である。このような場合であっても、さまざまな状況の観察研究で一致した結果が出ていて、生物学的な検討からもその結果を支持すると考えられる場合には、十分推奨に耐えると考えられる。


5.ガイドラインについての注意


1)強制ではない


「例外のない規則はない」といわれるがガイドラインの推奨は「規則」ですらなく、比較的緩やかな推奨であるといえる。したがって、ガイドラインとは診療を縛るものではない。ガイドラインは、現場において医療者と患者が参考にしながら診療方針を考えていくもの、いわば診療の「出発点」であって「到達点」ではないことに注意が必要である。

そもそも言葉の定義として、「ガイドライン」とは対象となる患者の60~95%にあてはまることがらを示すものであるという意見もある4, 5。

2)推奨は時代とともに変化する


医療は進歩するものである。

そのため、ガイドラインに記された標準や推奨も時がたつにつれて変化する。

ある研究によると、ガイドラインの約半数が6年弱で時代遅れになるといわれている6。

3~5年ごとに定期的に改訂されるべきものであるが、大変な労力を要するために必ずしも改訂が可能とは限らない。

そのため、古いガイドライン推奨には注意が必要である。海外のガイドラインでは期間を定め、食べ物の賞味期限のように、「○年経過した後は自動的に無効とする」と明記されているものもある7。


以下省略