NHKのFM放送で、リリースされたばかりのCDを作曲家の吉松隆が紹介
している番組をたまたま聞いた中に、ミャスコフスキーのチェロ協奏曲があ
った。作曲家の名前もこの協奏曲自体も知らなかったけれども、印象に残
る曲であった。
ニコライ・ミャスコフスキーは1881年ポーランド生まれで、プロコフィエフと
ほぼ同時代の、しかも2人は43年間にも及ぶ友好関係を保った作曲家だ
ったそうだ。
さて、第一楽章は弦の単純なリズムに乗って、ファゴットの低音でとてもメラ
ンコリックなメロディで厳かに始まる。 メランコリーであると同時に、なんとも
気品がある、というか神々しくさえある。最初から心惹かれる旋律だ。
それが弦に、そしてチェロの独奏へと継がれていく。それは次第に大きなうね
りとなって盛り上がるけれども、それは一貫して悠然と、そして茫々とした感じ
なのだ。そこが私は好きである。
後半に、最初のファゴットのメロディーがチェロで再現されるが、それは木管
のか細い対位旋律を伴う。これがノスタルジックな気分をそそり、なんともい
い感じで私の大好きなところだ。
そして終わりは、非常に高音のチェロ・・・・多分{ミ}に弦の多分{シーラー}
を伴って静かに寂しく閉じる。この終わり方の和声・・・作曲法で何か名称が
付けられていると思うが・・・が非常に印象的である。
第2楽章は、一転して荒々しい表情で始まる。チェロも同調するようにやや早
い旋律で続いていくが、やがて中間部のアンダンテに曲想は変わる。
ここはチェロが高音で哀愁を帯びた旋律を歌う。これはとても分かり易いメロ
ディだが、哀れで、もの淋しい歌だ。しかし、それも次第に高揚して複雑な様
相を呈して進行する。
これが一段落して静まると、最初の早く荒々しい主題が今度はチェロで再現
されるが、中間部の哀愁味の旋律とも絡むようになる。
どう表現していいのか、ヴィヴァーチェのテンポには荒々しさ、烈しさもあるが、
決して刺激的ではない。何か夢見心地のようなな感じでもある。
解説を見ると、「ドヴォルザーク風な幸福感とほとんど恍惚とも呼べる感情が
ほとばしり・・・・」と書いて(翻訳文)ある。
う~ん、そんな感情にも通じるのか!・・・全く分からないでもない。
やがて、カデンツァと言ってよいのか、チェロが怪しげなモノローグを奏する。
そして最後は第一楽章の最初のファゴットの旋律をテュッティで高らかに謳う
と、次第に静まって、第一楽章と同じような静けさで全曲を閉じるのである。
私としては、晩秋の夜長、独り静かにワインかウイスキーでも片手に、
しんみり聴くのによろしいかと・・・・。
なお、このCDの演奏は ミッシャ・マイスキー
ミハイル・プレトニェフ
ロシア・ナショナル管弦楽団 です。