手回しの焙煎機でぐるぐるドラムを回し続けると、平均して18分ぐらい経過したところで、
「パチパチ」と1ハゼと呼ばれる現象がおこる。
わかりやすく言うと、天津甘栗が「パチン」と弾けたり、ポップコーンが「ポン」と
跳ね上がったりするのと同じで、コーヒー豆は煎り続けると爆(は)ぜる。
大事なのは1ハゼが終わり、しばらく回し続けた後に起こる、2ハゼのとき。
1ハゼで止めるとミディアムローストになり、2ハゼのピークで止めるとシティローストにな
る。その中間がハイローストだ。
コルシカ珈琲の焙煎豆は大抵がシティローストか、フルシティローストの中間ぐらいに
仕上げるので、この煎り止めのタイミングが非常に重要なのである。
そのタイミングを逃さないために、私がするのが「豆の声を聴く」ことだ。
2ハゼが強まり、白煙がドラムから噴き出してくると「ここだよ、ここだよ」という甘い囁き
が聞こえてくる。
でもこれに耳を傾けてはいけない。これは豆が自分のタイミングでちょうどいいときを
知らせているだけだ。
わかりやすい例を挙げるとお風呂。
お風呂から上がるとき、「もういいや」とか「あ~気持ちよかった」みたいな感じであがる
のがほとんどだけど、本当はもう少し入っていられるはずだ。
豆もそのような感じで、甘やかさずに煎り続ける。すると「熱い熱い、もう限界!」
という声を上げるのである。
そこがベストポイント。
それ以上煎り続けると、気絶しているのか何も声は聞こえない。
豆をドラムから出してやったら、すかさずうちわで扇いでやる。
目いっぱい熱い思いをさせたのだから、せめてもの償いだ。
こうして、冷やされた豆は、1日かけて体内のガスを放出し、飲みごろになるのを待つ。
そして飲みごろになったと思ったらまた熱~いお湯をかけられて、皆様のテーブルに運
ばれていくのです。