Wikipedia
・線維筋痛症(せんいきんつうしょう)は、全身に激しい痛みが生じる病気である。 英語ではFibromyalgiaもしくは Fibromyalgia Syndromeと呼ばれている。略語はFMSやFMが使われることが多い。
原因は不明であり、通常の医師が行なう血液検査では異常が現れない。CTスキャン、MRIを検査しても異常を発見できない。
また、この病気が診断できる特別な検査は今の所なく、治療法も確立されていない。
男性より女性が7倍と多く、中高年に発生率が高いと言われている。
しばしば膠原病などの自己免疫疾患を併発する。
概要 [編集]
全身の耐え難い恒常的な疼痛(慢性的、持続的に休みなく続く広範囲の激しい疼痛)を主な症状として、全身の重度の疲労や種々の症状をともなう疾患である。
症状は季節的変動、日中変動があり、全身移行性である。常時全身を激痛が襲い、慢性疼痛の様を呈する。
僅かな刺激(爪や髪への刺激、服のこすれ、音、光、温度・湿度の変化など)で激痛が走ることも特徴である。患者の90%以上が不眠症状をもつ。
痛みと疲労感、不眠により、患者は日常生活が著しく困難になる。
症状は多岐にわたり、主なものとして関節と全身のこわばり、疲労感、全身のひどいだるさと倦怠感、四肢の脱力、不眠と睡眠障害、頻尿、下痢、月経困難、生理不順、過敏性腸症候群などの機能性胃腸障害、微熱、頤神経麻痺、筋力と運動能力の低下、筋肉の激しい疲労、むずむず脚症候群が挙げられる。
重度では嚥下困難を起こすこともある。
起き上がれず、歩けなくなる、などの身体症状の他、悪夢、焦燥感、不安感、抑うつなどの精神的症状やうつ症状、判断力、思考力の著しい低下、記憶を失うほどの痛みにより認知症のように記憶がなくなる深刻な症状も報告されている。
足の痛みで歩けないという訴えも多く、足、手の先の冷感や灼熱感、ドライアイ、リンパ節の腫れと痛み、四肢こわばりとだるさ、関節痛、レイノー現象、光線過敏、脱毛、シェーグレン症候群、自覚的な関節の腫れなどの膠原病の症状を訴える患者もいる。
乾燥症状も有意に見られ、喉の渇き・声がれなどの症状も多い。
合併症/リウマチ/膠原病/脳脊髄液低下症/他疾患 [編集]
整形外科系疾患・リウマチ・膠原病・脳脊髄液減少症などの疾患に加えて、線維筋痛症を合併して生じることもある。
これらの場合は、自立して生活するには、かなり苦痛を感じていることになる。
健康な時と比較すると、身の回りの世話なども痛みにより著しく制限されてしまう事が患者の苦痛として伝えられている。
日常生活を困難にするその他の慢性疼痛 [編集]
首から肩にかけての痛みやしびれ、上肢の痛みやしびれ、腰背部の疼痛やこわばり感、臀部から太ももの痛みと張り感、膝から下腿の痛みやしびれ、眼の奥の痛み、口腔の痛み、頭痛などの様々な疼痛症状が起こる。
これらは対称性にではなく全身に散在して出現することもある。 全身移行性である。
結節・鎖骨周辺の痛み [編集]
患者の一部に検査により核抗体反応が高い場合膠原病、リウマチが疑われる。リウマチは膠原病カテゴリに含まれる病である。
精神的及び身体的ストレス、気候、環境によって疼痛箇所が移動したり、疼痛レベルが変化することもある。痛みを訴えるが、診察しても患者に外傷がないため、正しく診断に結びつかないケースが問題になっている。
検査してもレントゲンや血液検査での炎症マーカーは出ない。
このため、患者は様々な症状を抱えて苦しんでいたとしても、目に見えない痛みが理解されない事になり患者を余計孤独にさせる。
医療側との壁は厚く、しばしば怠け病や詐病と周囲に誤解される事も患者にとって深刻な問題である。
このため、早急に適切な病名診断を正しく受けられることが求められている。
患者の激痛・痛みによる発作 [編集]
ストレスでパニック障害を起こす事もあるが線維筋痛症と理解されない間は精神疾患と誤診されることも多い。
どこの医療機関でも痛みに効く薬が出ないため、患者は病院を転々とすることになることも多く、最高15回も病院を変えてきたドクターショッピングのケースも報告されていることから、いかに診断が適切にされていないかがわかる。
仮面うつ病、更年期障害、自律神経失調症、身体表現性障害などの疾患や、単なる不定愁訴と誤診される場合も多い。
患者は始終どこかの部位を襲う痛みのため、寝たきりになってしまう事もある。
適切に早期発見、診断、治療されれば予後は悪くないが、治療に結びつかない場合は予後は良くない。
働けない生活に変わる患者の実態 [編集]
体重の重みでも座位が苦痛、通勤では足が痛むなどの症状により、仕事を従来通り続けることが困難になるケースが多い。
結果、失職を余儀なくされ、経済的に困窮しているケースが多い。
保険適用外の痛み緩和のペインクリニックなどの治療に費用がかかり、これが患者と家族をさらに経済的困窮に追い込んでしまう事が深刻な問題である。
QOLとADLは末期がんの患者同様の病である。患者の痛みが理解されないことで家庭内不和、離婚、心中や自殺を図るケースも報告されている。
発症までの期間、なんとなく風邪、なんとなくだるい、などの不定愁訴が続き見逃され、診断までに4-7年経過することが多い。
トリガー(きっかけ)となるイベント(離婚・愛する者の死・介護などのストレス・職場でのいじめなどの対人関係ストレス・手術・外傷・出産・交通事故)に適応できない時に著しく悪化して激痛へと進むケースが多い。
痛みが強まってからの予後は、適切に診断され早期発見できないままでは、日常生活が送れなくなる患者も少なくない。