東京芸術劇場シアターイーストで上演中の、パルコプロデュース・三谷幸喜作・演出『不信~彼女が嘘をつく理由』を観てきました。

2組の夫婦の近所づきあいの中で積み重ねられる“嘘”が笑いを呼びつつ、段々と不穏な展開になっていくブラックコメディ。

けっこうきわどい事象を扱っているわりには、洒落た感じに仕上がってもいて、嘘の功罪や、人生の酸いも甘いも知っている大人が楽しむのにはふさわしい作品だったと思います。


登場人物も、それぞれの俳優さんの持ち味が発揮されていて、特に優香さんはとても魅力的でしたし、戸田恵子さんはいつもと違う人物像が新鮮でした。

後半、やや勢いが落ちたような気がしましたが、苦みを含んだ笑いもまた、味わいがあって楽しめました。


以下、ネタバレありの感想ですので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!




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2017年3月17日(金)ソワレ

東京芸術劇場シアターイースト

作・演出 三谷幸喜

出演 段田安則 優香 栗原英雄 戸田恵子





劇場に入ると、対面型の客席になっていて、家のリビングを表すセットの中央には、6個の直方体の椅子。最初、奇異な感じがしましたが、芝居が始まると、この椅子が動き、その配置が変わることで、それぞれの家や、場面転換を表すことがわかりました。


段田安則、優香夫妻が新居に引っ越してきて、同じ間取りの隣の夫婦(栗原英雄、戸田恵子)宅に挨拶に行き、近所づきあいが始まるのですが、

ある日、優香がスーパーで買い物をしている時に、隣の妻(戸田恵子)が万引きをしているところを目撃してしまいます。

それを段田に話すと、段田は関わらない方がいい、と言うのですが、優香は、隣の夫にそれを告げるべきだと言い張ります。


この時の優香は、正義漢ぶっている裏には残酷な好奇心や意地悪な気持ちがあることが透けて見えるのに、隣の夫婦の前ではそれをおくびにも出さず、表面上は取り繕い、肝心なことは段田に言わせる、という、嫌な女なんですが(笑)、その裏表のある姿に、思わず笑ってしまいました。

優香さんの演技がキュートなのと、日常生活での裏表って、自分にも思い当たるところがあるからかも。


結局、隣の夫に、万引きのことを知らせるのですが、隣の夫は信じません。ところが、数日後、段田の職場を訪ねてきて、実は前から妻の万引き癖のことは知っていて、後から夫がこっそり返しに行っていた、と告げます。

そして、このことは警察に言わないでほしい、と段田に200万円を渡します。段田は、金をもらったことは優香には内緒にして、自分のポケットに入れてしまいます。


その後も、お互いの家を行き来しながら、夫婦同士で食事やゲームをしたりとつきあいは続けるのですが、隣の妻が段田家に来る度に、物を盗んでいることがわかります。

優香は、段田に、盗難届を出そう、と言い、隣の夫との約束がある段田は、はじめはしぶるのですが、ついに、夫婦で、警察に行きます。すると、出てきたのは、隣の夫。実は、隣の夫は警察官だったのでした。

やがて、隣の夫は、職場に妻の万引きのことが知られてしまい、警察を辞めるはめになりますが、そのことを妻には内緒にしています。


ある日、隣の妻が、段田家に犬のぬいぐるみをプレゼントするのですが、その中には盗聴器がしかけてあり、それに気がついた段田が盗聴器に向かって、怒りとともに、今までのことを洗いざらいぶちまけます。

その後、優香が隣の妻に呼び出されるんですが、隣の妻は盗聴器をしかけたことを告白するとともに、段田が200万円を浮気相手との手切れ金に使おうとしている、と言います。が、優香は、なぜかあまり動じない。


そんなことがあってから、隣とは距離を置いていた段田夫婦ですが、隣の夫が庭を掘るところを目撃して、またしても、優香が、妻を殺して埋めようとしているのではないか、と言い出します。段田は、今度こそ関わらない方がいい、と言うのに優香は聞かない。そして、それを確かめるために、二人で乗り込んでいくのですが・・・。

この辺は、ちょっとミステリーっぽくなりつつ、でも笑いもとりつつ、という感じで、


この後、隣の夫のモノローグで、その真相が告げられます。

最後は、実は優香も不倫をしているのではないかと疑う段田に、「200万円はどうしたの?」と問う優香。それに段田が答えて、暗転となりました。


優香が浮気をしているらしいことの伏線もわかりやすくはってあったし、特に後半からラストにかけては、何となく予想がついてしまって、さらなる驚きはなかったんですが、みんながみんな嘘をついていて、それを観客が知っているゆえのおかしさは、コメディの基本という気がしますし、そのへんの話の運び方は、うまいなあ、と思いました。


でも、万引きしたり、人の家の物を盗んだり、浮気していたり、夫婦の間で隠し事をしていたり、他人のプライバシーにずけずけと入っていったり、というところはかなり苦い。

特に隣の妻については、メンタルの問題も扱っているので、演じる戸田さんも、難しかったのではないかな、と思います。

そのへん、いつものイメージとは違って、か細い声で話し、壊れているんだけどその言動が観客を笑わせる、という演技はさすがだなあ、と思いました。


隣の夫は、妻をかばうために嘘をついていて、それは彼なりの優しさともとれるけど、職業的保身もあったかもしれず、何より本当に妻を救うための行動をおこしていなかったとも言える。

そして、段田夫婦から何度も殺人を疑われたことで、本音では妻をうとましく思っていることに気がついてしまい、悲劇につながってしまうのですが、

隣の夫を演じた栗原さんは、そういう、悲劇につながる実直さをよく表していたと思います。


段田さんは、妻の優香に振り回されているけれど、浮気をしていたり、妻に隠し事をしたり、と姑息なところもある部分を軽妙に演じていて、それが不穏な展開の中にも笑いを生んでいました。


結局、隣の夫婦の方が失ったものが大きくて、段田、優香夫妻の方はダブル不倫をしながらも互いの嘘はあばかずに、したたかにやっていきそう。

この話の結末は、観客にも「タブーを笑える大人力」が必要とされる感じもあったし、自分も共犯者になったような気持ちで、劇場を後にしたのでした。

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