イギリスって国は世界各国から食品を輸入する為、殆どの野菜や果物が一年中スーパーの店頭から姿を消すということがありません。ある国でシーズンが終れば、シーズン真っ盛りの別の国から輸入してくれば済のことです。


それはそれで便利ではあるんですが、日本の様に旬の野菜や果物を見て季節を感じることが出来ないので、面白みに欠けるとも言えます。


しかし、そんなイギリスにも数少ない季節を感じさせるものがあります。昨日私が焼いたこれもその1つ。年中スーパーには売ってはいると言うものの、春、イースターが近づいて来ると、どこのスーパーの店頭でも山積みされます。


ホットクロスバンズ

クッキングリッシュの会

イースターとは日本語に訳すると復活祭のこと。十字架にかけられ死んでしまったキリスト様が、3日目にまた蘇ったことを祝うお祭りです。


さて、ではなぜこのホットクロスバンズが、イースターが近づいて来ると店頭に山積みされるのかという話です。


キリスト様が十字架にかけられた金曜日を聖金曜日、英語ではグッドフライデーと呼びます。このグッドフライデーの日、キリスト様の受難を表す十字を象ったドライフルーツ入りの甘いバンズを食べるのが、イギリスの古くからの伝統だからです。


ホットクロスバンズと共にスーパーの店頭に並ぶのは、大小さまざまのチョコレートで出来た卵です。この2つをスーパーで目にすると、イギリス人達は、長く暗いイギリスの冬が終わり春がやって来たと感じるんです。

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イースターは変動カレンダーで毎年その日は変わります。春分の後の最初の満月直後にやってくる日曜日、これがイースターとなります。


今年のイースターは4月4日。まだその日まで1ヶ月以上もあるのに私が昨日これを焼いた理由は、実家に送る宅配便の中に、父の大好きなぶどうパンを焼いて入れてあげたかったからです。


今年のイースターにはイギリスから来日予定の義妹と3人で国内旅行をする我が家。例年の様にバンズやイースターの献立が作れないこともあり、なら今ホットクロスバンズを焼き、旦那にも春が来たことを教えてあげようと思ったんです。


イギリスにいた頃はスーパーに行ったら腐るほど売ってたので、わざわざ家で焼いたことなどありませんでしたが、日本に越して来てからは毎年焼いています。


例年強力粉を使うのですが、出来上がったバンズの舌触りがイギリスで食べていたものとはちょっと違う。なんか重いのです。そこで今年は全く同じレシピで粉を薄力粉に替えて作ってみました。


また、小麦粉に砂糖を混ぜで水で練ったペーストで十字架を作っていたのを、今年はシュガーペーストを作り、焼き上げてからアイシングしてみました。照りもシロップではなく卵を塗って焼きました。


<材料 12個分>

牛乳...210ml
バター...50g
★溶き卵...1個分
★薄力粉...450g
★シナモンパウダー...小さじ1.5
★ナツメグ...小さじ1/2
★ドライジンジャー...小さじ1/2
★塩...小さじ1
★三温糖...50g
ドライイースト...小さじ2.5
ドライフルーツミックス...80g
サルタナまたはレーズン...40g
油...適宜

(ドリュール)
卵...1個
塩...少々

(十字架用シュガーペースト)
粉砂糖...160g
牛乳...大さじ1.5
バニラオイル...適宜

*ドライフルーツミックスは製菓材料のところに売っている袋入りのもので、ブルーベリー、クランベリー、ラズベリー、レーズンなどが含まれたものです。なければサルタナ120g、またはレーズン120gでも良し。

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<作り方>

1.牛乳を人肌より少し熱めに温め、火から下ろしたらバターを加えて溶かす。人肌程度に冷めたらホームベーカリーの容器に投入。

2.★の付いた材料を上から順にホームベーカリーの容器に投入し生地コースを設定。ドライフルーツに関しては各機械の指示に従って加える。

3.2の生地をたっぷり打ち粉をした台の上に取り出し12個に分けて丸める。乾いたふきんの上に並べ、乾いたふきんを被せ、さらにしっかし絞った濡れぶきんを被せて15分程度ベンチタイム。

4.3の生地を再度丸め直し油を薄らと塗ったオーブントレーの上に並べる。再び乾いたふきん、濡れぶきんの順に被せ、30度前後の温かい場所で45~50分発酵させる。

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伝統的なホットクロスバンスは、バンズ同士がくっついて焼き上がっています。
私は今回1つずつに分けましたが、隣同士のバンズが軽く触れる程度にオーブン皿に並べると、
伝統的なホットクロスバンズの形で焼き上げることが出来ます。

5.4が約2倍に膨れたら、卵に塩を加えよく溶いてドリュールを作り、刷毛でバンズの表面に塗る。220度で予熱を済ませたオーブンで15~17分焼く。(火力の強いオーブンの場合は20度くらい低い温度で!)

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6.粉砂糖に牛乳とバニラオイルを加えてよく練る。焼けたバンズの粗熱が取れたら、シュガーペーストを布かナイロン製の絞り出し袋に入れバンズの表面に十字を描く。(かなり固めのペーストなので、紙で作ったパイピングバッグは不向き。)


実は今回悪戦苦闘しました。ホームベーカリーから出て来た生地は、横にだれるほど柔らかくて手にべたべた生地がつき、捨てて強力粉で作り直そうかと思ったくらいです。


2次発酵させても膨らみ方がなんとなく例年より少ないし、この時点で、こりゃ失敗したとすっかり諦めジムに行くことにした私。あとはあんたにまかすと、旦那にオーブンの番をさせてさっさと家を出ました。


ところが、ジムから戻ってみると、この通りバンズはふっくら膨らんで美味しそうに焼けていました。しかも、例年よりもふくらみが大きい!

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早く食べさせてほしいという旦那を制止し、シュガーペーストで十字架を描き、この春のホットクロスバンズを完成させました。


実は旦那だけじゃなく、初めて薄力粉を使って焼いた私も待ちきれませんでした。十字架を描き終わったら即、1つ割って中をチェエクしてみました。

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まるでマークスアンドスペンサーやテスコに売っているホットクロスバンズのようでした。これこそが私が、日本に越して来てからずっと自宅で作りたかったホットクロスバンズです!


ホットクロスバンズは温かいうちに横2つに割って、バターを塗って紅茶とともに食べるのが美味しいです。イギリスの春の風物詩、ホットクロスバンズを是非焼いて食べてみて下さい。

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