草城句集「昨日の花」の中に、「重役会風景」と題する7句がある。
ミヤコホテルと同じく昭和9年の作品である。


パッカード来て日盛の玄関に
壮年の巨躯の社長の白チョッキ
扇風機厳秘の文書飛ばんとす
支配人猪首の汗を且拭う
うすものの老監査役うとうとと
夏痩の瞳の大なる女秘書
三伏や決議書に判べたべたと

発表当時の反響や評価についてはまったく知らない。
重役会議を俳句のテーマにするという発想自体当時では驚きであったかもしれない。
これらの句は、一応、ミヤコ・ホテル10句と同様、有季定型である。

現在の視点から見る限り、こんなに単刀直入に詠ってしまえば、味もそっけもない
冷えて腰抜けになっているきつねうどんのような俳句である。
特高警察俳句部でさえ摘発する気は起こらなかったのではないか?

1月中旬の金柑 去年ほどには輝いていない。