前々回の記事で私がカンパーニュ修行を始めたことを書きましたが、その中で、処女作のカンパーニュの食感+味が、昔フランスの田舎町で食べた最高に美味しいパンにそっくりだったと感想を述べました。


今日はその田舎町に訪れた時のお話をしたいと思います。と言うことで、紹介するお料理もフレンチです。2011とタイトルに付けているのは、こちらもずいぶん前に作ってブログにアップしたことがあるからです。


ポークノルマンディー2011

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

15年以上前のこと。ある夏の終わりの週末、私はフランスの小さな港町に小旅行に出かけました。イギリスは海に囲まれながら海の幸が生かせない、魚が超!超!超!不味い国なので、お隣のフランスに行ったら、美味しいシーフードも食べるつもりでいました。


当時、イギリスの港町とは名だけの“出来損ないの港町”フォークストンから、日に何便かホーバークラフトが北フランスのブローニュに運行されていました。私の行ったフランスの田舎町と言うのは、このブローニュだったのです。


私はタバコが大好きで、誰になんと言われようと、体がどうなろうと絶対にやめるつもりがなかったのに、体の方から拒絶し吸えなくなって、意思に反し禁煙家となった人。15年前は当然プカプカタバコをエンジョイしていました。


イギリスってタバコがすっごく高いんです!1箱1000円以上します!なもんで、旅費を使ってドーバー海峡を渡っても、フランスやベルギーにタバコをまとめ買いに行くほうが割安だったんです。この小旅行の主目的も、実はタバコの買い付けでした。(笑)


ホテルは着いてから探すつもりで予約もせずドーバーを渡りました。ところが、運悪くその週末はフランスの祝日と重なったロングウイークエンド。しかも夏最後のロングウイークエンドで、港町は各地から集まった観光客でごった返しホテルはどこも満室!


そうなるとタバコよりも大事なのはその晩の寝床の確保。“ホテル”の看板が目に付くと、汚いだの古いだの言ってられな。片っ端から空室がないか尋ねました。しかし、空きのあるホテルは一軒も見つからなかったのです。


野宿することを覚悟し疲れきってとぼとぼ歩いていると、マーケットプレースに辿りつきました。美味しそうな香りがどこからかプンプンと漂ってきます。スペイン人風のおばちゃんが大きな鍋で作っているパエリアでした。


寝床探しに必死ですっかり忘れていた空腹感。私はそのパエリアを買いました。フォークはないのかと尋ねると、おばちゃんはある方向を指して、なんやら、うちにはないけどあそこの店で売ってる風の説明をしてくれているよう。


おばちゃんの指す方向に目をやると、スプーンやフォークが売っていそうな店はなかった。けど、自家製らしいパンを売るマーケットストールが目に付きました。どのパンも実に美味しそう!


でっかい入れ物に入ったパエリアを買ったばかりなのに、私はその美味しそうなパンに抵抗できず1つ買ってしまったんです。


早くパエリアやパンが食べたくて、もうフォークなんかどうでもよくなり、教会の石段に腰掛けインド人の様に指でパエリアを食べました。サフランとトマトで指がオレンジ色に染まると、ちぎったパンで拭き取り口に入れたんです。


高級なスペイン料理のレストランで食事をしたこともあるけれど、あのスペイン人風のおばちゃんの作ったパエリアに勝る味のは、未だかつて口にしたことがない!


そしてオレンジ色に染まった指を拭きとって食べたあの田舎風のパン、あれは私のこれまでの人生で食べたパンの中で一番旨かった!あれをカンパーニュと呼ばずして、何をカンパーニュと呼べようぞ!(爆)


もちろんホテル探しで疲れ、お腹がぺこぺこだったこともあるけれど、そのハンディーを差し引いたとしても、やっぱりあのパエリアとパンに勝るものは、そうそうどこにでもあるものではない!


昨日、私は2回目のカンパーニュを焼きました。けど、昨日は2つ大失敗を犯してしまいました!


1つは携帯電話の計算機で計算した水の量が、キーの押し間違いで多すぎ、途中で気づき粉を足す羽目に。そしてもう1つは、オーブンをスチームにするのに使った容器が小さすぎ、期待したほど蒸気を発さなかったことです。


そして、わざわざ高価なキッチンショップで、ベイカーズブレイドを買って来てスコアリングしたとは言うものの、やっぱり切れ目は情けない、昨日焼いた2度目のカンパーニュがこれです!

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

このパン可愛いんですよ!オーブンから出てくると、10分くらいはパチパチ、パチパチと独り言を言っています。(笑)


中はまたまた大成功!水加減を間違い粉足しをしたにも拘わらず、初回よりもまた一歩ブローニュで食べた田舎風パンの食感と味に近づいていました。

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

今回もこれを口にすると、やっぱりあの夏の終わりのブローニュで食べたあのパンと、あの日のことが思い出されました。


すると、急にフレンチな晩御飯、しかも、ブローニュの属するフランス・ノルマンディー地方なものが食べたくなって、ポークノルマンディーを久々に作ることにしたんです。


ポークノルマンディーとは、ノルマンディー地方のりんごの発泡酒・シードル(イギリスではサイダーと呼ぶ)か、りんごのブランディー・カルバドスでポークチョップを煮込む料理です。


今回はノルマンディー産のシードルでもカルバドスでもなく、旦那が飲むのに買って冷やしてあったイギリス産のサイダーを使用。マスタードだけは先日シアトル市内で見つけたフランス産のポメリーを使いました。

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

炒めたシャルロットとガーリック、焦げ目がつくほどしっかり焼いたポークチョップに、サイダーを加えるとジュージューっと泡が立ちます。シードルよりも苦味が強いサイダーですが、ソースと化すと苦味は完全に消えます。今回はマッシュルームも投入。

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

そしてこのフレンチなメインの付け合せには、レシピブログを通じお知り合いになった、おさむさんのブログ『あなぐらどうぶつレストラン』 で見つけた画期的なレシピを参考に、グラタン・ドフィノワを作りました。

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

なぜか最近どこでどんな種類のじゃがいもを買っても、いっくら長時間調理しても芯が堅くて困っていたのです。しかし、スライサーでスイスイスライスしたじゃがいもなら、まず手間もかからないし火の通りも早い。


それに付け合せの一品にクリームを使うのはちょっと躊躇われますが、おさむさんのレシピのグラタンは牛乳だけなのに驚くほどクリーミーで、これなら安心して付け合せの一品に作れます。


お世辞抜きに、これは我が家の定番レシピの1つに加わりました。これからしょっちゅうリピートさせてもらうつもりです。美味しいレシピを教えていただいて、おさむさん、本当、ありがとうございました!


ちなみにおさむさんはプロだから、当然と言えば当然かも知れないけれど、お料理がどれもすごい!しかも“なんちゃって...”と言う言い訳つきのレシピではなく、どれも正統派な料理ばかり。是非ご参考に!


フレンチのメインにフレンチの副菜。それにフレンチの田舎風パンまで揃った、トレビア~~ンな我が家の夕べの食卓!

クッキングリッシュの会改め『和・美・Savvy Cooking』

実は夕べ、ポークノルマンディーに塩もこしょうも砂糖も、みな入れ忘れたんです!


半分くらい食べ終わってから、あれぇ~?入れたっけ?で思い出しましたが、豚をシードルやサイダーで煮ると、余計な調味料は要らないくらい美味しいソースになるっつう良い見本となりました。(笑)


フランス産のシードルやイギリス産のサイダーは、日本のどこの酒屋にでも売っていると言う訳ではありません。でも、前回の記事 にレシピと、スーパーで売っているアサヒビール発売・ニッカシードルドライを紹介していますのでご参考に。


余談ながら、15年以上前の夏の終わりの週末、私はブローニュで野宿せず、同じ港町ならフォークストンでも美味しいシーフードが食べれるだろうと期待し、日帰りでイギリスに戻りフォークストンで宿泊したんです。ところが...


“出来損ないの港町”など酷い呼び名でフォークストンを呼ぶ理由は、港町であるにもかかわらず、港に立つ屋台では蟹の代わりにカニカマを売り、レストランでロブスターがないかと聞くと、1週間前からの予約要と言われたからなんです。


その時私は、イギリス人は海の幸の楽しみ方を全く知らない人種だと確信しました。そしてそれ以降、イギリスで食べれる魚は半ば腐った、いや完全に腐った臭い魚だけと、諦めたり期待しなくもなったのでした。(爆)

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