小劇場に行ってみよう!シリーズ第4弾、劇団アマヤドリの『悪い冗談』を観てきました。

つい先日、アガリスクエンターテイメントの『紅白旗合戦』を観て感銘を受け、

「私、小劇場イケるじゃん!」と調子に乗った矢先、

演劇の神様から「甘い!」とお叱りを受けたようで、

1時間45分と短いお芝居だったんですが、久しぶりにつらい時間を過ごしてしまいました。



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2015年3月29日(日)マチネ

東京芸術劇場シアターイースト

作・演出 広田淳一

出演 笠井里美 松下仁 渡邉圭介 小角まや 榊奈津美 糸山和則 沼田星麻 中野智恵梨 仲村早香 

Kim Dae Heung PANAY PAN JING-YA他


初めて観る劇団で、チラシに、近未来の東京、テーマパークになったニッポン、「悪と自由」などの文字がのっていたので、興味がわいてチケットをとりました。

実は今になって観劇時に作者のコメントの紙が入っていたのに気づいて読んでいますが、

チラシに書いたあらすじとは全く違う話になったこと、舞台上に「物語の時間」を作らない試みをした、とあり、どうやら実験的な作品の回(?)に当たってしまったようです。

まさに、物語性のない作品だなーと思って観ていたのは、ある意味当たっていたんですね。


会場に入ると、手前にベンチ、奥に数メートルの高さに組まれた鉄骨があり、後にこれが川にかかる橋だとわかります。

最初、妹を殺された姉が、刑務所で終身刑となった犯人と面会をして会話をするところから始まり、姉は、自分の手で犯人を殺したいと言い、犯人も殺してほしい、と言い両者の望みは一致しているのにそれがかなわない、などのやりとりがあり、


手前のベンチでは、高校時代の男性の同級生達が花見をしていて、その中には当時の同級生だった韓国人も来日し、酒盛りをしている。

一方、下手側では、若いOL達がやはり花見をしていて、中には台湾から派遣されてきた社員も混じっています。ここに、たまたま通りかかった先ほどの姉が加わります。


今回は、韓国からKim Dae Heungさん、台湾からPANAY PAN JING-YAさんを迎えての公演ということで、それぞれの宴会の会話の中に、韓国や台湾の実情の紹介や、異文化との交流について考えさせるような内容が入っていて、そこでは、他の国の実情にうとい日本人、のような描写がありました。


劇の間中、一人の男が何度もジョギングをしながら通りかかるんですが、その男が白衣をまとうと、急に橋の上がある実験の場面になりました。これ、あの有名な実験かな、と思っていたらやはりそうで、エール大学で行われたミルグラム実験(人間は、大義名分があれば権威者の指示に従って残酷な行為をしてしまうという心理実験)をそのまま描いていました。


やがて、川が東京大空襲当時の川になり、PANAY PAN JINGU-YAさんのダンスとともに、当時の様子をOL役の女優が語ります。

かと思うと、また橋の上が現代に戻り、遠距離カップルの会話がおもしろく展開したりしました。


終盤、ジョギングをしていた男が、そのスピードを上げ、荒い息とともに、

「我々は、自分の身近な生活を利己的に送りながら、美しい日本、などと言っているレイシストだ。これからも、何度も過ちを犯すだろう。」というような内容の台詞を吐き捨てて奥に去ります。

最後は、全員でダンスを踊って終わりになりました。


これは・・・反戦を描いたもの、と受け取りました。

芸術家の方達は、鋭い嗅覚をもっているように思うので、ある種の予感や危機感をもち、今の時代を映しているのかもしれませんね。

が、ひとつひとつのエピソードはいわんとすることはわかりますが、それらが絡み合あっていかず、物語のうねりにならないので、観ていて苦痛でした。


正確な台詞を思い出せないのですが、男が言った言葉、

「我々は過ちを繰り返すレイシスト」

これを聞くために観ていたのかと思うと、虚しくなりました。

確かに、私達は、愚かで、過ちを繰り返してしまうものかもしれませんが、一人一人の人間が、自分の生を自分の届く範囲で生きることを否定するようなことを吐き捨てるのは、ちょっと違うんじゃないか、と思います。


以前観た『有馬の家のじごろう』の感想にも書きましたが、あの作品では、その時代を懸命に生きた人々の姿をおとしめることなく描くことで、戦争や平和についての想いが胸に迫ってきました。また、先日の、TRASHMASTERSの『砂の骨』でも、閉塞的な社会の状況と問題を描いていましたが、何とかそこからはい上がろうとする人の姿にエールも送っていたと思います。

この『悪い冗談』を観ていて、何となく、野田秀樹さんの姿が見え隠れしていた気がするのは気のせいでしょうか。


・・・反戦をうたうことは、自分たちをレイシストである、と断ずることではないのではないか。

そう断ずることは、ある意味、自虐行為ではないか。

「反省」と「自虐」は違うのではないか。

「自虐」は、ある意味では快感を伴うもののような気がします。でも、今必要なのは、「理性」と「知恵」ではないかしら。と、そんな風なことを考えました。


あと、東京大空襲を語るシーンですが、その語りに実感がこもっていなくて、その時代を生きていないのだから当然ではあるんですが、何か、教科書を朗読しているようで、体温が感じられず、ぺらぺらとしていた感じで胸に迫ってこない。

何人かの女優さんは、大声を出すと台詞が聞き取れず、残念でした。

でも、最後の全員のダンスは、力強くて良かったです。


なんだか否定的なことばかり書いてしまいましたが、ともかく、初見ですし、3部作の最後となっているのに、1部と2部を観ていないので、検討はずれな感想になっているかもしれません。失礼をお許しください。


さて、3月は、『地下室の手記』『砂の骨』『結びの庭』『紅白旗合戦』『悪い冗談』に加えて、実は『ライブスペクタクルーNARUTOー』も観に行ったので、(これは私的には番外編で期待の度合いも違うので、楽しみました。)

全部で6本!私的には新記録です。

ちょっとクレイジーだったかな・・・という気もしますが、ゴールデンウィークは今のところ何も予定がないので、家の片付けをします。(我が家には数カ所魔界がある)

ので、どうか許してください。(と誰かにむかって?言い訳している私でした)