CGNでのインターンを終えて | Cordillera Green Network インターン体験記

Cordillera Green Network インターン体験記

フィリピン・ルソン島北部のバギオを本拠地に、山岳地方(コーディリエラ地方)で活動する現地法人の環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network:CGN)」の日本人インターンによるブログです。お問い合わせはcordigreen(a)gmail.com
まで。

こんにちは。インターンのKazukiです。

久々のブログですが、実は日本の山梨県から書いています。
というのも、3月の上旬でインターン勤務が終了し、そのまま慌ただしく帰国準備、帰国となったのです。生活環境が変わることには慣れっこですが、今回はいろいろと思わぬハプニングやら厄介な面倒事やらやり残したことやら山積で、あれよあれよという間に立春を迎えました。
元々インターンとしてCGNにやってきた経緯としては、山梨県は清里にある公益財団法人KEEP協会で期間雇用で働いていたことがきっかけです。KEEP協会は、国際協力、環境教育、農・牧畜業等々、コミュニティや社会の持続可能な発展に資する種々の事業を推進しています。フィリピンにおいてもCGNと協同で、環境教育の実施に取り組んできた背景があり、期間採用後の数か月、見分を広めるべく、お誘いいただいたという運びです。
12月から3か月強の、比較的短い期間でしたが、フィリピンという初めての国、インターンという初めての体験、学ぶことが多かったように思います。お酒を飲みながら話をすれば何時間でも尽きないような気がしますが、ここでは特に思い浮かぶものを、3点だけに絞ってピックアップしてみようと思います。

①環境教育ワークショップ
CGNでの業務で関わったものとして最も多かったのが、ワークショップへ同行でした。担当としては、ワークショップの様子の写真撮影、ブログ等を通じての紹介、準備や庶務の手伝いなどですが、ワークショップがどういう支援を受けて行われるのか、実施や次回への開催に向けてどういうPDSサイクルが回るのか、実施に当たって留意しなければならないことは何かなど、スキームそのものを実際に見て学ぶことに興味がありました。


(12月のWS。サバンガンにて、未就学児童に対する環境教育のノウハウを、先生たちに説明している様子)


ワークショップ実施にあたって最も重要なのは、受け入れ側の理解と協力だとわかりました。地元自治体の協力とワークショップ受講者がポジティブな意識で参加することが重要であると、CGNスタッフも機会あるごとに口にしていました。


(左は、未就学児童への環境教育には踊りや歌、クイズなどふんだんに盛り込むことが重要と
説明している場面。右は、1月のサバンガンで、Tシャツから作ったエコバッグの発表会の一幕。どちらも笑顔が絶えないワークショップでした)

CGNの優れている点は、コンテンツのレベルはもちろんのこと、受講者が楽しんでワークショップを受けられるよう内容や話し方に工夫を凝らしていること、自治体関係者にも十分配慮し、実施がスムースに運ぶよう準備を重ねていることなどあり、実行者としてのレベルも高いと実感しました。常に笑いが絶えない環境づくりは、スタッフは元より参加者自身も積極的に関わっていて、コミュニケーションの天才たるフィリピン人の国民性には毎度感心しきりでした。


(左は12月のWSにて、自治体関係者が訪問に来て参加者に証明書を渡す場面。右は1月のWS後の集合写真)

特にサバンガン町では環境に対する意識が高く、参加者からも多くのポジティブな反応を実際に聞くことができました。また、たとえば学校に行けていない子供に対するWSも開いてほしいなど、要望を聞くこともありました。僕が別の機会に別の町を訪れた際も、環境教育に対して興味を持っている人に多く会い、CGNの活動のこれまでの実績、今後の活動に対する期待は、とても高いように感じました。


(1月のサバンガンシアターフォーラムの様子。演劇を取り入れた環境教育WSで、歴史や身近な環境問題を演劇形式で発表しました。)

CGNに来る前には、正直なところ、アートを通じた環境教育、という試みが今一つピンと来ていませんでした。実際に現場を見ることで、すべてとはいかなくとも理解できてきた部分が多くあります。例えば、演劇のような共同作業を通じて、そのトピックの理解が平生より深く得られること、ふんだんな物品がなくとも自分を表現できる方法や教育を行う手段がたくさんあることなど、参加者が発見できる機会が得られることは、とても貴重なものだとわかりました。
フィリピンには多くのNGOが活動し、またODAやJICAを通じての支援などが多く存在します。インフラ等のハード面や生活困窮者の支援などのソフト面どちらもありますが、CGNの活動はとりわけユニークなものではないかと思います。山岳地帯に住み、自分たちの文化やルーツに誇りを持ち、物質的な発展という意味で多くを望まない素朴な人々が、豊かな自然を破壊することなく持続的に生きていくためのサポート。ハード面でのサポートのように目に見える結果が出るわけではないため、多くの人に活動を知ってもらい関心を持ってもらうことが重要であるとともに、ここKEEP協会でも積極的に支援ができたらと思っています。





②フェアトレード事業でのアラビカコーヒー及び植林支援

CGNの種々の事業の中でも大きな柱の一つが、アラビカコーヒーの栽培サポートと植林事業です。アラビカコーヒーは、現金収入が必要な生活にシフトした農家さんたちが、自然や生態系を壊すことなく十分な収入を得られるようになるための、重要な作物です。植林事業は、木々の持つ自然の特性を活用して、環境向上を図る目的があります。
フェアトレードコーヒーや植林事業などは、日本にいても耳にすることが多いものですが、現場に行き、知識を得ることで、物事のロジカルなつながりと実施の重要性が深まりました。



コーディリエラ地域の農家で、サヨテを商用栽培している農家は多くいます。サヨテは瓜の一種で、よく食されます。栽培に手間がかかりませんが、取引値が大変安いのが難点です。そのため、栽培量を増やすために山を切り開き、サヨテ畑にしてしまう農家も少なくありません。毎年台風が頻繁にやってくるこの地域では、山の木々を伐採し自然のダムを失うことは、土砂崩れなど深刻な事態に直結します。またブドウのように生るサヨテは、景観もぶち壊しにしてしまいます。

(カパンガン村のサヨテ畑の様子。このちょうど下に、アラビカコーヒーは植えられています。)

しかしサヨテの畑をそのまま活用して、アラビカコーヒーを栽培することができます。
普段僕らが飲んでいるインスタントコーヒーはロブスタ種という種類です。栽培も比較的たやすくそのため安価です。一方アラビカコーヒーはアラビカ種という種類で、条件が揃わないとうまく育たない口うるさい種類です。そのため味も香りもよく、高値で取引されます。
アラビカ種は、標高が高いこと、寒暖の差が大きいことなどを条件とし、コーディリエラ地域はその条件を満たします。またサヨテの葉は、アラビカ種が必要とする日光と影のバランスをうまく調整するのに適しています。
収穫まで3年、それに定期的にこまめな手入れの必要なアラビカコーヒーを、農家さんが根気よく育て、良い品質のものを自力で育てられるようになるまでが、CGNのサポートです。そのため、苗木の栽培から育成状況のモニタリング、講師やスタッフによるセミナーや買い付けまで、CGNが一貫してサポートをしています。


(左は苗木の栽培センター、右は果肉を取り出す過程を講師が解説している様子)

植林事業は、コーヒー栽培現場と同じ場所でも行われています。これはそれぞれの木にそれぞれの役割があるためです。たとえばカリエンドラという木は土壌を壌を豊かにするといった効能があります。こうした農業と林業の組み合わせをアグロフォレストリー栽培といいます。


(MOKUSAKU=木酢。炭焼きの際生じた木酢液を用いた農法。害虫駆除や土壌改良に有効)
こうした手法や技術を日本で学んだスタッフもいます。


こうした地域の農家さんは必ずしも良い教育を受けているわけではないため、指導したとおりに栽培できていなかったり、手間の煩わしさや育成年数からサヨテ栽培に戻ってしまう人もいます。しかし全体として、アラビカコーヒーの栽培に関心が高く、セミナーやモニタリングを通じたサポートで、品質は向上しています。


(左はコーヒー農家とスタッフのレナートさん。右は農家と話をする、ベンゲット州立大学アグロフォレストリー学科で学ばれる山本さん)

焼畑や農薬の使用などにより、この地域での環境破壊も深刻になりつつあります。アラビカコーヒー栽培はそうした長期的に見てマイナスな影響を排除しつつ、かつ安定的な収益を得られる持続可能な手法です。
近年引き合いも増え、日本への輸出量も高まってきています。フィリピン、アラビカコーヒー、で検索してみてください。
http://kapitako.jimdo.com/


③多くの人々との出会い

インターンでの生活で最も大きな収穫の一つだったことは、たくさんの人々との出会いでした。
CGN代表の反町眞理子さん、ゲストハウスTALAのマネージャーHanaさん、フィリピン人スタッフ、日本人のお客さんや友人たち、ローカルな人々etc..
フィリピン人スタッフとは、WSや酒を通じて多くのことを語り合いました。フィリピンのこと、日本のこと、経済発展の意味やお互いの文化のことなど、議論し、また教えてもらいました。英語をそれなりに流暢に話せた甲斐がありました。
TALAにいらっしゃった日本人のお客さん、これは予想外の収穫でした。世界中を旅している方、絵描きや写真家、舞踏家などのアーティストの方々、シャーマンの一団、普段船乗りをしている変な方、早期退職して貴族のような生活をしている方、英語の勉強のため3か月滞在する予定が学校を退校させられて結局半年以上バギオにいて普段はジム通いと哲学書作成を日課としている方、等々...
多くの刺激を受け、人生観などけっこうな影響を受けました。
TALAで出会った友人は幾人もいますが、TomoさんHiroさんMasayaさんには特に懇意にしていただき、いろいろ遊びに連れて行ってもらったり、食事を共にしたりと楽しく過ごす環境をいただきました。
Hanaさんは、僕が来る同じ時期にたまたまインターンに飛び入りしたのですが、いつもエネルギッシュでポジティブに働く姿に感心しきりでした。どんな人ともすぐに打ち解け、自分の輪を広げていく空気と力は才能だなと思いました。今後もいろいろなかたちでCGNとTALAを盛り立てていくだろうことを確信しています。
そして眞理子さんには、受け入れていただいたこと、いろんな場所へ行き多くの経験をさせていただいたことを、厚く感謝しています。常にアクティブでポジティブに活動され、多くの人々と関係して新しいものや取組みを生み出していく力強さに、圧倒され、そして尊敬していました。またフィリピンの社会経済のことなどわかりやすくポイントを教えていただき、多くの知識を得ることもできました。僕個人、自分の見分を深めること、KEEPでの活動に役立つことに注意を向けがちだったため、インターン期間中はあまりCGNに貢献していなかったかもしれませんが、CGNの活動を多くの人々に知ってもらえるよう、そしてサポーターを増やせるよう、僕の場所からささやかながら発信できればと思っています。


個人的な話ですが、今後もKEEP協会のスタッフとしてフィリピンと長く関係していくことになります。カリンガ州でのインフラ整備、奨学金プロジェクトや交流プログラムがメインですが、CGNとも、双方にとって有益でクリエイティブなプログラムで共同していければと考えています。
それではみなさん、ありがとうございました。


Kazuki Murata