43時間 Part18 | cracking-my-ballsのブログ

43時間 Part18

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官僚からの連絡

WAVE送出センター:C3スタジオ:シェルター内。


バロンとの交渉は以前平行線のまま。

例の私の教えた法律論をまるで自分が考えたかのようにピエールが演説をぶっていた。

「かように・・・今回の株式の差押、すなわち譲渡担保の実行は株券だけであって、株式の全体を構成する受益権を擁さないものである為、その受益権のうちである議決権においては、移動が完了されていないと思料いたします。です。」

ピエールの演説中、カワカミはいらぬ小知恵を与えよってという顔で私の顔を冷たい視線で見やる。

「なるほど・・・悪くない法律的解釈ですな。」

バロンは、二杯めの紅茶に口を付けながら言葉を洩らした。

タチバナがバロンに聞く。

「男爵・・・一つお聞きしてよろしいですか?」

「どうぞ。」

「我々から仮に株式を買い上げられたとして・・・マツイ不動産の電源停止処置をどう止めるおつもりで・・・買い取ったはいいが、電源停止になれば、株式価値はゼロに近くなります。」

「それはあなた方も一緒と心得ますが(笑)」

タチバナは口の端をあげ返す。

「あなた方の〝効果的な対処法〟に、実は我々も期待しておるのですよ。

きっと、マツイ不動産の電源停止を止めて見せてくれると信じていますよ(笑)

〝優秀な存在〟と・・・私は、あなた方を見てますので。

・・・まぁ・・・しかし我々としても、手をなんらくださないワケにも行きませんからね。

それなりの手は取るつもりですが。(笑)」

「どちらにしても、マツイの強硬手段を止められると言う前提で、来年までの・・・(タチバナは壁にかかったON AIRのサインの下の時計を見る仕草をして)・・・あと・・2時間チョイの時間でお互い決着をつけようと。

・・・こういうわけですね。」

「もちろんそうです。このゲーム(交渉)に延長戦はありませんからな(笑)」

バロンが不敵に答える。

ガラスの向こうでは年末年越しカウントダウンの番組がいよいよ30位の曲をかけていた。

そこにWAVEのスタッフが走るようにディレクタールームのドアを開けて入ってきた。

そのスタッフは忍び込んでいるマウスだ。

マウスは私の耳元で囁く

「官僚さんから緊急の電話です。」

「私がちょっと電話が入りました。」

と席を立とうとした。

完全防音のこの部屋は携帯電話は通じない。

よって官僚はWAVEの送出センター宛に電話をかけてきたということだ。

席を立つ瞬間

バロンが笑った。ように思えた。


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WAVE放送局です。

次はいよいよ年間チャートの28位です。

この曲をどうぞ。


♪♪♪



ソユーズの宇宙船のドアを開け、別室の電話のあるルームに入り受話器を取る。

電話の相手は官僚だ。

<バロンにやられました。------------>

「何を?----」

<WAVE社の取締役の一部を抱き込まれましたね。>

「で・・・」

<現在正式な取締役会に突入して、緊急動議が発議されましたよ。------->

「つまり?」

<この取締役会で、T社長が解任されそうです。ご承知のように・・・>

「解任されれば・・・次の社長になった男は間違いなくWAVE同盟軍の現在保有している全株式をバロンに売るように決定すると言うことか・・・」

<ええ・・・しかも・・・最悪の想定なら・・・新経営陣は、我々を解任するでしょう。

立場上・・・我々はコンサルタントのような立場です。

ようは・・・経営陣が我々とのコンサル契約を解除すれば・・・>

「WAVEと我々の関わりは、なんら無くなると言うわけか・・・」

<その通りです。・・・M&A防衛策以前の問題になります。>

「やるな・・・バロン(笑)」

<相手を褒めている場合じゃないですよ。最大のピンチですよ。>

「分かった・・・なんとしてでも阻止しろ。」

<阻止しろと言われましても・・・どうしましょう?--------->

「方法は、オレが考える。少し時間をくれ。」

<了解です。なんとか時間を稼ぐようにします。------>


電話を終えC3スタジオに戻った。

「何か?ありましたかな(笑)」

このやろう・・・分かっていて、その勝ち誇った笑みかい。同じ笑みでも、銀座のエミちゃんの笑顔が欲しい(笑)

どうでもいい話になってしまったようだ。

「どうした?」

タチバナが空気を察知したのか聞いてくる。

「隠してもしょうがないでしょうから・・・」

そう前置きして全員に聞こえるように私はしゃべった。

「WAVEの本社で現在取締役会が始まりました。

一人の取締役からT社長の解任動議が発議されたようですね。」

解任が決定されれば、我々同様・・・間違いなく・・・ピエールも解任となろう。

そうなれば、全員バロンに完敗し、このディレクタールームを出ていくしかなくなる。

後2時間の試合時間を残してバロンの勝利が確定する。

タチバナが驚いて立ちあがった。

ピエールもカップを床に落としてしまった。

派手な音がしたがバロンは身じろぎもしない。

そして、防音のガラス越しの番組進行をしているクリスとジョンにもその音は全く聞こえてないようだった。

「前半はやや私が試合を有利に運んでいるようですな。

しかし、後半戦を待たずして・・・このゲーム(交渉)は決まってしまいそうですかな(笑)

陣営を立てなおして、もっと頑張ってもらいませんと・・・

せっかくの決勝戦が盛り上がりませんよ(笑)  ムッシュ-----」

バロンが2本目の葉巻の煙を吐きながら、私の顔を見すえ言った。

それは優勝経験の数多くある先輩サッカーチームからの余裕の警告のように聞こえた。



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渋谷17階の交渉


マツイ不動産:本社:イチロウとマツイトクノリ


トクノリ  「本気で言っているのか?」

イチロウ 「もちろん。」

「オヤジ・・・いや・・・徳之助は、WAVEの電源ストップと引き換えに全財産・・・を投げ出すと言ったのか。」

「正確には、全て、このイチロウに任せると♡」


「なんという・・・なんというううううううううううううううう」

「・・・・・」

イチロウは黙っている。

「どこの馬の骨とも知れん。お前にか!」

「馬の骨じゃありません。種馬ですが(笑)」

興奮気味のトクノリは窓のほうまで歩み、窓ガラスを開いた両手で叩くように押さえると、頭を左右に数回振った。

「トクノリさん・・・・あなたは徳之助さんの電話にも出ないでしょう?」

「当たり前だ・・・あんなオヤジ・・・父親とも思っていない。」

「なので・・・こんな手段・・・徳之助さんの息子にでもならないと・・・会ってもくれなかったでしょ・・・」

「おまえ・・・私に会うためだけに他人の息子になったと言うのか?」

「いけませんか?」

「正気か?」

「今は、莫大な財産を相続しそうな・・・どら息子です(笑)」

「オヤジもオヤジだ・・・

そこまでして・・・愛人の子供を守りたいのか・・・あの野郎。」


「これはビジネスの話ですよトクノリさん。

WAVEの電源停止を諦めれば、あなたの夢である臨界都心のプロジェクトの資金を越える金額が手に入りますよ♡」

しばらく歯を食いしばるように力を入れていた肩を、冷静さを取り戻そうと思ったのか、

何回か回しように動かし、ほぐす仕草をした後、トクノリはイチロウに聞いてきた。

「お前・・・オレにそんな条件をなぜ提示する?・・・何か裏があるんだろう・・・

でなきゃりぁ・・・あんなオンボロ放送局を救うためだけに数百億の資金を他人に譲る気がしれん!」

「別に裏はありません(笑)、いった通りですよ。

WAVEとあなたと、そして徳之助さん・・・今は、お父さんですか(笑)を救うために来たんですから。」

「何を!ふざけた野郎だ。帰ってくれ・・・」

冷静さを取り戻すつもりがトクノリは、更に興奮してきた。

「ほんとに帰って良いんですか?」

席を立ち応接室のドアに近づく仕草をするイチロウ

「ほんとに帰っちゃいますよ。」

ドアをわざとゆっくりと閉めながら、ちょっと開いた隙間から顔を出して言う。

「いや・・・待て・・・」

「え?・・・何ていいました?・・・小さくて聞こえませんが・・・」

「とにかく待てと言ってるんだ!」

「そんな大きな声を出さなくても聞こえてますよ。」

トクノリ 「話は聞こう・・・」

イチロウ 「じゃぁ・・・ゆっくりビジネスの話でも・・しましょうか(笑)・・・お兄さん♡」



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WAVE本社:会議室


「緊急動議を提案します。そして、T社長の解任をここに発議します。」

「賛成の方はご起立をお願いいたします。」


取締役 A 「取締役会を開催することは、認めたが・・・そんなすぐに社長の解任を採決することもあるまい。」

取締役 B 「いや、私は採決に賛成だ。電源停止まで・・・・後、2時間も残っていない。」

取締役 C 「時間がないのは確かだ。しかし、社長の解任とバロンへの株式売却との問題は違うと思うが・・・」

取絞役 F 「それはいえている。確かにそうだ。」

取締役 E 「社長は、とにかく売却に反対なんだ。つまり変わってもらわなければ、売却も、新しい道も開かんよ。」

取締役 B 「なるほど。株式売却を行うか、否かは、つまりT社長体制の継続か否かと言うことですな。」

取締役 A 「しかし、マツイ不動産の電源停止が不明な現在・・・売却を決定するか否かなど決められんだろう。」

取締役 B 「停止が行われてからでは、売却はできんよ。バロンサイドも免許が取り消しになるような会社は見捨てるさ。」

取締役 C 「それはそうだ。つまり売り逃げるとしたら今しかないことになる。電源停止なら無価値だ。」

取締役 F 「あんたはどう思うんだい?」

官僚のほうを向いて、一人の取締役が聞いてきた。

官僚 「私は、WAVE社になんらの未練などありませんからね。

経済的に見れば、今が最大の価値で売却できる時でしょう。天井です。」

取締役 E 「ホレ見ろ。今売るしかないんだ。」

官僚 「しかし、今までWAVE社を頑張って支えてきた努力も、もちろんゼロになります。

前から申し上げている通り・・・バロン側はこのWAVE放送局を続ける意思はありません。

欲しいのは電波ですから。

よって・・・最悪のシナリオですと」

取締役 A 「最悪のシナリオ?」

官僚 「現在、前払いをされている聴取者の方・・・約10万人が、WAVE社が破綻をした場合・・・つまり放送を突然打ち切った場合は、損害賠償請求をしてくるでしょうね。」

取締役 C 「誰にだ?」

官僚 「バロンが払わなければ・・・もちろん、旧経営陣にですよ。」

取締役 E 「旧経営陣って・・・我々のことか?」

官僚 「そうです。経営責任を追及されるでしょう。」

官僚のその言葉は重く取締役陣にのしかかった。

取締役 E 「きっとバロンは払ってくれるさ・・・」

取締役 A 「何の保証もない?」

T社長が突然、寝ていた子供が目を覚ましたように大きな声で

「皆さん!・・・今までのWAVEをみんなで守ろうと言う決意はどこに行ったんですか?」
一瞬会議室内は静まり返ったが

すぐに

取締役 B 「何をいまさら・・・根性論かね。」

取締役 E 「全く現実を見ていないな君は。」

取締役 C 「そんな感情論を今は議題にしているのではないよ。」

あっという間にT社長のアドバルーンはしぼんだ。


cracking-my-ballsのブログ   ぱふ。

人間は、最後には損得で・・・しかも個人の損得でしか判断をしない。

特に自らに本当の危険が迫った時には・・・

それがT社長には分かっていなかった。


取締役 E 「取りあえず、採決・・・皆さんの考えを精査してみたいと思うのですが・・・」

取締役 B 「そうだ。」

T社長 「採決ですか!

机の下にもぐって今にも身を隠しそうなぐらいの小さなおびえた声で・・T社長が言う。
官僚は瞬時に計算した。

取締役の人数はT社長を入れて7人。

3対3の同数なら、T社長がいるので4対3で、売却は中止だ。

つまり、バロンの息が掛った者が仮に3人いてもT社長の勝ちだ。

現在、バロンの息がかかっていると分かりやすく発言しているのは取締役BとそしてEの二人。

隠れたバロンサイドの者がいても、3対3。

T社長の一票で、勝てる。


問題は採決の内容次第である。


「落ち着いてください。T社長」

官僚は机の下に潜りそうなT社長を椅子にしっかりと座らせる。

「あなたが議長ですよ。あなたが議論をリードしなくて・・・どうするんです。

自身の解任ではなく・・・株式の売却の採決をしてください。」

耳元で囁くように言って聞かせた。

T社長 「株式の?」

官僚 「採決の議題に注意してください。良いですね。議題次第ではあなたは勝てます。」

T社長 「勝てるのですね・・・」

取締役 B  「採決の内容は?」

T社長 「採決を行います。」

取締役 C 「採決の内容は?」

T社長 「私の社長としての続投か、それとも新社長を決め、バロン側に全株式を売却することを決定するか・・・」

取締役 A 「それで・・・いんですね?」

取締役 E 「解任決議と言うことですな?」

T社長 「はい。」

T社長 「それでは・・・」

あれほど官僚が注意したにもかかわらずT社長は自らの進退を決議するような内容で採決を取るようだ。

血迷っているというより興奮して我を忘れている。

官僚 「ちょっと待ってください。

法律上・・・T社長の解任決議を決めるのであれば・・・T社長が議長はできません。

それに、議決権もありませんよ。」

T社長 「へぇ?」

官僚 「WAVE社の定款で代表取締役の解職決議においては、当該代表取締役は、特別利害人とみなし決議権を有しない。と書いてあります。普通ない条項ですがね。確かに書いてあります。」

T社長「そんなバカなぁ~・・・・・」

官僚 「珍しい条項ですが、意義があるなら提訴する必要がありますね。ちなみに最高裁はこの場合、

特別利害人にあたると判決してますが。」

T社長は、押し黙り、泣き出しそうな眼はすでに死んだ魚のような色をしている。

しばらく間、考えこむような仕草をしていたが、思い詰めたような表情で、再度、取締役陣に向けしゃべりだした。


T社長 「では、改めて・・・私の解任決議ではなく・・・今般の弊社の株式をバロン側に売ると言うことに賛成の方は・・・」

取締役 E 「一度言ったことをクルクルと変えてもらっては困る。」

取締役 B 「そうだ。解任決議を進めたまえ!」

取締役 F 「ちょっと待て!

株式の売却を決定するのなら・・・・・取締役会ではなく、会社の重要な指針を決定するんだ。

株主総会だろう?取締役の解任も総会決議じゃないのか?」

官僚 「ええ・・それは説明しておきましょう。

先ず、代表取締役解任決議は、取締役会でもできます。

次に、

現在、我々(取締役会)はほぼ半数の株主の委任を受けています。

バロン側も程半数です。

バロン側は、すでに株式の購入を意思決定しているわけですから・・・

事実上売却の意思と考えて問題ありません。

つまり、残りの約半数の意思決定、

すなわち我々の売却するか否かによって会社の今後の運命は決められると思って問題ありません。

つまり、事実上、ここで決めたことが株主総会でも同じこととなるのですから、

全てここで決められると言うことになります。」

取締役 C 「徳之助さんの11.7%はどうなるんだ?」

官僚 「我々の現在時間で委任を受けている44.4%が売却に傾けば、徳之助さんの11.9%はもちろん意味をなくします。

バロン側が売却で、WAVE経営陣が売却阻止という対立軸にある場合のみ徳之助さんの11.9%は意味をなすんです。

政治の与党と野党の間の弱小政党の役割のようにね。

つまり、大連立が起これば、徳之助さんが幾ら反対しても、流れは止められません。

売却に反対せず、売却すると取締役会が決定すれば、形式だけの株主総会は意味をなしません。」

取締役 C 「なるほど。売却反対にこの取締役会が決まったら?」

官僚 「徳之助さんがどちらに付くかで運命が決まります。」

取締役 B 「どこぞの偏屈爺さんに我々の運命の舵取りをされてたまるもんか!」

官僚 「れっきとした大株主ですよ。」

取締役 E 「とにかく現在の社長の解任動議なら、今ここにいる取締役の6人が決められるんだな?」

官僚 「・・・・・・定款に抵触しません。」

T社長  「そんな・・・

踏ん張りどころですよ。

官僚はT社長の耳元で再度呟く。

取締役 E 「とにかく、ここで決めなくちゃならんのは・・・結局、当社、つまりWAVE放送局の未来だ。

要するに、このT社長に今後も付いていくか、それとも、新しい道を選ぶかと言うことだろう。」

取締役 Eは何としてもT社長の一票を潰したい意向のようだ。

たった7人しかいない。

意思決定者は。

七票の内の〝一票″はデカイ。

T社長 「良いでしょう。」

会議室にいた全員がT社長のその言葉に耳を傾かた。

一瞬会議室が静寂に包まれる。

T社長 「採決しましょう。私もWAVE社の社長を長年やってきました。

あなた方とともに。

その仲間の意思を尊重します。

私の考え方が現在のWAVE社に合わないとと皆さんがおっしゃるのであれば、甘んじて・・・社長の座を降りましょう。

しかし、これだけは言わしてください。

私は・・・このWAVEと共に・・

取締役 E 「でわ・・・Bさんに議長をしていただきますか。」

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   パフッDASH!






T社長 「あの・・・まだ・・言いたいことが・・・
取締役 C 「充分言って来たでしょう。いままで。」

取締役 B 「もう・・別にあなたの話で聞くことなんてないですよ。」

T社長 「ええ・・・まぁ・・・そうですか・・・」

取締役 B 「でわ、採決を取りましょう。

T社長の解任に賛成の方、ご起立願います。」




パフっ!





官僚は ------------------------



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腕組みをして、眼鏡の奥で考察し観察する。

右側二番目に座る総務部長が少し唇をあげたような気がした。

BとEは、ほぼ間違いなくバロンに抱き込まれていると読んだ。

あと一人誰が・・・

スローモーションで〝場″が進行した。

官僚の頭脳の高速コンピューターがフル回転する。

彼のスピードからすれば〝場"はスローに見える。

誰が裏切り者か・・・誰がウイルスの根源か。

Bは、左やや上に眼球を上げた。

この眼球の動きは、視覚的記憶を思いだいている時に人間が反射的に行う目の動きだ。

つまり以前に合った風景や、前に会った人物の顔を思い出している。

そして、背もたれから背中を離すと椅子の肘かけに力を入れる、右手首のほうが左よりも筋が力強く入る。

右利きだ。

方左前のEをアイコンタクトを取るようにゆっくりと立ち上がる。

Fが右に座るEの様子を窺うように首を右に回す。

眼球は水平に右に動く、何かの音を聞こうとしているのか・・・

何かの約束を思い出そうとするときにする動きだ。

Aは顎に右手を置き、眼球を右上に動かした。

未来を考えている一般的な眼球の動きだ。こいつは本気でWAVEの将来を想像している。

椅子に深く腰かけたままだ。

Cはバロン側だと思っていたが・・・眼球はまっすぐ前を見ている。

筋肉は弛緩(しかん)したままだ。イコール立たない。

T社長は、口を大きく開けて下の歯が見えている。

下の奥歯の7番の第二大臼歯がC4だ。最悪の虫歯で抜かなければ治らない。

目は焦点が定まっていない。

つまり、今までに経験のない光景を想像している。つまり負けるとすでに決めているのだ。


起立したのは、BとEのふたり。

残りのA/C/D/Fの4人は座ったままだ。

取締役 BとEが座るとすぐに

「でわ、T社長の解任に反対の方、ご起立ください。」と返す刀で言葉をつなぐ。

立ったのは、AとFの二人だ。


「かかかふゅう~・・・・2対2だ。」

放送事業部長が止めていた息を吐いた。

CとDは、?

態度保留?

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WAVE放送局です。

総務部長さんのリクエストで

次の曲です。

♪♪♪


取締役 C 「私は、まだ・・・どちらとも言えませんね。」

取締役 B 「まだって・・・マツイ不動産が、電源ストップまで・・・1時間もないんですよ?」

取締役 C 「そう言われても・・・WAVEの未来にどちらが・・本当に良いか・・・決めかねています。」

取締役 D 「そう・・・大事なことです。10万人の聴取者の未来が掛っていますからな。」

官僚 「解任賛成2名。解任反対2名。白票2名と言うことですね。」

取締役 A 「これじゃぁ・・・振り出しだな・・・」

振り出しではない。

官僚は、高速頭脳コンピューターを使って、採決の瞬間の見た映像を、自身の頭の中でリフレインしていた。


解任に明確に反対したAとFは除外してリフレインする。除外項目は打ち消し線で消して行く。

T社長の光景も何も意味をなさないので除外する。

   Bは、左やや上に眼球を上げた。この眼球の動きは、視覚的記憶を思いだいている時に人間が反射的に行  

   う目の動きだ。

   つまり以前に合った風景や、前に会った人物の顔を思い出している。

   そして、背もたれから背中を離すと椅子の肘かけに力を入れる、右手首のほうが左よりも筋が力強く入る。   

   右利きだ。前方左前のEをアイコンタクトを取るようにゆっくりと立ち上がる。

   Fが右に座るEの様子を窺うように首を右に回す。眼球は水平に右に動く、何かの音を聞こうとしているの

   か・・・

   何かの約束を思い出そうとするときにする動きだ。

   Aは顎に右手を置き、眼球を右上に動かした。未来を考えている一般的な眼球の動きだ。こちつは本気でW  

   AVEの将来を想像している。

   椅子に深く腰かけたままだ。

   Cはバロン側だと思っていたが・・・眼球はまっすぐ前を見ている。

   筋肉は弛緩したままだ。イコール立たない。

   T社長は、口を大きく開けて下の歯が見えている。下の奥歯の7番の第二大臼歯がC4だ。最悪の虫歯で抜   

   かなければ治らない。

   目は焦点が定まっていない。つまり、今までに経験のない光景を想像している。つまり負けるとすでに決め  

   ているのだ。

起立を行ったBとEの眼球の動きに特に注意して・・・Cを除外する

もう一度リフレインする。

頭の中で画像が再生される。

    Bは、左やや上に眼球を上げた。この眼球の動きは、視覚的記憶を思いだいている時に人間が反射的に

    行う目の動きだ。

    つまり以前に合った風景や、前に会った人物の顔を思い出している。

    そして、背もたれから背中を離すと椅子の肘かけに力を入れる、右手首のほうが左よりも筋が力強く入  

    る。右利きだ。前方左前のEをアイコンタクトを取るようにゆっくりと立ち上がる。

    Fが右に座るEの様子を窺うように首を右に回す。眼球は水平に右に動く、何かの音を聞こうとしているの

    か・・・

    何かの約束を思い出そうとするときにする動きだ。

    Cはバロン側だと思っていたが・・・眼球はまっすぐ前を見ている。

    筋肉は弛緩したままだ。イコール立たない。


先に立ったBではなく・・・

Eの眼球を追った。

    Bは、左やや上に眼球を上げた。この眼球の動きは、視覚的記憶を思いだいている時に人間が反射的に

    行う目の動きだ。

    つまり以前に合った風景や、前に会った人物の顔を思い出している。

    そして、背もたれから背中を離すと椅子の肘かけに力を入れる、右手首のほうが左よりも筋が力強く入  

    る。右利きだ。前方左前のEをアイコンタクトを取るようにゆっくりと立ち上がる。


・・・・・前方左前のEをアイコンタクト・・・・・


Eの眼球に

順番に人物が写り込むのを官僚は思い出す。

移りこんでいた。

順番に・・・

誰が?

こいつらが。


D→総務部長→B→D

「なるほど。」

裏切り者は、B、E、総務部長。

そして・・・・

ウイルスの根源を特定した。

バロン(悪魔)の使い・・・は

D取締役″だ。


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D取締役

D取締役 :

いつもキッチリと髪を7:3で分け、首の根元までネクタイをきつく締めている。紺色の縦縞スーツにオレンジと緑の縞模様のネクタイは趣味が悪い。

WAVEのスタッフにこう呼ばれている。

〝ダンディ板倉"

年齢 :50代

Bエージェンシー出身。

取締役だが、非常勤に近い。密接な関係のある広告代理店Bエージェンシーからの出向だ。


「Bエージェンシーの出身?」


官僚からの電話にWAVE送出センターのマスター室で出た私はそう聞き返す。

WAVE存続をかけて戦う我々の事情を組んでか、マスター室の室長は、小声で「頑張ってください。」

と私に笑顔とともに言った。


「Bエージェンシーの出身なら、Bエージェンシーの社長は、T社長の〝側″だ。味方になってくれるはずだ。

圧力掛けられるだろう?」

<私もそう思って、すぐにBエージェンシーの社長に連絡したんですが・・・サラリーマン社長ですからね。説得は心見てみますが・・・期待しないでほしい・・・と>

「強権発動!ってわけにはいかないか。」

<ええ・・・>

「まぁ・・・そいつがバロンの意向を見事に再現しているわけか、WAVE社の取締役会で。」

<他の取締役 BとEは、自分からバロンとの接触を認めてます。

このDは少し違いました。>

「どう?」

<Dを少し調べてみませしたが、Bエージェンシーには2年前に中途入社で入っています。

そして、入る前は英国の〇〇投資顧問で働いていた経験があります。>

「おいおい 〇〇投資顧問って 」

<そうです。〇〇投資顧問は〝Z″の金融グループの一つとの噂があります。

Bエージェンシーには財務の立て直しとしてヘッドハンティングされたようですね。

入社後、すぐに巨額の資金提携を出身である〇〇投資顧問と成功させ、

一躍Bエージェンシー内でも力を付けてきた人物です。>

「財務の立役者じゃ・・・Bエージェンシーの社長も強硬路線にいけないわけか・・・」

<そうでしょうね。>

「しかし・・・Zっていうやつは、底知れねぇ・・な。

数年がかりで、日本のメディアや通信網を事実上、自身の傘下におくべく、動いていたのか・・・」

<認めたくはないですが・・・日本のメディアへの外国資本の汚染は、ここまで来ているということですよ。>

「老政治家が焦るのも無理ねぇ・・な(笑)」

「で・・・そのD取締役をなんとかできるか?」

<無理でしょう。>

「簡単に言うなよ(笑)でなきゃ・・・我々もピエールもT社長と一緒にお払い箱だぞ(笑)

だが、官僚が裏切り者を見つけてくれたのはありがたい。

ある程度結果が予想できることになった。

雨が降るのがわかっていれば、傘を持って出かけられる。

それは、対処する時間が稼げたことを意味するからな。

今の我々には1時間はデカイ。」


官僚は人の数倍の頭脳のスピードで物事を計算をする男だ。

つまり普通の人間が1時間かかって結果を得るのに1分で答えがわかっているのであれば、残りの59分は、1時間かかる人間より未来にいることになる。

つまり官僚はタイムマシーンを頭の中に飼っている。

未来に行って現代に帰ってくれば、砂時計はひっくりかえせる。


<社長こそ・・・何かいいアイデアはありませんか?T社長解任の打開策は?>

「お前がわからないんだからオレには何にも浮かばん(笑)

・・・バロンのお守で大変だったな(笑)・・・

まぁ・・・良くやった礼として・・・一つヒントはやろう。」

「なんです。」

「こういう時こそ基本に戻れだ。」

「こんな時に冗談ですか(笑)・・・それ?」

「WAVE社の定款を読み直してみろ。

面白いことが書いてあるかも知れん。

そういう意味だ。

必要ならクライムも使え。」

<T社長解任まで、後2時間(電源停止まで)は、もたないでしょう。間に合えばいいんですが・・・>

「なんとかしろ。期待している(笑)  また・・・動きがあったら報告してくれ。」

<了解しました。>


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WAVE送出センター:C3スタジオ 


官僚との話を終えソユーズの扉を開けて・・・〝プシュー"とばかりに宇宙船のスタジオに戻ってきた。

ガラスの向こうでは、いよいよ一時間を切って、ラジオのDJ達のボルテージも上がっているようだ。


曲線を繋げた大きなテーブルの上には、ピエールの「なんか・・・お腹が減りましたね。」という要望で、ピザを用意した。

単なる宅配のピザではバロンが怒りそうだったので(笑)・・・

マウスに青山にある老舗のピッツァリアに買いに行かせた。

案の定大晦日のこの時間にやっているはずはなく。

結果、外苑西通りの〇〇THE ハ―ブスのピザを買ってこさせた。

一緒にパスタやサラダも買って来た。

「この時間なら仕方ありません。カワカミはとピエールは、上手そうに食っていた。」

「結構いけますよ。」チーズを伸ばしながらバロンに勧めるタチバナ。

腹が減っていたので、美味かった。

「WAVE社の取締役会・・・社長の解任動議はいかがでしたかな?」

バロンは全くピザには手を付けずに紅茶を飲みながら、聞いてきた。

「2対2です。残りの2人は、どちらに付くか決めかねているようです。」

コーヒーを飲みながら私が答える。

ちょっとだが、バロンの目が・・・オヤっという動きをした。

2対2以外の2人が保留ということに、興味を持ったようだ。

「D取締役は、2人の保留者に入っていますよ(笑)」

それを聞くとバロンはニヤリとして・・・

「大した、ものだ。すでに調べておいでで・・・」と言った。

「男爵・・・残りD取締役の一点追加で合計三得点は確実ですね。

しかし、もう一人の保留者が意外だったのでしょう?」

「いかにも(笑) C取締役とも接触しております。

彼も我々側についてくれると期待したのですがな。」

「T社長の信頼や経営能力以前に、WAVE放送局を愛する者が、いたということですよ。」

スタッフの分も多量にピザとパスタを買わせに行ったので、

送出の根幹・・・心臓部の心臓たるマスター室の連中にも、アシスタントから編集係、タイムキーパーにも食事は配られた。

「静かなる抵抗ですかな。」

「どうでしょう?」

「しかし、C取締役は、あなた側にも付きませんよ。そういう意思表示でしょう。」

バロンが落ち着いた仕草で返す。

バロンは続ける。

「と言うことは・・・結果は、3対2、無効票1で・・・T社長の解任は決まります。」

「D取締役の、一時的な保留は・・・男爵のシナリオでしょう?」

「お察しの通り・・・あなたに考えていただく時間を差し上げるためです(笑)」

バロンが再び勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「さぁ・・・ディフェンスラインにすぐに戻らんと時間はありませんぞ(笑)・・・。」 

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WAVE放送局です。

さぁ・・・今年も残すところ50分ですよ。クリスさん。

いやぁ・・・なんかドキドキしてきました。

次の曲はなんでしょう?

わくわくしますね。

それでは、今現在、隣の部屋で交渉をしている皆さんの気持ちを表したようなこの曲です。

 ♪♪♪


マウスが

「官僚さんからの電話です。」

とディレクタールームに小走りで入ってきた。

「いちいち・・・別室に行くのもめんどくせぇ・・・電話をこの部屋に繋げ!」 私が声をあげた。

「冷静にならなければ・・・ボールばかり追っていてはパスは取れませんよ。ムッシュ(笑)」

バロンが葉巻に火を付けながら私に忠告をするように告げる。

このディレクタールームにも電話はある。唯一の外部との連絡方法だ。

携帯のように電波式ではない有線で繋がれたPBXで制御されたデュアル同期整流式固定電話だ。

放送に全く支障をきたさない。

マウスは、慌てている様子の私につられたのか、焦って一度、官僚からの電話を切ってしまった。

その仕草にカワカミが初めて笑みを浮かべた。

「スピーカーに繋げ。」私がいう。

「良いんですか?」マウスがいう。

タチバナも私に良いのか?という仕草を目でしてきた。

「構わん。」

電話に再度出た官僚からの声がスピーカーから聞こえてきた。

「アレから2回目の採決が行われました。」

「で?結果は」

「3対2。保留1です。D取締役が、解任に回りました。まずいですね。」

「スピーカーに繋がってるぞ。」思わずタチバナが官僚に伝えた。

「そうですか。ゴホッ」

「保留の一人は、態度を変えないのか?」

タチバナが心配そうにたまらず聞き返した。

少しおいて官僚の声がスピーカーから流れた

「残念ながら・・・ないでしょう。」


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「あっけなくゲームは・・・決着がついたようですな。(笑)」 バロン

ピエールは、食っていたピザを膝の上に落とした。

カワカミ 「T社長の解任ということは、すなわち、あなたたちも、解任ですな(笑)」

ピエール 「そんなバカな・・・」

マウスもその場にいたスタッフも・・・茫然としている。

ガラスの向こうのDJのクリスとジョンだけは笑っていた。

「準備です。」

バロンが煙を巻きながら言った。

「準備をしたモノだけが・・・ゲームに勝つのですよ。それを私はアンゴラで学びました。」

カワカミが・・・弁護士が良く持つ分厚い重たそうな鞄から、契約書を取りだした。

「サインを・・・」ピエールに迫った。

「サインをすればピエールさんの解任だけは、一時見合わせるように取締役会に進言しましょう。大株主の権限で・・・」バロンが髭の端をあげながらピエールに言った。

ピエールはカワカミの差しだす上質な万年筆を持った。

ピエールがWAVE同盟軍の保有する全株式の売却合意書にサインをしようと紙面に目を通し始めた。

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