2014年に、『トロワグロ』で岸田國士戯曲賞を受賞した山内ケンジさん作・演出の『仲直りするために果物を』を観てきました。

山内ケンジさんの作品を観るのははじめてですが、

観終わったあと、ダメージが大きくて、ちょっと気分が悪くなってしまいました。

後味の悪い作品や、不謹慎な作品は数あれど、こんなに嫌悪感が残るのは、私の観劇歴の中ではじめてかも。

でも、この作品をおもしろいと思う方もいるわけで、感性と相性の問題だとは思います。

以下、ネタばれありの、ちょっとブルーな感想です。



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2015年6月4日(木)ソワレ

東京芸術劇場 シアターウエスト

作・演出 山内ケンジ

出演 石橋ケイ 松井周 東加奈子 岡部たかし 吉田彩乃 

    岩谷健司 遠藤雄弥



あばら屋に住んでいる兄(遠藤雄弥)と妹(吉田彩乃)のところに、大家(岡部たかし)が家賃の取り立てにやってきます。兄弟は家賃を払える当てがなくて、困った兄は、大家を殺そうと思い立ちます。

そこに、不動産屋社長(岩谷健司)と愛人(東加奈子)、その不動産屋から家を買った新婚夫婦(松井周)(石橋けい)が居合わせます。

彼らは全く知らない同士というわけではなく、そのうちの何人かは訳ありの関係で、嘘と秘密が暴かれていく中で、暴力と殺戮が繰り広げられる展開に・・・。




先日観たケラリーノ・サンドロヴィッチ脚本の『すべての犬は天国へ行く』でも、登場人物はばったばったと死んでいったし、

シェイクスピアだって、たくさんの人物が血まみれになって死んでいく。

芝居で、「死と暴力」が描かれることは多いけれど、


他の作品を観たときは大丈夫だったのに、なぜ、この作品ではダメなのか。

ケラさんのブラック・コメディと違うところはどこなのか?

というところに、私的な興味を覚えるけれど、

深く考える気力がわきません。


ただ、他の作品では、残酷なシーンでも、どこかプロテクトされているというか、

「これは嘘っこです」

という暗黙のルールに守られている気がする。

が、この作品は、そのルールから逸脱している感じがします。


終盤、不動産屋の社長が、夫を殺された妻を強姦するシーンがあるんですが、

あんなに、執拗に描く必要があるんだろうか。


作者の山内さんは、この作品をブラック・コメディとして描いたのでしょうか。

台詞のやりとりや、登場人物の行動で、おかしみを誘う場面もありましたが、

私は笑えなかった。


ただ、

兄弟の不気味さや、大家と不動産屋の反社会性をもった感じ、新婚の夫の秘めた不誠実さや、狂乱していく妻、あいまいさを許さずみんなを追い詰めていく

愛人など、俳優さん達は、それぞれの人物の個性をよく表現していたと思います。


途中で、新婚の夫の台詞に、

「仲直りするためには日持ちのしない果物を持って行くのがよいと言われている。」というのがあって、この台詞には興味を覚えました。

その辺のことを掘り下げたお芝居が観たかったな・・・・。



この日、客席には、岩松了さん、岩井秀人さんがいらしていました。

あと、出口付近には、この前観たブス会の演出家のペヤンヌマキさんがいらして、優しそうなお顔を見たら、

「ブス会が懐かしいです!」と言いたくなりました。


城山羊の会とは不幸な出会い方をした気がしますが、

う~ん、

「芝居道」はなかなかに険しいものですね・・・・。


でも、

気を取り直して、

次は「不倫探偵~最後の過ち~」を観てきます!

(一抹の不安も覚えつつ・・・)