そろそろ復帰しないといけませんね、

年越し企画となってしまいました、

大森南朋さん映画特集第2弾、

まだまだ続きます。

今日はこれ、『鍵がない』


静かに雨が降リ続くとある駅、

傘を持っていない三沙子は階段で佇みながら、

別れてしまった良介のことを思い出していた。

ちょうど一年前、今日と同じ場所で雨宿りをしていた三沙子と良介は、

傘を持ってきた良介の娘・日菜に誘われ、

3人で一緒に岐路に着く。これが出会い。

けれども、今日は三沙子に傘を向けてくれる人はいない。

しょうがなく雨の中を走り出し、家に到着した三沙子だったが、

鍵がないことに気付き、下北の街を彷徨い、

困り果てた彼女は、良介に鍵を預けていたことを思い出す。


南朋さんのお友達、山田英治監督の劇場デビュー作品。

『春眠り世田谷』([cdb]#65 )とか『帰れない二人』([cdb]#66 )とか、

自主映画のイメージが強い山田監督の満を侍しての長編作品、

ということですが、相変わらず非常に自主映画の匂いがしますね。

実際南朋さんがインタビューで、

話を頂いたときは自主製作ということだったのに、

現場に行ったらスタッフの人数が多くてびっくりしたと。

なるほど、これはこれで悪くはないんですけどね、

もうちょっとこの匂いがとれると良いんだけど、

まあそれは私の好みでしょうけどね。

でも、山田監督の作品、私は嫌いじゃありません。

というか、山田監督の観点はなかなか面白かったりする。

登場する彼らは決して不幸でもなくかといって幸福でもなく、

行き詰っているようで意外と前を向いていたり、

案外深刻なはずなのにそんな時にこそ垣間見える妄想というか、

あー、なんてしょうもない人たちなんだ、でも分かる分かるという感覚。

そんな作品に、妙に素っぽい南朋さんが似合っていたりするからまた良い。

やはり気心知れた方が撮っているからこその無防備加減なんでしょうか。

山田監督が撮る南朋さんは格好良過ぎず、

男性の可愛らしさとか甘えが必ず映っていて、いつも胸キュン。

本作も然り。子供に向ける笑顔や手つきがおぼつかないのもご愛嬌。

帰ろうとした彼女の腕をぐいっとひっぱって、もう帰っちゃうの?

これ、妙にリアルでファンにはもうたまりませんっ。


夜中、雨、下北。これが良い塩梅でこの映画の匂いになっているよう。

どこかの街で本当にこういう女性がいるみたいな、

実際知っている街並みとかカフェの風景があちこち出てくるし、

映画と現実のミックスが不思議な感覚。かと思ったら、

急にファンタジーなシーンが繰り広げられたりするから笑ってしまう。

バスの運転手さん、光石研さんが非常に良かったですね。

この描写がこの映画の中で一番好き。

"次は、沢木良介マンション前、沢木良介マンション前"

どんと三沙子の背中を押す運転手さん、

行かネバーと意気揚々とマンションのドアの前まで来たはいいが、

結局あれこれ想像して何も出来なかった三沙子を、

温かく迎える光石さん、なかなか粋な役どころじゃないですか。

彼のおかげで三沙子はちょっとだけ勇気と元気をもらったに違いないし、

そんなバスが私の前にも現われて欲しいわとちょっと思ったりして。


結局、南朋さんは、いや、良介は一体どうしたいのよーという感じ、

今の彼女にはどうも振られそうだし、

と思ったら、三沙子の元に鍵をもっていき、

声をかけようと思ったら彼女は清々しい笑顔になっていて、

良介という男は監督自身の投影なのかしら、

まったく山田監督が描く男性はいつもこうしてだらしがない。

まあ、彼女も彼女でこれだけ良介のことを思い出し続けていたわりには、

案外あっさり過去をふっきったような笑顔、

いくらなんでも一晩でそれはないでしょ、

これって山田監督の女性に対するイメージなのかしら、

女性だってもうちょっと引きずるときは引きずりますけどねぇ。

いずれにしろ、かなり男性目線の作品、女性の私には口惜しい限り。


電車の中で監督を見つけた様な違うような・・・。

ところで、劇中ほとんどの曲の歌詞を監督が手がけているらしく、

へぇ、山田監督って作詞もするんですね、そう思っていたら、

なんとなんと、HARCOさんの『世界でいちばん頑張ってる君に』、>>

この曲の作詞も実は山田監督なんですってねー。

かなりびっくり。でも、大好きな唄だし、少々納得かも。

PVに登場する山田監督に思わずにんまりしてしまいましたよ。