イギリスに急遽帰省することになった5月最後の週末。ラムを焼こうと思い、近所で評判のブッチャーでラムの肩肉を仕入れ、前日にはこんなものまで作ってかなり力入れてサンデーミールの準備をしていたのです。


ミントジェリー

クッキングリッシュの会

旦那と交際しだして初めて彼に実家につれて行ってもらった時、昔懐かしい米ドラマ『ダイナスティー』に登場する様な、家の前にロータリーのある豪邸だったのにも驚いたけれど、それよりももっと驚いたのは、キッチンに並んでいた手作りジャムの数々です。


義母はジャム作りのエキスパート。義母の作ったジャムを一度食べたら、どんなに美味しいと評判のジャムでも、店で買って来たものはもう絶対に食べられないってくらい、ジャムを作らせたら名人です。


その時義母のキンチンで、数あるジャー(瓶)の中から私の目を引いたのはカリンのジャム。


カリンのジャムなんて珍しくもないのに私の目を引いた理由は、他のベリーやフルーツにはみなジャムとネーミングしたラベルが貼ってあるのに対し、カリンのジャーにだけは“ジェリー”(日本語のゼリーと同意)と書いたラベルが貼ってあったからです。


なんでクインスジャムと呼ばずクインスジェリーなのか、私はジャムとジェリーの違いを義母に質問しました。


“ジャムには果肉や皮などが含まれているけれど、ジェリーは果汁だけを抽出して作ったクリアーなもの”


その時の義母の答えでした。食べ比べてみると、果肉がたっぷり入ったジャムも美味しかったけれど、クリアーで滑らかな舌触りのジェリーは、ジャムとはまた違う別の美味しさがありました。


その義母の作る美味しいジェリーの中で私が最も好きなのが、今回初挑戦して作ったミントジェリーです。これをたっぷりとローストしたラムに付けて食べるのが、もうたまりません!


イギリスには果物の果汁だけを抽出してジェリーを作るのに、ジェリーバッグと呼ぶこんなものが売られています。残念ながら、自宅でジェリーを作る人など殆どいなくなってしまって、探すのに一苦労しますが...

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4本の脚をボウルのふちに載せるように出来ています。

このジェリーバッグは2年前イギリスで買って来たもの。義母に伝授されたミントジェリーのレシピに習い作ってみようと張り切り買って来たものの、マンションの高層階暮らしではミントの自家栽培が出来ず、買って作るには費用がかかり過ぎ使う機会を逃していました。


日本のスーパーで売っているミントは小さなパック1つが200~300円。ミントジェリーを作るにはそのパックが少なくとも5~6つ、いやもっと必要になるかも知れない。それなら輸入食料品店に売っている既成のミントジェリーを買って来た方がずっとお得です。


しかし、なんでもデカサイズのここアメリカに来て、ものすごいものを見つけてしまいました!


4オンスって言うから120g弱詰まったミントのパックです!値段は日本で売られているパックと大きな違いがないのに量は10倍は入っているでしょう。いくらジェリー作りにはたくさんミントを使うと言っても、使い切れない量のミントです。しかも良質。

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残念ながら、せっかくのジェリーバッグは引越の荷物に入れてしまい今手元にはないので、“チーズクロス”と名の付いたガーゼのようなものをキッチンショップで発見したので、それを代用していよいよ初挑戦となりました。


<材料 約500gのジェリー分>

りんご(酸っぱいもの)...1kg
ミント、細かく刻む...1カップ
水...250ml
酢...200~250ml
砂糖...250~300g

(その他)
ミントの葉、細かく刻む...1カップ(オプション)


<作り方>

1.りんごは綺麗に洗い、茎のみ取り除いて、皮、芯、種を残したまま3cm角程度に大きく切る。

2.鍋にりんご、ミント、水を入れ火にかける。沸騰したら火を弱火にし蓋をして約30分煮る。

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3.30分程度煮込んでりんごがつぶれるほど柔らかくなったら、酢を加え更に5~10分煮る。

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4.3を火からおろし、フォークかマッシャーでりんごを潰す。

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5.チーズクロス(またはガーゼなど)を敷き詰めた目の細かいざるで、4を数時間から一晩かけてこし果汁を抽出する。

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ここで絶対にしてはいけないことは、手で果汁を搾り出さないこと。
手で触れて無理に果汁を搾り出そうとすると、ジェリーは固まらないそうです。(義母の助言)


6.抽出した果汁を鍋に入れ火にかける。砂糖を加えかき混ぜて溶かしながら沸騰させる。

義母から教わったレシピでは、砂糖の量は600mlの果汁に対し約450g。但しこれはイギリスのクッキングアップルと言う渋味の強いりんごを使った時の目安で、今回私はそれより甘みのあるグラミースミスを使い480mlの果汁を抽出したので、この目安より少し糖分控えめに280gの砂糖を加えました。

7.6が沸騰したら比較的強めの火(中火より少し弱め程度)で、果汁の温度が“Jellying point”(ジェリーが固まる温度)に達するまで15分程度煮詰める。

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果汁の温度が華氏220~222度(摂氏104~105度)が“Jellying point”。私は温度計を持っていなかったので、義母に教わった通り冷えたお皿でそれを調べました。冷凍庫で冷やした皿に小さじ1程度の果汁をたらし1分程度待つ。一気に冷えた果汁を指でそっと押さえ、表面にまくが張っているようであれば“Jellying point”。

8.好みで刻んだミントの葉を加え火から下ろす。粗熱が取れたら熱湯消毒したジャーに移す。


実は義母からもらったレシピの材料中“酢”がどの種の酢か定かでなく、ネットでサーチし、同種のアップルミントジェリーでホワイトビネガーを使ったものがいくつかあったので、それを使うことにしました。恐らく義母はモルト酢を使っているんだと思うんだけれど...

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ミツカンの米酢は手元にあったんですが、それはちょっと???マークいっぱいだったので使いませんでした。(笑)ちなみにこのホワイトビネガーは日本でも輸入食料品を売ったお店で購入出来ます。


また、酸味控えめのジェリーが好みであれば、酢の代わりにレモン汁2個分程度に変えてもオーケーです。但しこれだけ酢を加えて作ったジェリーでも、酸っぱいものが苦手の私が気にならないほど酸味はまろやかです。


ジェル化剤を使わず果物の持つ自然なペクチンだけで固めるジェリー。だから確かに手間もかかるし、熟練した義母のような人でも失敗に終わることもあるそうですが、その代わり味は絶対の保証付きです!


ミントジェリーを作ったら、固まったけれど最後に加えたミントがみな表面に浮いてしまって...と、先週帰省中義母に話したら、これもその時々で、上手く全体に行き渡ることもあれば、表面に固まってしまう時が義母にもあるそうです。

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初めて作った義母のレシピのミントジェリー。夕べは献立をラムにし、このジェリーをたっぷり付けて食べたのですが、味は義母の作るミントジェリーと全く違いがありませんでした。


明日はそのラム料理を紹介します。ローズマリーオイルでローストしたラムと新じゃがが、最高に美味しい一品です!

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